第297話 戦いが終わり……
森の中で何者かが邪な視線を送る中、そうとは知らない春風はというと、
「ハーールーーッ!」
「フーーちゃーんっ!」
「ぐえっ!」
今、リアナと歩夢、2人の少女に抱きつかれていた。
「ちょ、ちょっとリアナ、ユメちゃん、苦しいから離れて……」
春風はそう言って2人を剥がそうとしたが、
「「やだっ!」」
と即答されてしまい、困り果てた春風は、
「だ、誰か、助けて……」
と、仲間達に助けを求めたが、皆、一斉にプイッとそっぽを向いたので、
「ええ、そりゃないよ……」
と、春風はがっくりと肩を落とした。
するとそこへ、
「春風」
「ん?」
師匠である凛依冴が、笑顔でゆっくりと春風に近づいてきた。
「あ、あの、師匠?」
春風が恐る恐る尋ねると、凛依冴は優しくリアナと歩夢を剥がして、
「お疲れ様、良く頑張ったわね」
と言いながら、ソッと春風を抱き寄せた。
春風はその言葉を聞いて、
「……ありがとう、ございます」
と、小さく呟いた。
その後、凛依冴は春風が左手で握っているものを見て、
「それ、彼岸花よね?」
と尋ねると、
「はい。オーディン様の力を受けて、変化したんです」
と、春風は握っているものーー槍に変化した愛刀・彼岸花を見てそう答えた。
すると、彼岸花が眩い光を放ち、槍の状態から元の刀へと戻った。
それを見て、春風はハッとあることに気づき、周りをキョロキョロと見回すと、
「……あ、ヘファイストス様」
と、しゃがみ込んで何かを見ているヘファイストスを見つけたので、春風は凛依冴から離れると、すぐにヘファイストスのもとへと駆け寄った。
「ヘファイストス様」
と、春風がヘファイストスに話しかけると、
「おお、春風か」
と、ヘファイストスは目の前にある「それ」の一部を手に取ってジッと見つめたまま答えた。
そんなヘファイストスに、春風は尋ねる。
「それって、エクスプロシオンですよね?」
「ああ、そうだ」
そう答えたヘファイストスが見ているもの。それは、先ほどまでウォーレンが振るっていた、「炎の神」を名乗っていたカルドの分身である大剣、エクスプロシオンのかけらだった。春風に槍となった彼岸花で破壊されたあの後、剣は砂のように消滅したのだが、僅かに小さなかけらだけが残っていたのだ。
ヘファイストスはそのかけらを見ながら、
「こいつは俺が持ち帰らせてもらうぞ。調べれば連中について何かわかるかも知れねぇからな」
と、春風にそう言ったので、
「わかりました、お願いします」
と、春風はヘファイストスにそうお願いした。
その時、
「ハル様ぁーっ!」
と、遠くから声がしたので、春風は「なんだ?」とその声がした方へと向くと、帝都から何かが飛んできているのが見えた。
「あ、イブリーヌ様! それに、ギルバート陛下に、ディックさんもいる!」
そう、飛んできたのは、春風が作った「空飛ぶ絨毯」こと絨毯型魔導具に乗った、イブリーヌ、ギルバート、ディックの3人だったのだ。
(え、えぇ? なんでイブリーヌ様達がここに!?)
と、春風は心の中で驚きの声をあげていると、
「ハル様ぁー!」
と、なんとイブリーヌが空を飛んでいる絨毯型魔導具から、春風に向かってジャンプしてきたのだ。
「あ、危ねぇ!」
驚いた春風が大慌てでイブリーヌを受け止めると、
「ハル様、ご無事で何よりですぅ!」
と、イブリーヌはそのまま春風をギュッと抱きしめた。
「ちょ、イブリーヌ様!?」
突然のことに春風が戸惑っていると、
「良いじゃねぇか春風」
と、絨毯型魔導具の上からギルバートが話しかけてきた。
「ギルバート陛下?」
「イブりんはずっと、お前のこと心配してたんだ。ちょっとの無茶くらい大目に見てやれよ」
と言われたので、春風は「うーん」と考え込んだ後、
「……ご心配をおかけして、すみません」
と、イブリーヌを優しく抱きしめた。
ギルバートは「うんうん」とそれを見た後、絨毯型魔導具から地面に降りて、ウォーレン達断罪官の側に近づいた。
「ギルバート皇帝陛下」
「おうおう、随分とやられたなぁおい」
軽そうな態度でそう言ったギルバートを見て、ウォーレンを除いた断罪官達はサッと身構えた。
すると、ギルバートは「待て待て」と言って、
「別に今お前達をどうこうする気はねぇよ。ただまぁ、ことがことだけにちょいと話し合いが必要なんだけどな。とりあえず、まずはその怪我治すから、全員帝城に来い」
と、ウォーレン達を誘った。
「……良いのですか?」
と、ウォーレンが尋ねると、
「良いって良いって、そんな状態のお前達を放っとくわけにはいかねぇよ」
と、ギルバートは「気にすんな」と言わんばかりに手を振りながら答えた後、春風の方を向いて、
「だよな?」
と尋ねてきたので、
「はい」
と、春風は笑ってそう返した。
その後、全員で帝都に戻ろうとした、まさにその時、
「「危ないっ!」」
と、何かに気づいた静流と学が、大急ぎで春風達の前に立つと……。
ドォオン!
という大きな音と共に、春風達から少し離れた森の中から、「何か」が春風達に向かって放たれた。




