第374話 刀の精霊・彼岸花
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
「お前さん、この刀の『精霊』だな?」
『……え?』
ヘファイストスの質問を聞いて、春風を除く周囲の人達が一斉に頭上に「?」を浮かべる中、質問された真っ赤な着物姿の長い赤髪の少女は、
「……は、はい」
と、怯えるように体を震わせながらそう答えた。
その答えを聞いて、周囲の人達が「えぇっ!?」と一斉に驚くと、赤髪の少女はビクッとなって、春風の側に駆け寄り、その腰にガシッとしがみついた。
ブルブルと体を震わせながら、怯えた表情を浮かべる少女を見て、周囲の人達が、
(あ、ちょっと羨ましい)
と言わんばかりの表情になる中、
「あのぉ、この子が『精霊』というのはどういう意味なのでしょうか?」
と、リアナが恐る恐る手を上げてヘファイストスに質問した。
「ふむ、そのお嬢ちゃんはな、この刀に込められた作り手の『想い』が、長い年月と経験を経て姿形を得た存在でな、さっきは『精霊』なんて言ったが、正確に言えばこの刀の『魂そのもの』と言ってもいい」
と、ヘファイストスが答えたその時、漸く震えが止まったのか、少女は春風から離れて、ヘファイストスを見ながら口を開いた。
「……そうです、私は『彼岸花』。その刀の『意志』、そのものです」
少女ーー彼岸花の言葉に、春風を除いた周囲の人達はゴクリと固唾を飲んだ。
そんな状況の中、ヘファイストスが彼岸花に尋ねる。
「で、彼岸花のお嬢ちゃん。こいつもさっき言ったことなんだが……俺は、お前さんを春風に使わせるわけにはいかねぇ。使い手の命を奪うだけじゃなく、その肉体までも喰らう『武器』なんぞ、『鍛治』を司る神としては絶対に認めるわけにはいかねぇんだ。その辺りについては、お前さんはどう思ってるんだ?」
そう尋ねられて、彼岸花は顔を下に向けて黙り込んだが、すぐにまたヘファイストスを真っ直ぐ見て、
「……あなたの言う通りです。私は、その刀を鍛えた女性鍛治師の、妹さんの死体を材料に作られた刀です。魔物に殺された、たった1人の家族である妹さんの」
『っ!』
「そして、私は、その魔物を含めた多くの魔物を斬り殺しただけでなく、その女性鍛治師の命を奪い、その肉体までも取り込みました。そうすることで、刀はより強くなっていくからです。それからも、私は多くの命を奪い、多くの使い手達までも、女性鍛治師と同じように命と肉体を取り込みました」
「それは、その人の『魂』も含まれているのか?」
「それは違います! 私が取り込んだのは命と肉体だけで、魂までは別です!」
ヘファイストスの質問に対してそうはっきりと答えた彼岸花に、周囲の人達は「そうなんだ」とホッと胸を撫で下ろした。
しかし、その後彼岸花は表情を暗くして、チラリと春風を見ると、またヘファイストスに向き直って口を開く。
「……正直に言いますと、私も、彼には振るってほしくないって思ってます。だって私は、使い手を喰らう『妖刀』なのですから。それに……」
「それに?」
「私自身、『もう誰も斬りたくない』って思っているんです。私が喰らった使い手の命には、その人の『記憶』や『想い』も含まれていて、取り込むごとにそれが私の頭にも入ってきて、私はすごく嫌だったんです。おかしいですよね? 『刀』のくせに『斬りたくない』なんて」
『……』
何処か自嘲気味に話す彼岸花に、これには周囲の人だけでなく春風も何も言えなかった。
しかし、彼岸花は再び春風をチラリと見ながら、更に話を続ける。
「ですが、そんな醜い私を、彼は『必要だ』と言ってくれました。真っ直ぐな目で、私を見つめて。その所為か私は、先ほど話した『使ってほしくない』という想いとは別に、『もっと彼といたい』と思うようになりました」
そう話す彼岸花に、その場にいる誰もがいろんな意味で「ドキ!」となった。
「ヘファイストス……様、教えてください」
「何だい?」
そして、彼岸花はヘファイストスを見て、
「どうすれば私は、彼を喰らわずに、側にいることが出来ますか?」
と、涙を流しながら質問した。
その質問に対し、ヘファイストスは顔を下に向けたが、すぐにまた彼岸花を見て口を開く。
「……もし、お前さんにその気があるなら、1つだけ方法がある」
その言葉を聞いて、誰もが頭上に「?」を浮かべると、ヘファイストスはその方法を口にする。
「いっぺん死んで、生まれ変わるんだ」
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終えることが出来ず、結果1日遅れの投稿となってしまいました。
本当に、すみません。




