第401話 リアナ編17 男と男の「約束」
「そ、そんな……ギャレットさぁあああああああん!」
ギャレットがアッシュの攻撃を受けたことによって起きた爆発。
そして、それを見て悲鳴をあげた彩織。
「ハッ! ギャレット殿!」
その悲鳴でハッとなったジェロームが、すぐに他の幽霊や住人達と共にその場に向かった。
「獣人の修練場」への入り口がある小屋があったその場所は、爆発によって大きな土煙が立っていた。小屋自体も吹き飛ばされていたようで、ジェローム達だけでなく、彩織達も顔を真っ青にしていたが、土煙がだんだん薄くなっていくと、
「な、何ぃ!?」
と、アッシュが驚いたように、そこにはドーム状の透明な壁に包まれたギャレットがいた。
ギャレットはチラリと自身の背後を見ると、そこには先ほど攻撃されそうになった幼い少女が、恐らく母親だろうと思われる女性に抱きしめられていた。
その姿を見た後、ギャレットは視線をアッシュに向けて、
「天使さんよぉ、随分と舐めた真似してくれるじゃねぇか、えぇ?」
と、挑発するように言った。
「き、貴様、一体どうして……?」
と、アッシュが戸惑いながらギャレットに尋ねると、ギャレットはニヤッと笑いながら、その手に持っている「ある物」をアッシュに見せた。
それは、所々に装飾が施された、掌サイズの丸い石のようなもので、ギャレットはその石のようなものを見せながら、
「半人前の『賢者』が作った、『結界発生魔導具』だとさ」
と、簡単な説明をした。
その説明が終わると、魔導具はパキッと音を立てて真っ二つになり、それと同時に透明な壁も消えた。
一方、説明を聞き終えたアッシュは、
「賢者……だと? 幸村春風か!? また、あいつだというのかぁ!?」
と叫ぶと、黒い禍々しいオーラのようなものが、アッシュの全身から噴き出てきた。
そんなアッシュを前に、
「オイ、じーさん幽霊ども! そいつらと下がってろ!」
と、ギャレットがアッシュに視線を向けたままジェローム達にそう言うと、すぐにジェローム達は少女と女性を連れて安全そうな場所へ下がった。
そんな状況の中、禍々しいオーラのようなものを纏ったアッシュが口を開く。
「ふ、ふん。どうやら命拾いしたようだな。だがもう結界はないようだし、見たところ貴様も無事というわけではなさそうだな」
と、アッシュが言うように、ギャレットの方はというと、結界を張っていたとはいえ全くの無傷というわけではなかった。
鎧状態のボーンバードは粉々になっていて、体中も傷だらけになっていた。恐らく、大急ぎで結界発生魔導具を取り出した為、その間に攻撃を受けていたのだろう。
しかし、ギャレットはそんな状態であるにも関わらず、
「へっ! だったら、どうだってんだ? あぁん?」
と、ニヤリと笑いながらアッシュに向かってそう言った。
それに対して、アッシュがピクッとこめかみを動かすが、そんな彼に構わず、ギャレットは話を続ける。
「俺ぁな、自分でも碌でもない野郎だってんのは嫌ってほどわかってんだ。何せ、『任務』とか『世界平和』なんてもんの為とはいえ、同じ『人間』を何人も殺してきたんだからな。正直、いつ何処でくたばっても文句は言わねぇ覚悟だった。だがな……」
ーーリアナ達のこと、よろしくお願いします。あ、でも、ちゃんとギャレットさん自身も、生き残ってくださいね。
「……異世界から来た『賢者』と、ガラにもなく『男同士の約束』なんてもんをしてきたんだ。守らなかったら、それこそ男が廃るってもんだぜぇ!」
そう叫ぶように言ったギャレット。そんな彼を見て、アッシュは表情を歪ませると、
「貴様ぁ。ならば、その『約束』とやらを果たせぬまま……」
かなり大きめの光の槍を作り、
「死ねぇえええええええっ!」
それをギャレットに向かって投げつけようとした。
その時、ギャレットの背後から、何かが勢いよく飛び出した。
それは、白い火の玉のようなもので、ギャレットは「何だ!?」といくつもの「?」を浮かべている間に、その白い火の玉はアッシュが作った光の槍を粉々にし、
「グアアアアアアアッ!」
アッシュの白い天使の翼を、半分ほど焼いた。
翼を焼かれたアッシュは、そのまま地面に落下した。かなり高い位置から落ちたにも関わらず、それほどダメージを受けたようには見えないというところは、「天使」になったことによるものだろう。
その後、ギャレットはすぐに自身の背後を振り向くと、そこにいたとある人物を見て、強張らせていた表情を緩ませた。
(たく、漸くってか)
そこには、長い白髪にそこから伸びた狐の耳、そして……9本の狐を尻尾を生やした、
「おせーよ、リアナ嬢ちゃん」
「えへへ、ごめんなさい」
リアナ・フィアンマがいた。




