第371話 ヘファイストスと彼岸花の出会い
本日2本目の投稿です。
ヘファイストスが「それ」を見たのは、今から数年前だった。
「お! 凛依冴ちゃんじゃないか! 今戻ったのか!?」
「ああ、お久しぶりですヘファイストス様」
その日、ヘファイストスはとある異世界から地球に帰るところだった凛依冴に挨拶し、その後軽く世間話的な会話をしていると、
「ん? 凛依冴ちゃんよぉ、お前さんの手に持ってるそいつは何だい?」
と、ヘファイストスは凛依冴の持っているそれを指差しながら尋ねた。
尋ねられた凛依冴は、
「あぁ、これですか? 今回旅した世界の住人さんに、『もう必要ないから持っていってくれ』って言われたもんで……」
と、手に持っているそれーー「刀」をヘファイストスに見せた。
ヘファイストスはその「刀」を見て、「ウッ!」と顔を顰めると、
「オイオイ、これまた随分とやべぇオーラを纏っているようにも見えるんだが?」
と、警戒心丸出しで凛依冴に尋ねた。
凛依冴もそんなヘファイストスを見て、
「ああ、やっぱりそう思います?」
と、「アハハ」と苦笑いしながらそう答えた。
ヘファイストスは顔を顰めたまま、
「で、お前さん。そいつをどうする気だ?」
と、警戒しながら凛依冴に尋ねると、
「うーん、私自身が使うわけでもないですから、取り敢えず自宅で厳重に保管します」
と、凛依冴は「いや私も聞きたいですよそんなの」と言わんばかりの表情で答えたので、ヘファイストスは「フゥ」と一息入れて、
「そうかい。ま、俺もその方がいいと思うぞ。はっきし言って、そいつはマジでやばい代物だ」
と言って、再びその「刀」を指差すと、
「ですよねぇ、実際この刀の所為で命を落とした人間が結構いたそうですよ」
と、凛依冴はガクリと項垂れながらそう返した。
すると、ヘファイストスは「あ!」と何かに気づいたかのような表情になって、
「……ところでそいつ、『名前』はあるのかい?」
と、また凛依冴に尋ねた。
凛依冴は「あ、そういえば言ってませんでしたね」と小さく言うと、
「『彼岸花』。それがこの刀の名前です」
と答えた。
「ほぅ、花の名前を冠した刀か……て、いけね! 早く戻らねぇとまたドヤされちまう!」
ヘファイストスはそう言うと、凛依冴に「引き留めちまって悪いな!」と謝罪して、いそいそとその場を後にした。
ただその間、
(『彼岸花』か。あの感じ、ありゃあ間違いなく『外法』で作られてるな。何も問題起きねぇといいが……)
と、少し不安になっていたが。
しかし、それから数年後、
(ば、馬鹿な! 何であの刀があそこに!?)
その不安は現実のものとなってしまう。
それは、エルードという異世界で、春風が偽物の神であるガストと戦う為に、凛依冴から受け取った彼岸花を抜こうとしていた時のことだった。
(凛依冴ちゃん! 弟子になんてもん持たせんだ!)
オーディンを通して春風の行動を見ていたヘファイストスは、今まさに春風が彼岸花を抜こうとしているところを見て戦慄していた。
それからガストが仲間と思われる青年に連れて行かれた後、
「「早く捨ててぇえええええええっ!」」
と、彼岸花に右腕を侵食された春風を見て叫ぶリアナと水音を見て、
(……駄目だ。これ以上あの刀を振るわせちゃいけねぇ)
とヘファイストスはますます戦慄した。
そして現在、
「悪いがその刀、認めるわけにはいかねぇな」
「ええぇっ!?」
ヘファイストスは春風に向かってそう言い放つのだった。




