第350話 「学級裁判」へ
それは、ガストとの戦いが終わってすぐのことだった。
「「早く捨ててぇえええええええっ!」」
と、春風に向かってそう叫ぶリアナと水音。
そんな2人に対して春風はというと、落ち着いた表情で自身の右腕を侵食する彼岸花を見て、
「もう戦いは終わったよ」
と、話しかけた。
次の瞬間、それまで右腕に絡みついていた無数の彼岸花の触手は、スゥっと春風の右腕から離れていった。
そして、元の刀の状態に戻ったのを確認した春風は「よし」と小さく言った後、その彼岸花を鞘に納めた。
その後、
「はい、元通り!」
と、春風はリアナと水音に右腕をヒラヒラと振りながら見せると、2人は「ホッ」と胸を撫で下ろした。
するとそこへ、
「おーい、春風ぁ」
と、冬夜、雪花、静流が春風達の側へと駆け寄ってきた。
更に、
「ハニー!」
「フーちゃん!」
「ハル様ぁー!」
「春風様ぁー!」
「兄さん!」
「春風君!」
「春風ぁ!」
と、観客席から凛依冴、歩夢、イブリーヌ、ジゼル、ルーシー、アデレード、そして美羽も、春風達のもとに駆け寄ってきた。当然、それに続くように春風の仲間達もだ。
(うわわ! なんか集まってきてるんだけど!?)
集まってきた凛依冴達に揉みくちゃにされて、春風はどうしたもんかと考えていたが、
(まぁ、仕方ないか)
と、彼女達を心配させてしまったことに罪悪感を感じたので、春風は諦めて考えるのをやめた。
だが、
「ゆ〜き〜む〜ら〜」
「!」
と、なにやら不穏な怒気を感じた春風が、恐る恐るとある方向へと視線を向けると、
「……先生?」
そこには、明らかに怒っている様子の小夜子がいた。
「あ、あの……先生?」
返事が来ないことに焦ったのか、
「し、心配かけて、すみませんでした!」
と、春風はすぐに頭を下げて謝罪すると、
「それはもういい」
と、小夜子はそう返した。
それを聞いて、春風は「ホッ」と胸を撫で下ろしたが、
「だが……」
と、小夜子の話が終わっていないのがわかって、春風達は「?」を浮かべて首を傾げると、
「幸村。お前、昨日ウィルフレッド陛下との裁判で、イブリーヌ様と結婚するようにと命じられたよな?」
と、小夜子はそう尋ねた。
思わぬ質問に春風は戸惑いながらも、
「あ、はい。そうですが……」
と答えると、
「なら、お前のその状態はどういうことだ?」
と、小夜子は今の春風の状態を指差しながら、再びそう尋ねた。
その質問を聞いた時、春風は「ハッ!」となった。
今、春風は確かに仲間達に揉みくちゃにされているが、それ以上に凛依冴、歩夢、イブリーヌ、ジゼル、ルーシー、アデレード、美羽、そして、リアナに抱きつかれてもいたのだ。
「あ、あの! これは、その……」
と、春風が何か言い訳をしようとした、まさにその時、
「すみません、先生」
と、煌良が「ハイ」と手を上げた。
小夜子はそれを見て、
「どうした力石?」
と、尋ねると、
「クラスのみんながここに集まっているので、『学級裁判』を開きたいんです。題目は、『幸村春風の女性関係について』です」
と、煌良は真面目な表情でそう答えた。
それを聞いて、小夜子は「フム……」と考え込むと、観客席のウィルフレッドを見て、
「ウィルフレッド陛下、昨日の『簡易裁判所』の設置をもう一度お願いします」
と、頼み込んだ。
春風はそれを聞いて、
「え、ちょっと待って……」
と言おうとしたが、
「うむ、わかった。すぐに用意しよう」
と、ウィルフレッドが「OK」を出したので、小夜子は「ありがとうございます」とお礼を言うと、再び春風に向き直って、
「というわけだ幸村。すぐに『学級裁判』を行うからな。勿論、お前が『被告人』だ」
と、笑顔で春風に向かってそう言った。
それを聞いて、
「そ、そんなぁ!」
と、春風が悲鳴をあげると、
「あと、桜庭、海神、天上。お前達も『被告人』として参加してもらうからな」
と、小夜子が笑顔で続けてそう言い放ったので、
「「「そ、そんなぁ!」」」
と、水音達も悲鳴をあげるのだった。




