第390話 リアナ編6 「死霊術師」のコール
「ど、どうも、ここの、住人です」
と、突如現れた灰色ローブの人物がそう言うと、
『……え?』
と、リアナ達は頭上に「?」を浮かべた。
「あー、えっとぉ。あんた、生きた人間かい?」
と、ギャレットが灰色ローブの人物に向かってそう尋ねると、
「は、はい。僕は、ちゃんとした生きた人間です」
と、灰色ローブの人物は、何故か怯えた様子でそう答えた。どうもギャレットに怯えているようだった。
ギャレットはその様子を見て、
(あぁ、そういうことか!)
と、何かを察したのか、目の前灰色ローブの人物に向かってこう言った。
「安心しろ、俺は確かに断罪官だが、ここへは断罪官として来たわけじゃねぇんだ」
その言葉を聞いて、灰色ローブの人物はビクッとなったが、
「ほ、本当、ですか?」
と、恐る恐るギャレットに向かってそう尋ねた。
「ああ、本当だ。ていうか、今の断罪官は、もう壊滅したようなもんなんだわ」
ギャレットは頭を掻きながらそう言うと、それを聞いたシルビアら幽霊達は、
『へぇ、そうなんだ……って、えええええええ!?』
と、幽霊であるにもかかわらず、今にも目玉が飛び出そうなくらいの驚きの声をあげた。
そんな状況の中、灰色ローブの人物が「え、あ……」と戸惑っていると、
「大丈夫」
と、ギャレットの隣に立っていたリアナが、穏やかな笑みを浮かべてそう言った。
「……」
灰色ローブの人物はその言葉を聞いて落ち着いて来たのか、やがて意を決したかのように、かぶっていたフードを脱ぐと、
「あ、あの。僕は、コール。コール・ブラックマン。『死霊術師』の……固有職保持者です」
と、ボサボサした髪型に眼鏡をかけた、凄く気の弱そうなその人物ーーコールはそう自己紹介した。
ギャレットはそんなコールを見て、
「やっぱりな」
と、小さく呟くと、シルビアとエルネストを含めた幽霊達が、一斉にコールの前に集まった。それはまるで、コールを守るかのようだった。
更に、そのコールの横に、背後にあった新しい家の影から、数人の若い男女に幼い子供達と、
「な、何アレ!? 骨!?」
と、詩織が驚くように、彼らの他に、骨だけになった獣のようなものが、何体かコールの側に集まった。
その様子を見て、
「お、オイオイ、ちょっと待……!」
と、ギャレットが慌てて何かを言おうとしたが、それを遮るかのように、リアナがギャレットの一歩前に出ると、
「初めまして、私、リアナ・フィアンマ。あなたと同じ、固有職保持者だよ」
と、コールに向かってそう自己紹介した。
コールはその言葉を聞いて「え?」となったが、リアナはそれに構わず、
「あなたももしかして、この村の生き残りかな?」
と穏やか笑みを崩さずにそう尋ねた。
コールはリアナのその姿勢に何かを感じたのか、再び意を決したかのように、数歩程前に出て、
「ち、違います。僕達は、3年前にこの村に来ました」
と、チラリと子供達を見ながら、リアナに向かってそう答えた。
「その骨さん……達は?」
「このコ達は、『ボーンビースト』。スキルで作った、友達であり、家族、です」
「へぇ、そうなんだ」
と、リアナはそう言うと、チラリとコールの背後のシルビア達を見た。シルビア達はリアナを前にして少し気が緩んではいるが、他の者達はまだ警戒心をといていないようだった。
その後、リアナはコールに視線を戻すと、
「えっと、失礼なこと聞くけど……」
「な、何ですか?」
「あなた、男かな?」
「男です」
「歳はいくつ?」
「17歳、ですけど」
と、コールはそう答えると、リアナはにこりと笑って、
「じゃあ、コール君でいいかな?」
と尋ねた。
コールはそれを聞いて「う、うん」と頷くと、リアナは真面目な表情になって、
「あのねコール君。それに父さん母さん達も聞いて。今こちらのギャレットさんが言ってたように、ここへは断罪官とは関係ない用事で来たの。どうか、私達の話を聞いてほしいんだ」
と、真っ直ぐコールを見てそう言った。
その言葉を聞いて、コールはチラリとシルビア達を見ると、
「大丈夫。嘘は言ってないと思うわ」
と、シルビアが真剣な表情でそう言ったので、
「わかりました。話を聞きます」
と、コールはリアナに向き直ってそう返した。
するとリアナは、
「ありがとう!」
と、満面の笑みを浮かべると、
「じゃあ、ギャレットさんはいいとして……」
と言って、アデレードの側に駆け寄り、ニコッと笑って口を開く。
「紹介するね。こちらはアデレード・マリッサ・グレイシア。グレイシア王国のお姫様」
『え、お、お姫様って……!?』
「次に、この娘達は彩織ちゃんと詩織ちゃん。異世界から召喚された、『勇者』」
『は!? い、異世界って!?』
「で、最後に、この人の名前はヘリアテスさん。この世界の本当の『神様』で、私を育ててくれた、お母さん!」
元気よく紹介したリアナに、「ど、どうも」と照れるヘリアテス達。
コール達は、そんな彼女達を見て、少しの間固まると、
『ハァアアアアアアアッ!?』
と、皆、一斉に驚きの叫びをあげた。




