第423話 水音編19 闇夜に現れし者
水音達が眠りについたその日の夜、保護区の上空では、1つの「影」が保護区を見下ろしていた。
その「影」が見つめる視線の先には、水音達が泊まっているグレアムの家があった。
そして、「影」は背中に生えた大きな「翼」を動かすと、グレアムの家目掛けて静かに飛んだ。
グレアムの家の側まで近づくと、「影」は静かに屋根の上に立った。
片膝をついて、右手で屋根の一部に触れると、「影」はスッと目を閉じた。
その後、「何か」見つけたかのように目を開けると、まるで沈むかのように屋根を通り抜けて、家の中へと入った。
出てきた場所は家の廊下のようで、「影」は誰にも気付かれないように、足音を立てずに廊下を歩き出した。
暫く歩いていると、やがて「影」は1つの部屋の前に立った。
「影」は屋根を通り抜けた時と同じように、部屋の扉を通り抜けた。
そこは客室のようで、中は小さな椅子とテーブル、そしてベッドが1つあって、そのベッドの上では1人の人物が寝息を立てて眠っていた。
それを見て、「影」は静かにベッドの側に近づいた。
ベッドの側に立つと、「影」は無言で右手に光を纏わせた。光は少しずつ形を変えていき、やがて剣の刀身のようになった。
そして、「影」は光の剣となったその右手で、ベッドで寝ている人物を貫いた。
ところが、
「?」
と、「何かが違う」と気付いた「影」は、すぐに手を抜こうとしたが、
「怒剛拳!」
と、何故か「影」の側にいた水音が、「影」に向かって攻撃を放った。
「っ!」
突然のことに驚いた「影」は、その水音の一撃をもろに受けてしまい、その結果、客室の壁を突き破って外まで吹っ飛ばされた。
その瞬間、
「水音、やったか!?」
客室の扉が開かれて、武装した状態のセレスティアや煌良達が入ってきた。勿論、ループスと分身1号、それと家の主であるグレアム一緒だ。
水音は壁に開いた穴から外を見ながら、セレスティアに答える。
「手ごたえはありました。ですが……」
と、水音が指を差した方へとセレスティア達が視線を向けると、そこにはヨロヨロと弱々しく立ちあがろうとしている「影」の姿があった。
そんな状況の中、ループスが口を開く。
「しっかし1号、よくあいつが来るってわかったな?」
と、「影」を見ながら分身1号にそう尋ねると、
「な、なんか、凄く嫌な気配を感じたんだ」
と、分身1号は怯えながらそう答えた。
水音はその答えを聞いて、
「ありがとうございます、1号様。おかげで助かりました」
と、水音は分身1号に向かってお礼を言った。
そう、実は皆が寝静まる前、いち早く「影」の気配を察知した分身1号が、
「あ、あの、なんか嫌な気配を感じたんだけど……」
と、知らせてきたので、水音達は万が一に備えて装備を整えた。
そして、水音達が準備が終えると、最後の仕上げとして、それぞれのベッドの上に、数日前に春風が自分達用に作ってくれた、改良型ダミー春風君人形、通称「ダミハル君マークⅡ」を置いておいたのだ。
「……その結果、ご覧の通りってわけか」
と、煌良がベッドの上を見ると、そこには胸の部分を貫かれた「ダミハル君マークⅡ」があった。
その時だ。
「おい、無駄口を叩いてる暇はないぞ」
というセレスティアの声を聞いて、水音達はセレスティアの見ている方向を見た。
そこには、漸く立ち上がった「影」の姿があった。
「奴を逃すわけにはいかない! 皆、私に続け!」
と叫ぶセレスティアと共に、水音達は壁に開いた穴から外へと飛び出し、「影」の前に立った。
「影」に対して学が灯を向けると、「影」は全身黒ずくめの衣服に身を包んでいて、顔にも黒い仮面をつけていた。
逃げようとする様子はなく、まるで水音達を待っていたかのように立っている「影」に、セレスティアは自身の武器である槍を向けながら尋ねる。
「貴様、一体何者だ!? 何故私の水音を狙う!?」
その問いに対し、「影」は静かに答える。
「……その男が『悪魔』だからだ」
と、女性の声でそう答えた「影」。その声を聞いて、
(あれ? この人の声、何処かで……?)
と、水音は心の中で「?」を浮かべた。
やがて「影」はそれまでつけていた黒い仮面を外すと、水音達の前にその「素顔」を晒した。
「あ、あなたは!」
それは、水音が見知った女性の顔だった。
謝罪)
大変申し訳ありません。前回の話の最後に、水音君達の宿泊先を「グレアムが用意した宿」と書きましたが、よく考えた末、まことに勝手ながら、宿泊先を「グレアムの家の客室」に変更させてもらいました。
本当にすみません。




