間話45 「ご兄弟ズ」と「後輩ちゃん」と「◯◯の◯◯」
今回は、いつもより長めの話です。
「久しぶりだね、私の愛しい春風」
イケメン外国人がそう言った瞬間、その場はシーンと静まり返った。
「……ハッ! ちょ、ちょっとま……」
と、我に返った春風が「待った」をかけようとしたその時、
「ゆ〜き〜む〜ら〜」
「っ!」
背後で自身の名を呼ぶ声がしたので、恐る恐る振り向くと、そこには鬼の形相と化した小夜子がいた。
「あ、あの、どうしたんですか先生?」
春風は滝のように汗を流しながらそう尋ねると、
「一体どういうことだ幸村! お前、女だけじゃなく男までいける口なのか!?」
と、小夜子は春風の両肩を掴んでゆっさゆっさと揺すりながら問い詰めた。
「おおお落ち着いてください先生! そんなわけないでしょう! いや、それ以前に、剛兄さんや陽菜さんはともかく、何で明華さんとあなたがそこにいるんですか!?」
小夜子に揺さぶられながら春風が画面の向こうにいる人達に向かってそう尋ねると、
「……ハッ! そ、そうだよ、どうして陽菜がそこにいるの!?」
「お、お兄ちゃんも、何で!?」
と、春風と同じように我に返った水音と歩夢も、画面の向こうにいる自分達の家族に向かってそう尋ねた。
歩夢に尋ねられた兄の剛希は、
「ああ、昨日母さんから話を聞いてな、俺もお前と話がしたかったんだ。勿論、『組』のみんなもお前達のことは知っているよ」
と答えると、それに続くように、
「うん、私も同じだよお兄ちゃん。私もお父さんとお母さんから話を聞いて、私も話がしたかったの」
と、水音の妹の陽菜もそう答えた。
2人の答えを聞いて、水音も歩夢も納得の表情を浮かべると、
「私も……」
『ん?』
「私も、日真理おば様から先輩の話を聞いて、それで私も『一緒に行きたい』って無理を言って、今日ここに来ました」
と、春風(正確には春風達)の後輩である明華は声を震わせながらそう言うと、最後に、
「会いたかったよぉ、春風せんぱぁい」
と、更に大粒の涙を流した。
すると、ひょこっと画面に日真理が現れて、
「おうおう、フー。お前、私の娘だけじゃなく、山主んとこのお嬢さんからもここまで想われるとは、中々やるじゃないか」
と、春風に向かって揶揄い気味にそう言った。
その瞬間、春風はとても申し訳ない気持ちになった。
何故なら、春風にとって明華は中学生時代からの後輩で、今の高校に入ってからも変わりないと思っていたからだ。
しかし、今日久しぶりに彼女と話をして、
(俺、ここまで想われてたのか?)
と、ちょっと罪悪感が芽生えてしまい、どうしたものかと思って少しの間考えたが、すぐに首を横に振るって、
「心配かけて、ごめんなさい」
と、明華に向かって深々と頭を下げて謝罪した。
それを見て、周囲の人達がほっこりしていると、涙を拭い終えた明華が口を開いた。
「……先輩、おば様に聞きましたけど」
「?」
「そちらで歩夢先輩とラブラブになっただけじゃなく、ハーレムまで作ったんですよね?」
『ブフォッ!』
明華からのとんでもない質問に、春風だけでなく周囲の人達も思わず吹き出した。ただ、歩夢だけは恥ずかしそうに顔を赤くして、クネクネと体を動かしていたが。
質問を受けた春風は「いや、そのぉ……」とオロオロしていたが、そんな春風に構わず、
「先輩、もしも『申し訳ない』って思っていましたら……」
「な、何かな?」
「……私も、先輩のハーレムに入れてください!」
と、明華は更にとんでもない爆弾発言をかました。その瞬間、
『な、なんですとぉおおおおおおおっ!?』
と、春風を含めた人達が、一斉に驚きの声をあげた。
そして、
「おい幸村、一体どういうことだこれは!?」
「テメェ、ハル! 説明しろやコラ!」
「ハルッち、説明よろ〜」
「ちゃんと説明出来るんだろうなぁ」
「幸村君。いい加減にしてくれないかなぁ」
「ゆ、幸村君! 何なのよこれはぁ!?」
と、小夜子とクラスメイト達が、一斉に春風に詰め寄った。
「い、いや、これは、そのぉ……」
春風はどうにかして答えようとすると、その時、
「あー、私のこと、忘れないでくれないかなぁ」
と、それまで黙っていたイケメン外国人が、「コホン」と咳き込みながら割って入ってきた。
その瞬間、
「……ハッ! そ、そうよ、すっかり忘れてたけど、何でイタリア在住のあんたがそこにいるのよ!?」
と、我に返った凛依冴が、イケメン外国人を指差しながらそう尋ねた。
すると、イケメン外国人は「おや?」と言わんばかりの表情になって、
「やぁ、マリーじゃないか、久しぶりだなぁ」
と、凛依冴をニックネームでそう呼んだ。
それを聞いた凛依冴はカッとなって、
「ちょっと! 私を『マリー』って呼んでいいのはハニーの春風と一部の人だけよ! あんたは入ってないから!」
と怒鳴った。
そんな2人のやり取りを、春風と水音を除いた周囲の人達は、
『何だ何だ?』
と、頭上に「?」を浮かべながら見ていると、
「おいおい釣れないなぁ、私達の情報収集力を甘く見ないでもらおうか。半年前に春風が突然消えたって情報が入って、すぐにその行方を調査したんだよ。最初はわからないことだらけだったのに、ある時から日本の神代総理大臣が何やら不審な動きをしていると聞いてね、もしかしたらと思って探りを入れたら、ビンゴだったというわけさ。だがまさか、『異世界』なんていう非現実的な出来事に巻き込まれていたっていうのには驚いたけど」
と、イケメン外国人はそう説明した。
それを聞いて、凛依冴は「ぐぎぎ」と歯軋りをすると、イケメン外国人は春風の方を向いて、口を開く。
「で、春風」
「は、はい、何でしょうか?」
「今、こちらのお嬢さんが言ってた『ハーレム』なんだけど、よければ……」
と、イケメン外国人がそう言おうとしたその時、
「だぁめぇえええええっ! あんたはだぁめぇえええええっ!」
と、凛依冴が怒鳴りながら割り込んできた。
そんな凛依冴に、イケメン外国人は「ム!」となると、
「おいおいマリー、邪魔しないでくれ。私だって……」
と、文句を言おうとすると、凛依冴は更にカッとなって、
「だから、あんたは駄目だって言ってんでしょ! この、男装女!」
と、力いっぱい罵った。
すると、
『……え?』
と、春風と水音を除いた人達が、一斉に首を傾げた。
そして、
「ちょ、ちょっと待ってくれ凛依冴さんや。あんた今、何て言った?」
と、ギルバートが恐る恐る尋ねると、「男装女」と罵られたイケメン外国人は、
「ああ、これは失礼しました、異世界の方……でよろしいかな? 私はイタリアでマフィアのボスをしております、ミネルヴァ・レーガと言います。こんな格好をしていますが、れっきとした女ですよ」
と、自己紹介した。
それを聞いたギルバートは、ゆっくりと春風の方を向いて、
「……マジ?」
と尋ねると、
「……マジです」
と、春風は力強く頷いたので、
『な、な、何ですとぉおおおおおおおっ!?』
と、周囲から先ほどのもの以上の驚きの声があがった。




