第342話 「妖刀」4
彼岸花を握った瞬間、激しい激痛が春風を襲った。
その後、
「ハッ! こ、ここは何処だ?」
気がつくと、春風は真っ暗な闇の中にいた。
辺りを見回すと、自分以外誰もいなかった。
宙に浮いている感覚はあり、今のところ落ちているというわけではなさそうだ。
(何で俺、こんなところにいるんだ?)
と、疑問に思っていると、突如目の前に小さな光の球が現れた。
(これは、何だ?)
そう思った春風がその光の球に触れた瞬間、
(うわ、眩しい!)
光の球が激しく輝き出したので、春風は思わず両腕で顔を覆った。
暫くすると、段々と光が消えていくのを感じた春風は、
「うぅ、何だよ一体……」
と、顔から腕をどかすと、
「……え。ここって、鍛冶場?」
そこは、鍛治師達の仕事場である「鍛冶場」のようで、今、春風目の前では、1人の女性がそこで「何か」を鍛えていた。
「あのぉ、すいません」
春風は恐る恐るその女性に話しかけたが、女性は集中しているのか全然返事をしようとしなかった。
(この人、一体何を鍛えているんだ?)
一向に動こうともせず、ただひたすら「何か」を鍛えている女性。
春風は「どんな人なのかな?」と思って、邪魔をしないようにソーッと女性の顔を覗き込むと、
「うっ!」
なんと、女性の両目から、真っ赤な「涙」を流していたのだ。
それが「血涙」だということを理解した春風は、
「ちょ、ちょっとあんた! 大丈夫なんですか!?」
と、大慌てで女性を問い詰めようとしたが、女性からの反応はなかった。
それからも春風は何度も女性に話しかけたが、やはり女性からの反応がなかったので、
(もしかして、俺が見えてないのか?)
と、春風がそんなことを考えていると、
「……出来た」
と、女性がそう言って立ち上がり、自身が鍛えていたものを水で冷やすと、出来上がったそれを掲げた。
それは、真紅に染まった日本刀の刀身だった。
(あ……あれって……)
と、春風が出来上がったその刀身を見てそう口に出すと、
「うわっ! また眩しい!」
再び目の前が、激しく光り出した。
「……って、今度は何処に出たんだ、俺?」
次に気がつくと、春風は今度はさっきまでいた鍛冶場とは別の場所にいた。
(ここって、『城』の中ぁ!?)
周りの雰囲気から察するに、そこはどうやら和風的な「お城」の中、それも雰囲気的にはセイクリア王国とウォーリス帝国の城中で見た「謁見の間」のようだった。
そして今、まさに目の前では、先程まで「日本刀」の刀身を鍛えていた女性が、その城の主と思わしき男性に、一振りの「日本刀」を差し出していた。
それが先程まで女性が鍛え上げていたものだと、春風はすぐに理解した。
それはさて置き、男性はその日本刀を手に取ると、スッと鞘から抜いた。
真紅に染まったその刀身を見て、
「うむ、美しいだけでなく、何処か力強さを感じる、良い刀だ」
と、男性はその刀を褒めた。
女性はその言葉を聞いて、
「ありがとうございます」
と、男性にお礼を言った。
すると男性は、
「して、この刀の名は何というのだ?」
と、女性にそう尋ねると、女性はゆっくり口を開いて、
「……『彼岸花』。それが、その刀の名前にございます」
と、男性に向かってそう答えた。
「ふむ、彼岸花か。良い名前だな」
と、男性がそう言って彼岸花を鞘に納めた、まさにその時、
「た、大変です陛下!」
と、城の兵士らしき簡素な鎧に身を包んだ男性が入ってきた。
「む、どうした?」
と、男性が尋ねると、兵士の男性は息を切らしながら答える。
「た、大量の魔物が、街中に押し寄せてきました! このままでは、こちらも危険です!」
兵士の男性がそう報告すると、
「……丁度良いわ」
「何……って、あ!」
女性が男性から彼岸花を奪ったのだ。
驚く男性に、女性はニヤリと笑って言う。
「陛下、このコの『力』、試させてもらいます」
そう言うと、女性は彼岸花を持ったまま、謁見の間を飛び出した。




