第43話 春風vsリアナ
戦いの開始直後、春風とリアナは互いが持つ刃をぶつけた。
2人は鍔迫り合いの状態から一歩も動かない……と思ったら、春風の方が僅かに押されていた。
(ぐっ! やっぱりレベルの差があると力で押し負けるか……)
苦しそうに踏ん張る春風は、ならばと思って自分から力を抜いて体勢を崩し、鍔迫り合いの状態から脱出する。
「!?」
春風が脱出した事で、驚いてバランスを崩すリアナ。
それを見逃さなかった春風は、リアナの武器を持つ右手に向かって彼岸花を振り下ろした。勿論、峰打ちで、だ。
だが、
「さ、せ、る、かぁっ!」
危うく倒れそうになったところでどうにか踏ん張ったリアナは、振り下ろされた真紅の刀の峰に向かって燃え盛る薔薇を力いっぱい振るった。
ーーガキィン!
力強く振われた銀の刃が、真紅の刀の峰を弾き返す。
その時に生まれた一瞬の隙を逃さなかったリアナは、すかさずもう一撃をお見舞いしようとするが、春風はすぐに後ろに下がってこれを回避した。
春風とリアナは武器を構え直してお互いを睨む。
小闘技場内に緊張が走り、審判役の職員と周囲の人達がゴクリと固唾を飲む。
そんな状況の中、春風は彼岸花を構えたまま考える。
(うわぁ。この状況どうすりゃあ良いんだよ。リアナすっごい強いし、全然隙がないし。いっその事ここで降参する? いやぁ、それだと何か悔しいし。じゃあ、ワザと負ける? いやダメだ。それだとリアナに後で怒られそうで怖い。うん、コレ完全に詰んでる……って、ちょっと待って。何で俺こんな思いしてんの?)
その時、春風の心の中は、激しい「苛立ち」でいっぱいだった。
(リアナも職員さんも無視するし、いつの間にか人が集まってこっち見てて、何かムカつくんですけど。『茶番』ってこういうのを言うんだろうな。うん、やっぱりすごくムカつく。ムカつくムカつくムカつく……)
「ムカつく」
春風の発した言葉に、リアナを含む小闘技場内にいる全員は思わず、
『え?』
と、何とも間抜けな声を漏らした。
(あ、やべ。心の声出ちまったわ)
次の瞬間、春風は素早くリアナに迫り、彼岸花による刺突を繰り出した。
「くっ!」
リアナは燃え盛る薔薇の刃でこれをガードするが、その後も春風は何度も何度も刺突を繰り出した。
(は、速い!)
リアナは2つの銀の刃でガードし続けるが、春風は攻撃の手を緩めないどころか、ドンドン攻撃のスピードを上げていった。
(ま、不味い。退避しなきゃ……)
そう考えて、リアナが横に移動しようとしたその時、
ーーズゴン!
「かはっ!」
リアナは横腹に強い衝撃を受けた。
(な、何が……?)
リアナは衝撃の正体を確かめようとチラリと横腹を見ると、そこには棒のような物が当たっていた。
(棒? 何処から?)
棒の先を見ると、そこにあったのは春風の左手だった。
どうやら、春風の左手に持っている棒が、リアナの横腹に打撃を与えた様だった。
さらによく見ると、その棒は黒塗りで、春風の右手の刀と同じ様に反りがあった。
その瞬間、リアナは棒の正体を理解した。
それは、彼岸花の鞘だった
実は春風はリアナに刺突を繰り出している間に、ベルトから鞘を外して手に持ち、リアナに隙が出来た瞬間に、鞘による打撃をお見舞いしたのだ。
「ぐ……あ……」
痛そうに片方の手で横腹を押さえるリアナ。
春風はそんな状態のリアナに迫ると、手に持った刀と鞘に自身の魔力を込めてから振り上げ、リアナに向かって力いっぱい振り下ろした。
「ぐぅっ!」
リアナは咄嗟に燃え盛る薔薇でガードするが、横腹にダメージを抱えた状態では思うように力が入らず、受けた衝撃で小闘技台の外まで吹き飛ばされ、背後の壁に衝突した。
「くはぁっ!」
背中にダメージを受けたリアナは立つ事が出来ずにその場に座り込んだ。
それを見て、審判役の職員が声高々に、
「場外! 勝者、ハル!」
と宣言した。
それを聞いて、
『オオーッ!』
と、周囲の人達の歓声が上がる。
そんな状況の中、春風は「ハァ」と溜め息を吐くと、心の中で呟く。
(……くだらない)
そこには、勝った事に対する喜びは微塵も無く、ただ失望と疲労だけがあった。
小闘技場での春風とリアナの戦いですが、前作とは違った展開で書きました(勝利するのは変わりありませんが)。




