第38話 再会後の道中にて
再会を果たした後、春風とリアナはシャーサルを目指して森の中を進んでいた。
その最中、リアナはふと春風を見て、
「それにしても春風」
「? 何?」
「その姿、結構カッコいいね」
と、今の春風の姿を褒めた。
「あ、うん。あ、ありがとう……」
春風は恥ずかしそうに照れながら、そう答えた。
春風の今の服装は、ゴーグルやマントの他にもある。右腕には革製のグローブを着けているが、左腕にはやや大きな装甲を持つ銀のガントレットを着けていた。因みに、装甲の中央には加工された赤、青、緑、オレンジ色の宝石が、星の形になる様に嵌め込まれている。
「うーん。あのさ、リアナ……」
春風は気まずそうにリアナに話しかけた。
「? なあに、春風?」
「俺のスキルの事は知ってるよね?」
「うん、私が出発する前に話してくれたね」
「……実はこの服、というかマントやゴーグルとかもだけど、精霊達と協力して作ったんだ。俺のスキルを使って……」
「え、そうなの!?」
「うん。精霊達が用意してくれた材料に、[魔石生成]で作った魔石を合わせて、[魔導具錬成]を使って作ったんだ」
「ああ、言われてみれば……」
納得したリアナが、改めて春風の全身を見回すと、確かに、ガントレットと同じ様にマントやブーツの所々に、赤や緑といった小さな宝石が嵌め込まれていた。
春風はジーッと自分を見回すリアナに、さらに気まずそうに話しかける。
「あと、それとねリアナ……」
「ふえ? なあに?」
「実は、ここに来たのは俺だけじゃないんだ」
「どういう事?」
リアナにそう尋ねられると、春風は左腕のガントレットの大きな装甲を、パカっと開いた。そこにあったのは……。
「あ! それ、アマテラス様とゼウス様を召喚した魔導具!」
そう、装甲の下にあったのは、ログハウスでアマテラスとゼウスを召喚した魔導具、「魔導スマートフォン零号」ーー以下零号が装着されていた。
春風は零号の画面に向かって話しかける。
「ジゼルさん、出てきて良いですよ」
次の瞬間、零号の画面が光って、そこから老婆の幽霊、ジゼルが出てきた。
「え、ジゼルお婆ちゃん!?」
「はい、リアナ様。1週間ぶりで御座います」
驚くリアナを前に、ジゼルは穏やかな笑みでそう挨拶した。
「ちょっと、どうなってんの春風! どうしてジゼルお婆ちゃんがここにいるの!?」
リアナは春風の両肩を掴んでガクガクと揺すった。
「お、お、落ち着いてリアナ! ちゃんと説明するから!」
激しく揺すられながら、春風はリアナに説明を開始した。
それは、春風が旅立つ前日の夜だった。
「え? 一緒に連れてって欲しいって?」
「はい」
いきなりジゼルにそう言われた春風は、その理由を尋ねた。
「お恥ずかしながらこのジゼル、リアナ様と春風様の旅の行く末と、私が生前に遺したあの『予言』が現実のものになるかを、誰よりも間近で見たいという思いに駆られてしまったのです」
真剣にそう話すジゼルに春風はさらに尋ねる。
「それって、ヘリアテス様の許可は取ってあるんですか?」
「問題ありません、春風さん」
春風の問いに対して、ヘリアテスがジゼルの代わりに答えた。そして、ヘリアテスは春風に深々と頭を下げて、
「私からもお願いします、春風さん。どうか、彼女も連れて行ってください」
とお願いした。
(うーん。そう言われても、幽霊のジゼルさんをどうやって連れていけば良いんだろう)
春風は腕を組んで考え込むと、ある「名案」を思いついた。
「あの、ジゼルさん。ここに入ってはどうでしょうか?」
そう言って、春風はジゼルの前に零号を差し出した。
「それは、アマテラス様を召喚した魔導具! よろしいのですか!?」
「うん。この中なら安全だと思うし、何より異世界の道具だから、退屈はしないと思います」
「わ、わかりました。それでは早速……」
そう言うと、ジゼルはスゥッと零号の中に入った。
「居心地はどうですか?」
「おお、これは素晴らしい! 面白そうなものがいっぱいあります!」
春風の問いに、ジゼルは大喜びで答えた。
その後、春風はヘリアテスに向き直って、
「それではヘリアテス様、明日はジゼルさんと一緒に出発します」
と、笑顔で言った。そんな春風に、ヘリアテスは申し訳なさそうに、
「ありがとうございます、春風さん。無理を言ってごめんなさい」
と、深く頭を下げて謝罪した。
そして現在に至る。
「はぁ、そう言うわけか……」
春風の説明に、リアナは「ハハハ」と乾いた笑い声をこぼした。
「はい、そう言うわけでリアナ様、これからよろしくお願いします」
ジゼルは頭を下げてそう言うと、リアナも気持ちを切り替えて、
「うん、よろしくね、ジゼルお婆ちゃん」
と、笑顔で言った。
それから暫くの間、2人は森を抜けて目的地に向かって進んでいると、
「見えた。ほら、あそこだよ」
そう言ったリアナが指を差した先にあるのは、大きな石造の「壁」だった。
「もしかして、あの壁の向こうにあるのが……」
「うん。これから私たちが行く『中立都市シャーサル』だよ」
リアナがそう言った後、2人は再び歩き出すのだった。




