第408話 水音編4 「保護区」到着
ウォーリス帝国保護区。
それは、ウォーリス帝国帝都より少し離れた位置にある特別な区域のことで、そこには歴代の皇帝が守ってきた、訳ありの者達が暮らしているという。
その保護区を目指して、帝都か水音一行を乗せた数台の馬車が出発した。
道中は特にこれといった大きな問題などはなく、皆、それぞれの馬車の中で快適な旅を満喫していた。
そして、暫くの間馬車に揺られていると、
「お、見えたぞ」
と、窓の外を見ていたセレスティアがそう言ったので、水音達も馬車の外を見た。
(あそこが、保護区……)
その後、保護区の入り口近くで馬車が止まると、水音達は馬車を降りて入り口まで歩いた。
入り口では、数人の男女が水音達を出迎えていた。
「ようこそおいでくださいました、セレスティア皇女殿下」
と、彼らの代表と思わしき初老の男性がそう言うと、
「ああ、皆、出迎えご苦労」
と、セレスティアは落ち着いた表情でそう返事した。
その姿に水音達が見惚れていると、セレスティアは水音達の方へと振り向いて、
「紹介しよう、この保護区の代表の、グレアムだ」
と、その初老の男性を紹介した。それに続くように、
「グレアムと申します、以後お見知りおきを」
と、男性ーーグレアムは水音達に向かって丁寧なお辞儀をしたので、水音達も「ど、どうも」と一斉にお辞儀した。
すると、
「ム!」
と、何かに気づいたかのように、グレアムが水音の側にいるループスに近づいた。
そして、ループスのすぐ側で止まると、グレアムはスッと跪き、
「失礼を承知でお聞きします。『月光』と『牙』の神ループス様で御座いますでしょうか?」
と尋ねてきた。
その様子にループスは少し驚いたが、
「いかにも。こんな姿をしているが、俺が『月光』と『牙』の神ループスだ」
と、小さな姿に似合わないキリッとした態度でそう答えた。
その答えを聞いてグレアムが、
「おお、やはりそうでしたか」
と、納得したかのような表情を浮かべると、スッと静かに立ち上がり、
「……フッ!」
と、思いっきり力んだ。
次の瞬間、グレアムの体に変化が起きた。
短い袖から見えた細身の腕が、まるで筋肉がついたかのように大きくなった後、その腕全体が黒い体毛に覆われて、お尻の辺りからぴょこんと狼の尻尾が生えてきて、顔も人間の顔から狼の顔へと形を変えた。
やがてグレアムの変化が終わると、
「その姿……お前、獣人か?」
と、ループスは驚いた表情で尋ねてきたので、
「そうです。私は狼の獣人なのです」
と、狼顔のグレアムは、最初と同じように丁寧にお辞儀をしながらそう答えた。
その答え聞いて水音達が「ええっ!?」と驚きの声をあげると、
「私だけではありません」
とグレアムはそう言って、自身の後ろにいる男女達を見た。
すると、男女達もグレアムと同じように「ハッ!」と力み、その姿を変化させた。
ある男性は背中から美しい模様を持つ蝶の羽を出し、ある女性はその体を猫へと変えた。それはまさに、猫型の獣人だった。
その姿を見て驚いた水音は、
「あ、あの、セレスティア様! コレは一体……!?」
と尋ねようとすると、
「そう、ここは普通の所では生きられない人間と一緒に、獣人と妖精も暮らしているのさ」
と、セレスティアは真面目な表情で答えたので、
『え、えええええええっ!?』
と、水音、煌良、学、麗生は驚きの声をあげた。




