第354話 再会と謝罪
「や、やぁエリー、お前、何でここに?」
「ひ、久しぶりだな我が妹よ、元気そうで何よりだ」
突然現れたウォーリス帝国皇妃エリノーラに頭を掴まれて、ギルバートとクローディアは滝のように冷や汗を流しながらそう言った。
そんな2人を前に、エリノーラは穏やかな笑みを浮かべたまま、
「挨拶はいいから、私の質問にだけ答えてください」
と、2人の頭を掴む力を少し強くしながら言った。その姿を見て、春風とリアナを含めた周囲の人達は、皆ビクッと震え上がった。
「な、なんだいエリー、質問って……」
「あ、ああ。ど、どうした我が妹よ、聞きたいことがあるなら、お姉ちゃんにじゃんじゃん聞いてくれ」
痛そうに頭を掴まれた状態の2人がそう言うと、
「今2人共、春風ちゃんとリアナちゃんを巡って喧嘩しようとしてたでしょ? それも、国対国レベルの大喧嘩を」
と、エリノーラは笑顔でそう尋ねた。気の所為か、彼女の背後に黒いオーラのようなものが見えた気がしたが、周囲の人達は黙っている事にした。
「待て待て待てエリー! これはただの喧嘩じゃねぇんだ!」
「そ、そうだぞ妹よ! これは、国と国の誇りをかけたもので……!」
エリノーラに尋ねられて、ギルバートとクローディアは苦し紛れの言い訳をしようとしたが、
「可愛い春風ちゃんとリアナちゃんを取り合おうとしてた人が何を言ってるの?」
と、更に尋ねられてしまい、2人は思わず「うぐっ!」と唸った。
それを聞いたエリノーラは、「ウフフ」と小さく笑った後、
「はい、お仕置き」
と言って、2人の頭を掴む力を更に強くして、その瞬間、
「「ギャアアアアアアア! すみませんでしたあああああああっ!」」
と、2人は悲鳴をあげながら謝罪した。それを聞いた周囲の人達は、皆恐怖で体をブルブルと震わせた。
暫くすると、エリノーラは満足したのか、両手をぶらぶらとさせてぐったりしているギルバートとクローディアをその場にポイッと捨てると、春風達の方へと振り向いて、
「さて、春風ちゃん」
と、満面の笑みを浮かべて春風に話しかけた。
いきなり話しかけられた春風は、
「は、はい!」
と、びっくりして背筋をピンと伸ばしながら返事すると、エリノーラは素早く春風の前に近づいて、
「闘技場のようなところでの決闘から『風の神ガスト』との戦い、見事だったわ」
と言って、春風の手をとった。
それを聞いた春風は、
「あ、ありがとう、ございます」
と言った後、「あれ?」と頭上に「?」を浮かべて、
「あのぉ、エリノーラ様? 何故、あなたがループス様との決闘とガストとの戦いのことを知ってるのですか?」
と、エリノーラに向かってそう尋ねた。
すると、その言葉に反応したのか、
「それについては、俺が教えよう」
と、いつの間にか復活していたギルバートがそう答えた。
春風は「どういうことなんですか?」と言わんばかりの表情になると、
「スマン、春風」
と、ギルバートは春風に向かって深々と頭を下げて謝罪した。
(え、何? 何この状況)
と、春風は更に「?」を複数浮かべていると、ギルバートはズボンのポケットから何かを取り出した。
春風は「それ」を見て、
「……あの、陛下。何ですかそれは?」
と、尋ねると、ギルバートは申し訳なさそうに、
「こいつはな、最新の記録用魔導具と配信用魔導具だ。で、これでさっきまでのお前の戦いぶりを記録しつつ、世界各地に配信したんだわ」
と、説明した。
「ああ、そうでしたか……」
と、春風がその説明に納得していると、すぐに「ん?」となって、
「……それってもしかして、ループス様との戦いからガストとの戦いまで全部記録してそれを世界中に配信したということですか?」
と、再び尋ねると、ギルバートは気まずそうに
「……(こくり)』
と頷いた。
更に、
「それじゃあひょっとして、そちらにいるクローディア女王陛下も見たってことですか?」
と、春風が三度尋ねると、いつのまにか復活していたクローディアは、
「ああ、勿論、見させてもらったぞ」
と、親指を立てながらそう答えた。
春風はそれを聞いて、
「……はぁ、そうですか」
と、遠い目をしながらそう言うと、
「うっそだろぉおおおおおおおっ!?」
と、驚きの声をあげて、その場に膝から崩れ落ちるのだった。




