第407話 水音編3 衝撃の事態と、出発
今回は、いつもより長めの話になります。
水音達がアビーことアビゲイル・ガリアン(以降はアビゲイルと記す)に会いに職人区を歩いていた丁度その頃、
「ただいまぁ、帰ったわよぉ……って、あら?」
と、エリノーラ、ギルバート、レイモンド、そして帝国兵と騎士達が帝城に着くと、何やら中は慌ただしい様子だった。
「お、オイオイ、一体どうしたんだ?」
と、ギルバートがそう呟くと、
「あ、父上に母上! いつ戻られたのですか!?」
と、廊下の向こうから驚いた様子のエドマンドが駆け寄ってきた。当然、オズワルドとアンジェリカも一緒だ。
エドマンド達の様子がおかしかったことにギルバートは少し驚いたが、
「今帰ったところだ。で、この慌ただしい様子が一体何があったんだ?」
と、落ち着いた表情でそう尋ねると、エドマンドはギルバートのすぐ側に寄り、周りに聞こえないよう小さな声で言った。
「実は、地下牢にいる筈の囚人達が数名、忽然と消えてしまったのです」
「なんだと!? いつから居なくなった!?」
「母上が北の大地へと発ってからすぐのことです。見張りの兵士達の話では、ある時いきなり居なくなったとのことです」
エドマンドのその報告に、ギルバートは「マジか……」とショックを受けた。それは、側で聞いていたエリノーラとレイモンドも一緒だった。
しかし、ギルバートはすぐに我に返ってエドマンドに尋ねた。
「で、消えたのはどいつなんだ?」
「それが……」
エドマンドは答えるのを躊躇ったが、すぐに意を決したかのように答えた。
「以前、春風を暗殺しようとした、セイクリアの騎士達です」
「な、何だと!?」
「更には、古代兵器を使って春風を抹殺しようとした者達もです」
「マジかよ!?」
衝撃の報告を受けて、ギルバートは先程以上のショックを受けた。
さて一方、アビゲイルが住む「鍛冶屋ガリアン」に着いた水音達はというと、約1名を除いた全員が、建物内にある客室に通されていた。
そして、そこで暫くじっとしていると、
「おう、待たせたな」
と、客室の入り口からさっぱりした様子のアビゲイルが入ってきた。本人曰く、
「汗かいたからシャワー浴びてくるわ」
だそうだ。
ただ、何故かセレスティアも一緒に入ってきて、彼女もアビゲイルと同様にさっぱりした様子だった。
「いやぁ、さっぱりしたさっぱりした」
と、セレスティアが爽やかな笑みを浮かべてそう言うと、
「ったく、シャワー中に乱入なんてしやがって」
と、セレスティアを見て文句を言っていた。どうやらシャワーを浴びてる最中にセレスティアが入ってきて、そのまま一緒に浴びたようだった。
すると、
「いいじゃないか、さっきも言ったが私達とお前の仲なんだし、何よりそんなダイナマイトボディを誇るお前が悪い」
と、セレスティアは悪びれないどころかムッとした表情でそう言ってきたので、
「いや、テメェもアタシと変わんないだろが!」
と、アビゲイルはそう突っ込みを入れた。
その後、
「すみませんが、2人ともその辺で……」
と、リネットに諭され、アビゲイルが客室内にあるソファーに座ると、
「で、今日はどうしたんだ? いつまでこっちにいるんだ?」
と、自身の正面に座ったセレスティアに向かってそう尋ねた。
その質問に対し、セレスティアは真面目な表情で、
「ああ悪いが、補給が済み次第また出発する予定だ」
と答えると、
「……へぇ、その表情、いかにも『事情があります』って顔だな。何かあったのか?」
と、アビゲイルが再び尋ねてきたので、セレスティアは水音と共に、
「実はな……」
と、アビゲイルに北の地での出来事を全て話した。
数分後、
「何ぃ、『保護区』に行くだぁ?」
と、アビゲイルが少し驚いた表情でそう言ったので、
「ああ、そうなんだ。で、どうだろう、よければお前も一緒に来るか?」
と、セレスティアはアビゲイルを誘った。
すると、
「当然、行くに決まってんだろ! 丁度あそこで採れる『材料』が尽きてきそうなんだよ!」
と、アビゲイルはノリノリでそう返事をした。
そんな彼女の様子を見て、セレスティアが「おお! そうかそうか!」と喜びの表情になった、まさにその時、
「ああ、そうだ! ちょっと待ってろ!」
と、アビゲイルはガタッとソファーから立ち上がると、駆け足で客室内から出ていった。
それから少しして、
「おう、待たせたな!」
と、何やら大きな包ものをいくつか抱えたアビゲイルが入ってきた。
頭上にいくつかの「?」を浮かべたセレスティア達をよそに、アビゲイルは客室中央のテーブルの上に、その包ものを並べた。大小合わせて、その数5つ、だ。
その後、アビゲイルは水音を見て言う。
「開けてみな。やっと出来上がったんだから」
その言葉に従って、水音は1つ、また1つと包みを剥がした。
そして、全ての包みを剥がし終えると、テーブルには、鞘に納められた短剣、普通のより短めの槍、片手サイズの戦鎚、鞭、小型の盾の、5種類の武器が並んでいた。
「アビーさん、コレって……」
と、水音がアビゲイルに尋ねると、彼女は静かに答えた。
「漸く出来上がったお前の追加装備、名付けて『ガッツシリーズ』だ」
「ガッツシリーズ……」
「ああ。因みにそれぞれの名前は順番に、『魔剛短剣ガッツ』、『魔剛短槍ガッツ』、『魔剛戦鎚ガッツ』、『魔剛鞭ガッツ』、そして、『魔剛小盾ガッツ』だ」
水音は一通り武器の名前を聞いた後、
「試してみていいですか?」
と、アビゲイルに尋ねた。
その質問にアビゲイルは「ああ、いいぜ」と答えると、水音は早速そのガッツシリーズを持って移動した。場所は建物の中にある武器を試せる地下室だ。
それから暫くの間、水音は出来上がったガッツシリーズを順番に試していった。
そして、全ての武器を試し終えると、
「すごい、バッチリです! ありがとうございます!」
と、水音はアビゲイルにお礼を言った。
すると、アビゲイルは素早く水音に近づき、
「気に入ってくれたみたいだな」
と、小さく言うと、水音の頭を優しく掴み、その唇にキスをした。
その際に、セレスティアが「あ、コラァ!」と驚き、リネットが「まったく……」と呆れ顔になり、煌良、学、麗生、そしてループスが顔を赤くしたのは、言うまでもない。
その後、なんやかんやで無事補給を終えると、
「よし、それじゃあ『保護区』に向かって、出発だぁ!」
と、セレスティアが声高々にそう宣言し、全員、帝都を出発した。




