間話31 カミングアウトする者達
大変遅くなりました、1日遅れの投稿にして、前回の続きです。
そして、いつもより長めの話です。
「う、うぅん。あれ? ここは?」
目を覚ましたクラリッサは、ゆっくりと周囲を見回した。
そこは、どうやら自分の部屋のようで、今、自分はベッドの上に寝かされてる状態であると理解した。
「おぉ、気がついたかクラリッサ!」
「え?」
声がした方へと首を動かすと、そこには心配そうに自分を見つめるウィルフレッドとマーガレット、そして何故か翔輝の姿があった。
クラリッサはゆっくりと上半身を起こして、
「お、お父様に、お母様、それに翔輝様も、どうしてここにいるのですか?」
と尋ねると、
「翔輝殿からお前が倒れたと聞いて、急いで駆けつけたのだ。医師の話では、『疲れが溜まっているのが原因である』と説明を受けたよ」
と、クラリッサが目を覚ましてホッとした表情のウィルフレッドが答えた。
その答えを聞いて、クラリッサは申し訳なさそうな表情になって、
「そ、そうだったのですね。お父様、お母様、翔輝様、ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
と、3人に謝罪すると、
「何を言うんだクラリッサ! お前がそんな状態になった原因は私にある! 私が国王として不甲斐ないばかりに、お前やマーガレットにまで苦労をかけさせてしまった!」
と、ウィルフレッドが怒鳴るようにそう否定し、
「愚かな父で、本当にすまなかった」
と、クラリッサに向かって深々と頭を下げて謝罪した。
それを聞いて、クラリッサが「そ、そんな」とオロオロしていると、
「……いえ、ウィルフレッド陛下は悪くありません」
と、それまで黙っていた翔輝が口を開いた。
「しょ、翔輝様?」
クラリッサが頭上に「?」を浮かべていると、翔輝は更に話を続ける。
「今、王都が大変なことになっているのは、『あの日』からなんですよね?」
「そ、それは……」
翔輝が言った「あの日」。それは、もう1つの大国である「ウォーリス帝国」で行われた、自分達のもとを去った2人のクラスメイト、春風と水音の「決闘」があった日だった。
その日は、あまりにも多くの出来事が起こりすぎた。
皇妃であるエリノーラによる「春風についての暴露」から始まり、決闘が始まってからの春風と水音の実力と戦いぶり。そこへ「水の女神マール」が現れて、水音を操って春風を殺そうとし、更に第2王女イブリーヌまでもがマールに殺されそうになった。最悪の状況になったかと思ったら、そこへまさかの「地球の神アレス」と名乗った青年の登場と、水音の固有職保持者への覚醒。極め付けは、春風が放った必殺技のようなものによって、女神マールが潰されたというとんでもない事態だ。
その出来事をきっかけに、王都内だけでなく周辺の町や村でも大混乱が発生し、その解決の為にウィルフレッドら王族達が今日まで頑張ってきたの知っている翔輝は、ウィルフレッド、マーガレット、そしてクラリッサを見回し、
「クラスメイトがとんでもないことをしてしまい、申し訳ありませんでした」
と、ウィルフレッド以上に頭を下げて謝罪した。
「しょ、翔輝殿、どうか頭を上げてくれ!」
ウィルフレッドは大慌てで翔輝にそう言ったが、
「……そうですね。彼の所為でこのような混乱が起きたのは間違いないでしょう」
と、クラリッサは顔を下に向けた状態でそう言った。
「く、クラリッサ、何を言っているんだ?」
「お父様も見たでしょう? 彼の所為で、危うくイブリーヌが殺されそうになったところを」
クラリッサにそう言われ、思わず「う!」と呻いたウィルフレッド。しかし、そんなウィルフレッドを前にしても、クラリッサは話を続ける。
「そう、確かに彼は絶対に許さない。それは、今でも同じです」
「クラリッサ……」
「ですが……」
「?」
「恐らくイブリーヌはそんな彼に、きっと惚れているのだと思います」
「な、何故そう思えるのだ?」
「イブリーヌがシャーサルへと旅立つ前の日に、一度だけ彼について尋ねたのですが……」
ーーも、申し訳ありませんお姉様。その……どう答えたらよろしいのか、わたくしにもわかりません。
「と、まるで恋する乙女のように顔を赤くしてそう言ったのです。あれは間違いなく、彼に惚れているのだと、わたくしは確信しております」
そう話したクラリッサに、ウィルフレッド、マーガレット、そして翔輝は絶句するしかなかった。
しかし、それでもクラリッサは話を続けた。
「そうです、わたくしは彼を絶対に許さない! 彼は、大好きな妹の……イブの心を奪ってしまったのだから!」
その言葉に、ウィルフレッドはハッと我に返って、
「ま、待つんだクラリッサ! まだそうとは限らないのでは……」
「それだけではありません!」
「な、何?」
「勇者召喚を行った『あの日』と、水音様との決闘での彼の言動と戦いぶり、それらを思い出す度に……」
「「「?」」」
「何故か心が……キュンとときめいてしまうのです」
「「「!?」」」
まさかのカミングアウトに、3人は再び絶句した。
だがしかし、それでもクラリッサは話を続ける。
大粒の涙を流しながら。
「おかしいですよね? 何度も彼を『許さない』と思っているのに、何度も彼を憎んでいるのに、思い出す度にときめいてしまうなんて。大好きなイブが既に惚れているというのに……わたくしは、わたくしは……」
そう言うと、クラリッサは両手で顔を覆った。
それを見て、ウィルフレッドとマーガレットがオロオロしていると、
「そんなことありません!」
と、翔輝が口を開いた。
ウィルフレッド、マーガレット、クラリッサが「何事か」と翔輝を見ると、翔輝は真剣な表情で言う。
「クラリッサ様のその想いは、決しておかしなものではありません! 何故なら、何故ならぁ!」
「「「(ご、ゴクリ)」」」
「……僕も、幸村の言動と戦いぶりを見て、キュンとときめいてしまったからです! 『許さない』と思っているにも関わらずに!」
「「「!?」」」
まさかのとんでもないカミングアウトに、王族達は絶句した。
しかしその後、ウィルフレッドとマーガレットはお互い顔を見合わせて「フフ」と笑うと、
「なんだ、それなら問題はないぞ」
「ええ、何故なら……」
「「?」」
「「私達も、彼にときめいているのだから」」
「へ、陛下、王妃様!」
「お、お父様、お母様!」
国王と王妃のカミングアウトに、目を潤わせた翔輝とクラリッサ。
その後、4人はガシッとお互いの手を握り合った。
そしてこの話を聞いて、後に「原因」となった少年が、
「ホンットに、すみませんでしたぁあっ!」
と、全力で謝罪することになるのだが、それはまた、別のお話ということで。
謝罪)
大変申し訳ありません。この話の流れを考えていたら、その日のうちに登校することが出来ませんでした。
そして、まともかと思われた第1王女ですが、しっかり彼女も主人公にときめいてました。
とんでもない王族達で、本当に申し訳ありませんでした。




