第39話 中立都市シャーサル
それから暫く歩き続けて、無事シャーサルの外壁に到着した春風、リアナ、ジゼルは、まず内部に入る為の門に向かった。勿論、その間ジゼルには零号の中に入って貰っている。
門に着くと、そこには多勢の人達や馬車といった乗り物などがズラリと並んでいて、次々に門番の審査を受けていたので、春風達は急いで列に並んだ。1人、また1人と審査を終えて門の向こうに入っていく人達を見て、春風は次第に緊張していった。
そんな春風に、リアナは優しく話しかける。
「大丈夫だよ、春風。ちゃんと打ち合わせ通りにやれば、怪しまれずに中に入る事が出来るから」
「う、うん。わかった」
そんなやり取りをしているうちに、とうとう春風達のばんになった。門番らしき簡単な鎧を着た男性がが近づいてきたので、先にリアナが対応した。
「ロナルドさん、ただいま戻りました」
「やあ、おかえりリアナ、随分早かったな」
ロナルドと呼ばれた門番らしき男性がリアナにそう言うと、側にいる春風の方を見ながらリアナに尋ねる。
「もしかして、そっちの……お嬢さん?」
「いえ、男の子です」
「おお。それは失礼したな。で、彼が今朝言ってた……」
「はい、私のお父さんの友人の息子さんです」
リアナが春風を見ながらそう答えると、春風はそれに合わせるように、
「はじめまして、ハルと申します」
と、大人しそうな笑みで偽りの名を名乗った。
「これはご丁寧に。私は、ここの門番を務めているロナルドだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って、門番のロナルドへの挨拶を終えた春風。
その後、ロナルドは奥から大きな水晶玉を用意すると、
「それじゃあハル、早速怪しいところがないか、チェックをするからな」
と、春風の目の前にその水晶玉を差し出した。
すると、水晶玉から白い「光」が出てきて、春風の全身を包んだ。
(なんだかくすぐったいな)
そんな事を考えていると、「光」が春風の全身から離れ、水晶玉へと戻った。
次の瞬間、水晶玉に赤い丸印が浮き出てきて、それを見たロナルドは、
「よし、合格だ。都市の中に入る事を許可する」
と、笑顔で合格を言い渡した。
「ありがとうございます」
春風はガッツポーズをとりたい気持ちを抑えながらそう言うと、
「うん、じゃあ行こっか」
と、リアナは春風の手を引いてその場を離れた。
少し歩いていると、リアナが小声で春風に話しかけてきた。
「ね、上手くいったでしょ?」
「うん、良かった。バレるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしたよ」
「大丈夫だって。あの程度の『光』なんかが、神様の加護を受けた春風に通じるわけないもん」
実はシャーサルに入る為の審査に使う水晶玉については、既にリアナから聞いて知っていた。
リアナ曰く、あの水晶玉は神(侵略者の親玉達)から与えられた特別な道具で、そこから出た「光」が合格と判断すれば赤い丸印が浮かび、そうでなければ青いばつ印浮かび上がる様になっているのだ。つまり、あの「光」は神の力の、ほんの一部という事になる。
しかし、その力も元々は本当の神様であるヘリアテスとループスのものである。ならば、本人の加護を受ければ大丈夫という結論に至り、春風はすぐにヘリアテスから加護を受けて、その「光」に触れられても問題ない様にしたのだ。
そして、後は予め話し合って決めた春風の偽の設定を門番(この場合はロナルド)に言う事によって、怪しまれない様にすれば良いというわけだ。
「さ、もうそろそろだよ」
暫く歩いていると、門を抜けた先に見えたのは……、
「ようこそ、『中立都市シャーサル』に!」
リアナにそう言われて春風は辺りを見回すと、そこは多くの人達で賑わう大都市だった。ただし、都市といっても建物は日本と違って石造りや木造のものが多いのだが。
「す、すごい!」
春風は前に見たセイクリアの王都以上の活気に加え、何処か力強さを感じさせるこの都市に、僅かではあるが感動した。
「ほら、春風……じゃなかった、ハル、あそこを見て」
そう言ってリアナが指差した先にあるのは、大きな塔の様な建物だった。
「あそこがこの都市の中心、『ハンターギルド総本部』だよ」
「あそこが……」
リアナは春風の手を取って、
「行こう!」
と言うと、その手を引っ張りながら、先程指差したギルド総本部に向かって歩き出した。
春風はリアナに手を引かれながら、心の中で呟いた。
(あそこが『ハンターギルド総本部』。俺はあそこで、ハンターになるんだよなぁ……)
そう思った春風は、リアナに気付かれない様に「ハァ」と小さく溜め息を吐きながら、1週間前の事を思い出していた。




