第393話 リアナ編9 リアナ、「試練」の時
突如リアナの前に現れた、「獣人」としてのリアナと、「妖精」としてのリアナ。長いので以降は、「獣人リアナ」と「妖精リアナ」と呼ぶことにしよう。
ともあれ、そんな獣人リアナと妖精リアナを前に、リアナ本人だけでなくヘリアテス達も開いた口が塞がらなかった。
しかし、それからすぐに、
「……ハッ! オ、オイじいさん! なんかリアナ嬢ちゃんが増えたぞ! 何なんだよありゃあ!?」
と、正気に戻ったギャレットが、ジェロームに掴みかかった。といっても、ジェロームは既に幽霊なので、掴むことは出来なかったが。
そして、そんなギャレットに続くように、
「そ、そうですよジェロームさん! あれは一体何なのですか!? というか、ここは一体どのような所なのですか!?」
と、アデレードもジェロームに問い詰めた。
ジェロームは真面目な表情で口を開く。
「落ち着いてくだされお二方。その質問に答える為に、まずはこの場所について説明しましょう」
その言葉を聞いて、ギャレットとアデレードは落ち着いてきたのか、ジェロームから1歩離れた。
それを確認すると、ジェロームは再び口を開く。
「まずはこの場所じゃが、ここは、『獣人の修練場』という」
「獣人の……?」
「修練場だと?」
「そうじゃ。元々『獣人』という種族は、戦闘の時、『本能を抑えた姿』と『本能を解き放った姿』の、2つの姿を使い分けて戦いのじゃ」
「本能?」
「そう、獣人が持つ『獣』の本能じゃ。それを解放すれば、抑えていた時よりも高い戦闘力を発揮するのじゃが、使い方を誤れば、己だけでなく周りまで危険に晒してしまうのじゃ」
「獣の、本能。そうか、つまりここは、その獣の本能に負けない、強い精神力を手に入れる為の場所なんですね?」
アデレードがそう言うと、ジェロームはコクリと頷きながら、
「そうじゃ。ここは妖精の秘術を用いて作られた場所でな、中央のあの水晶玉に触れることによって本能を具現化させた自身の『分身』を生み出し、その『分身』と戦いことによって、本能に負けない強靭な精神力を持つ戦士を生み出す為の場所なのじゃ」
と、説明すると、アデレードやギャレット達は納得の表情を浮かべた。
だがそれからすぐに、ジェロームは表情を曇らせる。
「じゃがのぉ……」
「? どうしたんですか?」
「本来なら、ここで生み出される『分身』は1人だけの筈なのじゃが、どういうわけか2人も生まれとる。もしかすると、長いこと放置されてきた所為で、何処か不具合が生まれたのかもしれん」
「え、じゃああれ、不具合によるものなのか!?」
ジェロームの言葉にギャレットが驚くと、
「いえ、それだけじゃないかもしれません」
と、それまで黙っていたシルビアが口を開いた。
それを聞いたギャレットが、
「どういうことだ?」
と尋ねると、
「私は獣人と妖精のハーフ。そしてあの子は、そんな私と人間であるエルネストとの間に生まれた娘」
と、シルビアがそう答えた後、それに続くように、エルネストも口を開く。
「そう。そして僕は、『魔戦士』の職能を持つ職能保持者。恐らく、シルビアの獣人と妖精の力に、僕の職能保持者としての力が加わったことによって、あの2人のリアナが生み出されてしまったのではないかと思うんだ」
そう説明したエルネストの言葉に、ギャレットは「マジかよ」と冷や汗を流した。
だが、そんなギャレットをよそに、
「じゃがまぁ、こうして修練場の機能が再び使えたのは事実じゃ」
と、ジェロームがそう呟くと、目の前にいるリアナ達に向かって言う。
「さぁリアナよ! 今こそお主の全力をもって、その2人のお主と戦うのじゃ! そして、その戦いを制した時、お主は更なる『強さ』を身につけられるじゃろう! 多分!」
『いや、そこははっきりしとこうよ!』
と、周囲から突っ込みの声があがる中、
「ま、そういうわけだから……」
「思いっきりぶつかり合いましょう? 人間としての私」
と、それまで黙って話を聞いていた獣人リアナと妖精リアナが口を開き、戦闘態勢に入った。
そして、2人のリアナ達は不敵な笑みを浮かべて、
「一応、最初に言っておくけど……」
「私達……」
「「負ける気なんて、これっぽっちもないからね!」」
と、挑発すると、リアナは静かに2人を睨んで、
「……上等だよ」
と、愛用の武器である両刃剣「燃え盛る薔薇」を構えた。
長くなってしまったが、かくして、リアナにとって『試練』とも言える戦いが始まったのだが……村の外では、何やら不穏な気配が近づいてきてるのを、誰も気づかないでいた。




