第427話 水音編23 形勢逆転……と思ったら
「ば、馬鹿な……獣人に、妖精だと?」
突如現れた多数の獣人と妖精の登場に、ルイーズは困惑した。
その時、攻撃が弱くなったのがわかったのか、
「(しめた!)ウオオオオオッ!」
と、水音は「鬼の闘気」で自身の体を強化した後、立ち上がってルイーズを力いっぱい押し返した。
「くぉ!」
押し返されたルイーズはどうにか体勢を整えて地面に着地すると、「おのれ……」と小さく呟いて、水音をキッと睨みつけた。
すると、ルイーズの真下の地面がボコッと競り上がり、そこから尖った岩が勢いよく出現した。
「な、何ぃ!?」
突然のことに驚いたルイーズは、すぐに上へとジャンプして、その岩を回避した。
しかし、そこへ更なる追撃が来た。
何と、ルイーズの近くの木々から、無数の木の葉がもの凄い速さでルイーズに向かって飛んできたのだ。
「くぅ!」
ルイーズはそれら全てを間一髪のところで避けたが、いくら避けてもあらゆる方向から木の葉が飛んでくるので、それがルイーズを苛立たせた。
水音はそんなルイーズの様子を見て、
「ど、どうなってるんだ? 一体……」
と、ポカンとなっていると、
「大丈夫ですか?」
と、水音の横からそう尋ねる声がしたので、すぐにその方向へと振り向くと、
「あ、エスターさん!」
そこには、複数の若い男女達を連れたエスターがいた。
「エスターさん、どうしたんですか……?」
と、水音が尋ねると、
「私達も、助太刀に参りました」
と、エスターは「穏やかさ」と「強さ」を秘めた笑みを浮かべてそう答えた。
その答えに水音は「そ、そうですか」と小さく言うと、
「あの、今の攻撃のようなものって……?」
と、再びエスターに向かってそう尋ねた。
すると、エスターは自身の側にいる水音と同じ年頃の少女を見て、
「この娘の『スキル』によるものです」
と答えると、水音は「え?」と首を傾げて、
「……もしかして、彼女もですか?」
と、またエスターに尋ねると、
「はい、この娘もまた、私達と同じ固有職保持者です。勿論、彼らも」
と、エスターは少女だけでなく周りの男女達を見回しながらそう答えた。
その時、漸く攻撃が止んだので、地面に降りて肩で息をするルイーズが、
「く、獣人と妖精に固有職保持者……『悪しき種族』に『異端者』、だと?」
と、小さく呟くと、急に空を仰ぎ見て、
「帝国めぇえええええ! 何処まで神々を愚弄する気だぁあああああ!?」
と、「怒り」と「恨み」を込めて叫んだ。
それと同時に、ルイーズの周りの空間に黒い穴が開いて、そこから更に数十もの『神獣』達が現れて、一斉に襲いかかってきた。
当然、これにはセレスティア達やグレアム達も立ち向かったが、ただでさえ強いうえに数も多かったので、皆かなりの苦戦を強いられていた。
そんな中、水音達の戦いを見ていたループスが、
「……なぁ、1号。また逃げ出したいんじゃないのか?」
と、隣の分身1号に尋ねると、分身1号は体を震わせながら答える。
「……正直言うと、逃げ出したいよ。でもね……」
「でも?」
「ここの人達はみんな、僕にとっても、優しくしてくれたんだ。戦うのは、怖いけど、だからといって、何もしないで逃げ出したり、このままジッとしているなんて、嫌だ!」
と、真っ直ぐ水音達を見てそう答えた分身1号を見て、ループスはニヤリと笑うと、
「だったら、俺達もいくぞ! 手伝え!」
と、目の前の戦いを見ながらそう言った。
それを聞いて分身1号も、
「う、うん!」
と、力強く頷いた。
そして、ループスと分身1号は一歩前に出て並び立つと、
「「ウォオオオオオオオン!」」
と、力いっぱい夜空に向かって同時に吠えた。
すると、ループス達を中心に黒い波動のようなものが大きく展開した。
そして次の瞬間、先ほどまで勢いづいていた神獣達が、戦意を削がれたのか、急に一斉に弱々しくなった。
「ど、どうしたんだ神獣達よ!」
と、ルイーズが神獣達に尋ねたが、皆それに答えることなくボーッとしていた。
それを見たルイーズは、
「お、お前か……お前達の仕業かぁあああああ!?」
と、ループス達を睨みつけて怒鳴るようにそう言うと、素早くループス達のすぐ側まで移動し、
「この、邪神がぁあああああっ!」
と、怒りのままに斬り殺す勢いで、ループスに向かって持っていた剣を振り下ろした。
すると、
「やめろぉおおおおおおおっ!」
と、水音は「鬼の闘気」で強化した脚力で素早くループスの前まで移動すると、両腕をバッと開いた。
その結果、ザシュッという音を立てて、水音の胴体がルイーズの剣によって斬り裂かれた。
「ガ……ハ……」
一撃を受けて、傷口だけでなく口からも大量の血を吐く水音。
そんな水音を見て、
「み、水音ぉおおおおおおお!」
と、セレスティアの悲鳴が上がった。当然、煌良達や、リネットとアビゲイルも、その光景を見てショックを受けていた。
するとその時、斬り裂かれた水音の胴体の傷口から、青い炎が噴き出て、
「ガァアアアアアアアッ!」
「み、水音ぉ!」
「ヒ、ヒィイイイ!」
それが水音、ループス、そして分身1号を包み込んだ。




