第296話 決戦、断罪官29 春風vs「鉄鬼」再び8
(私は……どうなった?)
ウォーレンの意識は、真っ暗な闇の中にいた。
体中を黒い鎖のようなもので拘束されて、身動き出来ずにいた。
(私は……このままどうなってしまうのだ?)
と、ふとそんなことを考えて、ウォーレンは少し不安になったが、
(いや、もうどうでもいいか)
と、すぐに考えるのをやめた。
すると、
(う、なんだ?)
突然目の前が明るくなって、ウォーレンは思わず目を閉じた。
(この、暖かい光は……?)
その後、ウォーレンはゆっくり目を開けて、目の前のその光を見た。
「う、うぅ……」
気がつくと、目の前に青空が広がっていた。
(ここは、何処だ?)
そう考えたウォーレンが、ゆっくりと首を動かすと、どうやら自分は今、仰向けの状態で地面に倒れていることを理解した。
「あ、目ぇ覚めました?」
その声を聞いて、ウォーレンがゆっくりと上半身を起こすと、
「……幸村春風」
そこにいたのは、春風だった。
(っ! そうか、私は……)
その瞬間、ウォーレンは全ての記憶を思い出した。
「……私は、また敗れたのか?」
ウォーレンが春風に向かってそう尋ねると、
「いやいや、まだ決着はついてませんよ」
と、春風は首を横に振りながら否定した。
ウォーレンは再び春風に尋ねる。
「……ここまで人をボロボロにしておいて、まだ決着がついてないだと?」
「ええ。だって邪魔者が入ってきた所為で、もう全然それどころじゃなかったんですから、ノーカンですよ、ノーカン」
「『神』を邪魔者扱いとは……」
そう言って、ウォーレンは「ハハ」と乾いた笑い声をこぼすが、すぐに表情が暗くなった。
「? どうしたんですか?」
と、春風が尋ねると、
「……私は、もう駄目だ」
と、ウォーレンは表情を暗くしたまま答えた。
「……それ、本気で言ってるんですか?」
と、春風が再び尋ねると、ウォーレンは更に表情を暗くして答えた。
「当然だろう。『鉄鬼』、『歴代の大隊長最強』などと呼ばれた私が、2度も無様な姿を晒したのだ。それも、貴様のような若造の前でな」
「……」
「しかも、今回は我々断罪官の誇りを取り戻す為の戦いの中、『神』とはいえ他者にいいように操られたなど、屈辱以外のなにものでもない。ならば、いっそあのまま、エクスプロシオンの代償を払って死ねだけじゃなく、誰の記憶にも残らないように消えてしまったほうが……」
表情を暗くしたままかなりネガティブなことを言うウォーレン。
しかし、
「彼らを置いてですか?」
と、春風がウォーレンの周りを指差しながらまた尋ねると、
「……何?」
ズガンッ!
「ぐおっ!?」
突然、ウォーレンは頭部に強い衝撃を受けた。それも、複数同時にだ。
「な、なんだ?」
何が起きたかわからなかったウォーレンは、キョロキョロと周囲を見回すと、
「父上」
「旦那」
「「大隊長」」
そこにいたのは、ルーク、ギャレット、ダリア、ユリウス、そして断罪官の隊員達だった。
そしてよく見ると、隊員達を除いて、ルーク達の手からシュウと煙のようなものが出ていた。
ウォーレンはそれを見て、どうやら先ほど頭部に受けた衝撃の正体は、ルーク達のチョップによるものだと理解すると、
「お、お前達、無事だったのか!?」
と、驚いた表情で尋ねた。
尋ねられたルーク達は、
「はい、全員生きてます」
「ま、俺ら全員見事に負けちまったけどな」
「ええ、もうかなりボロボロですよ」
「ま、私としては得たものがありましたけどね」
と、口々にそう答えたので、ウォーレンはポカンとなった。
そこへ、ルークが話しかける。
「それよりも父上」
「な、なんだ?」
「今あなたが言ったこと、取り消してください」
「何?」
「そうだぜ旦那、『もう駄目だ』とか、『消えてしまった方が』とか、2度と言うもんじゃねぇよ」
「そうです。私達にはまだ、大隊長が必要なんです」
「次変なこと言ったら、今度はみんなでもっと痛い目にあわせるからね」
そう言ったルーク達の言葉に続くように、隊員達もウンウンと頷いた。
「お前達……」
そう言って、ウォーレンは再び「ハハ」と乾いた笑い声をこぼすと、
「全く、しょうがない奴らだ」
と、黒く染まった右手で顔を覆った。
春風はそんなウォーレンを見て、
(うん、これで良し!)
と、心の中でそう呟いた。
しかし、春風達は知らない。
今、春風達がいるところから少し離れた森の中に、自分達に邪な視線を向けている者達がいることを。
どうも、春風です。
というわけで、これで春風vsウォーレンの戦いは終了……なのですが、まだ、話は終わりではありません。




