第409話 水音編5 グレアムの家にて
保護区入り口で衝撃の事実を聞いた後、水音達は代表であるグレアムに案内されるように、保護区の内部へと入った。
中はのどかな雰囲気をしていてそれなりに広く、そこに住んでいる者は皆、穏やかな表情をしていて、とても平和そうなところだった。
そんな平和そうな保護区の中を、水音や煌良達は「おぉ……」と感心しながら歩いていた。因みに、今彼らが向かっているのはグレアムの家で、保護区の奥の方にあるという。
「……不思議な場所だ」
歩いている途中で煌良がそう呟くと、
「うん、僕もそう思うよ」
と、それに続くように学もそう言った後、
「ねぇ、水音君はここに来たの初めてなの?」
と、前を歩く水音に尋ねた。
水音は歩きながら答える。
「うん、少しだけ話を聞いたことがあるけど、実際に来たのはこれが初めてだよ」
すると、水音前を歩くセレスティアが口を開く。
「すまないな、水音。ここは本来、皇族と一部の者しか来れない場所なんだ。ああ、だからといってお前を除け者にしようとしたわけではないぞ、ここ最近色々ありすぎてそんな暇がなかっただけで、いつかは連れてこうと思ってたんだ」
と、申し訳なさそうにそう言ったセレスティアに、
「ああ、そんな、気にしないでください」
と、水音は「大丈夫ですから」と言わんばかりに両手を振るった。
すると、ここで「あれ?」と何かに気づいた水音が、
「そういえば、アビーさんはここに来たことがあるんですか?」
と、セレスティアの隣を歩くアビゲイルに向かってそう尋ねると、
「来たことがあるもなにも、ここの出身だよ。アタシも、リネットもな」
と、アビゲイルは前を見たまま答えて、隣のリネットも黙ってコクリと頷いた。
「ええ、そうだったんですか!?」
と、水音が驚きながら尋ねると、
「ああ。それと、父上の側近のメルヴィン。あいつもここの出身だ」
と、今度はセレスティアがそう答えた。
その言葉に水音が「そう、だったんですか」と小さく呟くと、
「お、見えたぞ。あそこがグレアムの家だ」
と、セレスティアが前方にある赤い屋根の大きな家を指差した。
その後、水音達はグレアムの家に着くと、全員、とある一室に案内された。
そこは食堂のような広い部屋で、中央に大きなテーブルが1つと、いくつかの椅子が設置されていた。
そして、それぞれがその椅子に座ると、
「さて、セレスティア様。本日はどのような用事でこちらに来られたのですか?」
と、グレアムがそう尋ねてきたので、セレスティアは水音を交えて、今回自分達が保護区に来た目的を話した。
数分後、
「……なるほど、そういう訳でしたか」
と、セレスティア達の説明を聞いてグレアムは納得の表情を浮かべた。
そんなグレアムをにセレスティアが尋ねる。
「グレアム殿。『黒い獣』に関して、何か知ってることはないだろうか?」
セレスティアのその質問に対して、グレアムはというと、
「う、うーむ。それは……」
と、何やらとても言いにくそうな表情になって、まるで助けを求めるかように隣に座る者達を見たが、彼らは皆、「これは、話さなきゃいけないやつです」と言わんばかりに首を横に振るったので、グレアムは観念したかのように、
「我々が知ってることでしたら、あります」
と答えた。
「ほ、本当か!?」
と、セレスティアがガタッと椅子から立ち上がった。
グレアムは話を続ける。
「知ってると言いますか……その獣、ここにおります」
その言葉を聞いて、セレスティアや水音だけでなく、煌良やループスまでも、
『……え?』
と、皆、ポカンとした表情になった。
そんな状況の中、アビゲイルが口を開く。
「オイオイ、グレ爺! そりゃ一体どういうことなんだよ!?」
怒鳴るようにそう尋ねると、
「ああ、スマンなアビゲイル。正確には、『この保護区近くの山の中にある洞窟にいる』と言った方が良いかな」
と、グレアムはちょっと焦った様子で訂正した。
すると、今度はリネットが口を開いて、
「ちょっと待ってくださいグレアムさん。え、黒い獣がここにいるって、みんなは大丈夫なんですか!?」
と、アビゲイルと同じように怒鳴りながら尋ねた。
それを聞いたグレアムは、
「いや、それはぁ……」
と、更に言い難そうな表情になったが、やがて意を決したかのように答える。
「黒い獣自身は『そんな気はない』と言わんばかりに洞窟に篭ってしまってな。それ以降は特に問題もなく生活をしていたんだ」
と、何処か気まずそうに答えるグレアムさんを見て、
「あの、グレアムさん。もし宜しければ、その洞窟まで案内をお願いしたいのですが」
と、水音はまっすぐグレアムを見てそう頼み込んだ。
しかし、そんな水音の姿を見て、グレアムとその隣にいる人達は更に気まずそうな表情を浮かべて、
『いや、それは、そのぉ……』
と、一斉に呟いたが、
「あの、どうかお願いします! 僕には、どうしても『力』が必要なんです! 大切なものを守る為に!」
と、水音は深々と頭を下げてそう頼み込んだ。
その姿を見て、グレアム達は「うーむ」唸ると、
「……わかりました。そこまで言うのでしたら、案内しましょう」
と、再び観念したかのようにそう言ったので、
「あ、ありがとう御座います!」
と、水音はお礼言った。
その後、
「それでは、行きましょうか。あなた方の探す『黒い獣』がいる洞窟に」
と、グレアムは水音達を連れて家を出ると、再び案内を始めた。




