第434話 水音編30 本当の「悲劇」
お待たせしました、本日2本目の投稿です。
青黒い「何か」に触れて、中学時代の水音達は再び3年前の「記憶」の景色に出た。
周りをよく見ると、その景色は最初に出た時は所々が歪んでいたが、今ははっきりと細部まで見えるようになっていて、そのおかげでその場所が、大きな廃工場の中だということが理解できた。
「……っ」
そんな中、目の前で起きてることを見て体を震わせる中学時代の水音に、
「だ、大丈夫だからね、僕達がついてるから」
と、分身1号が優しく励ましたので、中学時代の水音は、
「ありがとう、ございます」
と、弱々しい笑顔でお礼を言った。
すると、
「そろそろだぞ」
というループスの言葉に反応して、中学時代の水音と分身1号が前を見ると、そこは陽菜が航士に突き飛ばされ、少年達に取り押さえられた場面だった。
「止めろ、陽菜ーーーーー!」
途中から何を言ってたのかわからなかった「あの場面」の時のセリフだったが、今ははっきりと聞こえた。
「止めろ、陽菜を、陽菜を怒らせるなぁあああああっ!」
そのセリフを聞いて、その場にいた航士達は勿論、ループスも、分身1号も、白い水音も、そして、中学時代の水音本人も、
『……え?』
となった。
次の瞬間、取り押さえられた陽菜の体から、青黒い炎が出てきた。
その炎に驚いたのか、少年達が一斉に陽菜から離れると、陽菜はゆっくりと立ち上がり、
「うあああああああっ!」
と、悲鳴に似た叫び声をあげた。
すると、青黒い炎は陽菜の全身を包み込んだ。
そして、炎に包まれた陽菜は、ゆっくりと水音と航士達の方へと振り向いた。
「あ、あれは……!」
その姿はまさに、真っ暗な空間に現れた、あの青黒い人型の「何か」の姿だった。
その姿を見て、
「そ、そんな……陽菜が……」
「嘘……でしょ?」
と、中学時代の水音分身1号はショックを受け、
(なんてこった、あれは妹さんだったのか!)
と、ループスは冷や汗を垂らしながら納得の表情を浮かべて、
(……それで、あのセリフか)
と、白い水音はここに来る前に青黒い「何か」が言ったセリフを思い出した。
そう、あの時、中学時代の水音達に、青黒い「何か」は言った。
ーーオ、ニ、イ、チャ、ン。
そして今、青黒い「何か」となった陽菜に、
『う、うわあああああっ!』
と、恐怖にかられた少年達が襲いかかった。
「よ、よせ!」
「駄目だ、陽菜ぁ!」
と、少年達を止めようとした航士と水音だが、時すでに遅く、
「フゥ!」
ーーブオン!
『ギャアアアアアッ!』
陽菜は思いっきり腕を振るって、少年達を残らず薙ぎ払った。
ある少年は地面に何度もバウンドし、ある少年は背後の壁に激突した。そして他の少年達も、それぞれ悲惨なことになっていたが、いずれも皆『死』の一歩手前で、かろうじて息をしていた。
そんな状態の彼らを見て、
「お、お前ぇ、よくもぉ!」
と、航士は怒って「鬼の闘気」を解放し、陽菜に襲いかかろうとした。
すると、
「フゥッ!」
と、陽菜が大きく両目を見開いた。
そして、次の瞬間、
「ぐあああああああっ!」
航士の体から出ていた「鬼の闘気」が、航士に襲いかかったのだ。
「な、何故だ! 何故、僕の『鬼の闘気』が、僕を燃やそうとするんだぁ!?」
それはまさに、炎で全身を焼くかのような状況だった。
その後、全身を焼かれたに近い状態の航士がその場に倒れ伏したので、
「た、大変だ……」
と、水音が航士に近づこうとした、まさにその時、
ーーゴォオッ!
「うわあああああああっ!」
水音の「鬼の闘気」も、水音を焼き尽くそうとしていた。
「や、やめてくれ陽菜! 僕だよぉ!」
自身の「力」に焼かれている状態の水音は、必死に陽菜を止めようと声をかけたが、
「……」
残念なことに、青黒い「何か」となった陽菜に、水音の言葉は届かなかった。
「だ、誰か……助けて……」
と、今にも水音が航士と同じ末路を迎えようとしていた、まさにその時、
「オッケー、今助けるからね」
というセリフと共に、1人の女性が水音の目の前に現れた。
(あ、師匠)
そう、凛依冴だ。
凛依冴は右手の人差し指と中指で「印」を結ぶと、それで水音の額をツンと突いた。
すると、水音を焼いていた「鬼の闘気」は一瞬で消え去った。
それを見て、
「うん、これで良し!」
と、凛依冴が満足したと言わんばかりの表情になると、
「ハ、ナ、レ、ロォ……」
という声が背後でしたので、凛依冴は「ん?」と後を振り向くと、そこには右手を大きくした陽菜がいた。よく見ると、その爪(?)は鋭そうに尖っていた。
「なぁによあんた、やる気?」
と、凛依冴が陽菜に向かってそう挑発すると、それにカチンとなったのか、
「オニイチャンカラ、ハナレロォオオオオオオオッ!」
と、陽菜はそう叫んで突進し、凛依冴に向かって鋭い爪を持つ大きな右手を振り上げた。
それを見て、
「駄目だ、陽菜ぁ……!」
と、水音が陽菜を止めようとしてそう叫んだ、まさにその時、
「やめなさい、陽菜ぁあああああっ!」
と、水音と凛依冴を庇うように、母・清光が目の前に現れた。
それを見た水音が「え?」となった次の瞬間、陽菜の鋭い爪が、清光の体を引き裂いた。
(あ、母さん……。陽菜……)
そして、それを見た瞬間……。
(そんな……陽菜が……母さんを)
ーーパリィイイイイイン!
「うあああああああっ!」
水音の中で、何かが壊れる音がした。




