第395話 リアナ編11 黒い感情
「く……黒い、感情?」
「「そう、私達はあなたの『本能』と、あなたが持つ人間への『黒い感情』から生まれたの」」
自分が人間に「黒い感情」をもっている。
そう言われて戸惑うリアナに、獣人リアナと妖精リアナは、真面目な表情でそう告げた。
「な、何を言ってるの? 私にそんな……そんな感情なんて……」
と、リアナは訳がわからないと言わんばかりの表情で、彼女達の言葉を否定しようとしたが、
「『無い』、とは言わせないよ」
「そうよ、本当は自分でもわかってるんじゃないの? あなたが人間達に、どういう感情を抱いているのか」
と、2人のリアナ達は表情を崩さずに反論してきたので、
「うぐ! それは……」
と、リアナも反論しようとしたが、どういうわけかその先の言葉を言うことが出来なかった。
一方、リアナ達を見守るヘリアテス達はというと、
「り……リアナが、人間に『黒い感情』を抱いている? ヘリアテス様、彼女達は一体、何を言ってるのですか?」
と、ショックを受けていたアデレードが、顔を青くしながらヘリアテスに尋ねたが、
「……」
と、ヘリアテスも顔を青くしただけで何も答えようとはしなかったので、
「ちょ、ちょっとヘリアテス様、あなたは何を知ってるのですか!?」
「そうです! あなた、何か知ってるんじゃないんですか!? ていうか、私達の娘に何をしたんですか!?」
と、アデレードだけでなくシルビアもヘリアテスを問い詰めた。そして、そんな彼女達を落ち着かせようと、彩織や、エルネスト達は必死になってヘリアテスから引き剥がそうとした。
そんなアデレード達をよそに、ギャレットはというと、
(リアナ嬢ちゃん……)
と、リアナを見て表情を曇らせていた。当然だろう、なにせギャレットはリアナの両親を殺し、彼女から故郷を奪った「断罪官」なのだから。
そして今、2人のリアナ達の言葉に戸惑うリアナを見て、恐らくリアナには、自分に対する「憎しみ」を持っているに違いないと感じたのだ。
(リアナ嬢ちゃん……俺は……)
それは、彼女から両親と故郷を奪った罪悪感なのか、それとも別の感情なのか、ギャレットは自身の胸を押さえて、辛そうな表情になった。
さて、そんな彼らをよそに、3人のリアナ達はというと、
「ねぇ、妖精の私」
「なぁに、獣人の私」
「もしかしてこの娘、自分がどんな感情を抱いているのか忘れてるんじゃないの?」
「そうね、まさかあそこまで戸惑うなんて。よっぽど、彼の存在が大きかったってことね」
と、未だに戸惑いの表情を見せるリアナを見て、獣人リアナと妖精リアナはそんなことを話していた。
その後、2人はお互い「うん」と頷き合うと、
「ねぇ、人間の私」
「?」
「思い出せないようなら、私達が言うね」
と、リアナに向かってそう言った。
その瞬間、リアナはハッとなって、
「え、ちょ、ちょっと待って! それ、思いっきり言っちゃ駄目な気がする! っていうか、絶対に駄目!」
と、2人のリアナを止めようとしたが、
「「いいえ、言わせてもらうね」」
と、2人同時に言われてしまい、リアナはショックでよろめいた。
そして、2人のリアナ達はそれを見て、「隙あり!」と言わんばかりの表情で、
「「そう、あなたが抱いているのは……」」
と、口を開いた。
その瞬間、
「だ、駄目ぇ!」
と、止めようとするリアナと、
ーーい、一体、どんな「感情」を抱いているんだ!?
と、不安顔になったヘリアテス達。
「「あなたが抱いているのは……」」
彼女達を前に、2人のリアナ達は、ビシッとリアナを指差して言い放つ。
「「『男と女、両方纏めて愛し尽くす』という、歪んだ『欲望』よ!」」
そう言い放った瞬間、その場にいる誰もが沈黙した後、
「……」
と、リアナは無言で顔を真っ赤にし、ヘリアテス達は一斉に、
『……ハァ?』
と、皆、頭上に「?」を浮かべながら首を傾げた。




