第411話 水音編7 臆病な「分身」
お待たせしました、本日2本目の投稿です。
水音の目の前にいる「黒い獣」ことループスそっくりの子犬。その正体をループスから聞かされて、水音は驚愕の声をあげた。
するとそこへ、
「おい、水音! さっきの叫びは一体何だ!?」
と、ループスを追ってきたのか、入り口で待ってたセレスティア達も、皆、洞窟内に入ってきた。
そして、奥の壁際で怯えているループスそっくりの子犬を発見すると、
「あれ? ループス様……って、ループス様が2人? いや、2柱?」
と、学が混乱した様子でそう言った。煌良や麗生も、目をパチクリさせていた。
「水音、これは一体どういう状況なんだ?」
と、セレスティアも学と同じように若干混乱した様子でそう水音に尋ねると、
「えっと、どうもあの方(?)が、『黒い獣』の正体みたいで、ループス様の分身だそうです」
と、水音も訳がわからないと言わんばかりの表情でそう答えたので、
『……ハァ?』
と、ループスとグレアムを除いた全員がポカンとした表情になった。
そんな中、それまで黙っていたループスが口を開いた。
「そうだ。こいつは2年前、俺が最初に作った、『分身1号』なんだ。以前、世間を騒がせていた『邪神の眷属』ってのいたろ? あれと同じ存在だ」
と、目の前にいるループスそっくりの子犬ーー分身1号を見てそう説明したループス。その説明に水音達は数秒ほど沈黙すると、
「あ、あれと同じなんですか!? なんかもの凄い怯えてますけど!?」
と、ハッと我に返った水音がそう問い詰めてきた。
するとループスは、
「……そうなんだよなぁ」
と、ため息を吐きながら答える。
「いやぁ、初めて分身を作る際にな、どんな風に作ろうかと考えた末に、『あ、そうだ。あの偽神達に対する恨みや怒りを表したかのような奴にしよう!』ってアイデアに至って、早速それで作り始めたんだけど、最後の方でちょっとしたアクシデントが起こってな、その所為で『力』はあるけど性格がものすっごく臆病になっちまったんだよ」
と、「ハハ」と自嘲気味に笑ったループスに、水音達は口をあんぐりとさせたが、
「そ、そうだったんですか。ん? でもそんな分身が、どうしてここにいるんですか?」
と、頭上に「?」を浮かべた麗生が尋ねてきたので、ループスは再びため息を吐きながら答える。
「実は、完成してから暫く経ったある日、活動拠点として使ってた北の地ででかい地震が起きてな、すぐにおさまったんだけど……」
ーーいやだぁっ! もうこんなとこいたくないいいいいっ!
ーーあ、おい1号、逃げるなぁ! コラァ、戻ってこーい!
「……って、もの凄い勢いで逃げ出してしまってな、それ以来ずっと行方不明になってたんだ」
と、再び「ハハ」と自嘲気味に笑いながら答えたループスに、水音達は皆、
『マジですか』
と、何とも言えない表情を浮かべた。
すると、それまで怯えていた分身第1号が口を開いた。
「……そうです。僕、あれから本体のもとを飛び出して暫く走っていた後、帰り方がわかんなくなって、あちこち彷徨ってたんです。その際、外敵から身を守る為に、『力』で体を大きくして」
その説明に水音は、
「ああ、あの姿ってそいういう事情が……」
と、納得に表情を浮かべた。
更に分身1号が話を続ける。
「でも、そうこうしてるうちにだんだん疲れちゃって、何処かで休もうって思った時、この洞窟を見つけたんです」
と、説明し終えたその時、グレアムが口を開いた。
「そうなんです。最初は魔物が侵入したのかと、私達は戦闘体勢に入ったのですが、ご覧の通りあまりにも怯えておりましたので、どうしたものかとギルバート陛下に相談したのです」
「何、父上に?」
「はい。その結果……」
ーーはーん、なるほどねぇ。で、お前らはなんか実害みたいのは無かったか?
ーー実害ですか? いえ、全くありませんが。
ーーじゃあ、ほっとけばいいんじゃねぇの? そのうちどっか行くだろうし。
「……と、言われてしまいまして」
「父上ぇ」
グレアムにそう説明されて、セレスティアは呆れ顔になった。
「で、それ以来ずっとこいつはここに住んでたってことか?」
と、ループスが尋ねると、
「はい。こうして話をすることが出来るようで、時々私や住人達との話し相手になってくれたり、子供達と遊んでくれたりしてたので、私達は仲良く暮らしてたのです」
と、そう答えたグレアムは、水達を見回しながら、
「ループス様、セレスティア皇女殿下、そして異世界の勇者様方、皆様を前に嘘をついてしまい、大変申し訳ありませんでした」
と、深々と頭を下げて謝罪した。
それを見て、水音達は戸惑いの表情になった。
そして、そんな水音達を、少し離れた位置からジッと見つめる人影があったが、誰一人それに気付いた者はいなかった。
謝罪)
申し訳ありません、前回の話の中で書き忘れた部分がありましたので、付け加えさせてもらいました。
本当にすみません。




