第291話 決戦、断罪官24 春風vs「鉄鬼」再び3
(……今、何て言ったんだ?)
突然現れた地球の神・ヘファイストスが言ったことを、春風は理解できないでいた。
「……それは、どういう意味だ?」
そして、それは春風と戦っていたウォーレンも同様だった。
そんな2人を前に、ヘファイストスは言う。
「ああ悪りぃな、ちょいと説明が足りなかった。その剣はお前さんの肉体や命……いや、魂を燃やすことで力を発揮するんだわ。で、そいつを使い続けると、最初は肉体、次に魂が燃え尽きて……」
「……私が、死ぬということか?」
「それだけじゃねぇ、『魂が燃え尽きる』ってことは、その存在の完全なる消滅を意味する。そうなっちまったら、他人の記憶からも消え、転生……つまり、死んでも生まれ変わることは出来ねぇんだ」
真剣な表情で説明を終えたヘファイストス。それを聞いて、春風も、ジゼルも、そしてウォーレンも絶句した。
だがそんな状態の彼らをよそに、ヘファイストスはチラリとウォーレンが手にしているエクスプロシオンに視線を向けると、
「つーか……オイ、いつまでそこでだんまりをしている気だ!? 姿を見せんかこの紛いものが!」
と、目をカッと見開いて怒鳴った。
「「「!?」」」
突然のことに春風達が一斉にギョっとなっていると、
「だぁれが『紛いもの』だコラァッ!」
と、エクスプロシオンから男性の怒鳴り声が聞こえた。
「「「!?」」」
剣から発せられたその声に、春風達が再びギョッとなると、エクスプロシオンから赤いオーラのようなものがゆらゆらと出てきた。その後、オーラは少しずつ形を変えていくと、やがてそれは人の形になった。そして、最終的に出来上がったのは、いかにも「乱暴者」を思わせる雰囲気をした、若い赤髪の青年だった。
「こ、これは、一体……?」
戸惑うウォーレンをよそに、その赤髪の青年は目の前のヘファイストスをキッと睨みつけた。
ヘファイストスはそんな青年を見てニヤリと笑うと、
「おうおう、ようやく出てきたか」
と、何処か馬鹿にするような口調で言った。
そんなヘファイストスに、春風が口を開く。
「あの、ヘファイストス様、ちょっとよろしいでしょうか?」
「おう、何だ?」
「その、もしかしてなんですけど、あいつひょっとして、女神マールと同じ……」
と、春風が尋ねようとする前に、赤髪の青年が怒鳴るように答える。
「そうだ! 俺の名はカルド! 『炎』を司る『神』だ! 覚えとけ!」
声高々にそう名乗った青年、カルド。
ウォーレンはそんなカルドの言葉を聞いて、
「ま、まさか、五神の1柱だと? 私は、神と共に戦っていたのか?」
と、先程以上に戸惑っていた。
しかし、そんなカルドを見てヘファイストスは「ハァ」と溜め息を吐くと、
「なぁにが『神』だ。お前さんのような奴は『神』だなんて言わねぇよ。当然、この間のマールって女と、他の連中もな」
と、目の前のカルドとこの場にいないマール、そして残りの現エルードの神を思いっきり否定した。
「な、なんだとぉ!」
カルドはヘファイストスの言葉に、顔を真っ赤にした。
しかし、ヘファイストスは話を続ける。
「オイオイ、ホントのことだろが。確かにお前さんからは『神』の力を感じるが、それだけだ。お前さんからは、『神』としての『信念』も『覚悟』も、何にもねぇ。何より……」
『?』
「お前さんからは、『神』としての、『品性』のかけらもねぇ! お前さんのようなのが『神』を名乗られたら、俺ら本物の『神』の『品性』が地に堕ちちまうわ!」
ビシッとカルドを指差してそう言い放ったヘファイストスに、カルドは「な、な……」とプルプルと体を震わせた。
そんなカルドを前に、ヘファイストスは更に話を続ける。
「もう一度言うぜ。お前さんは『神』なんかじゃねぇ。『神』を手にして、その力に溺れて、『神』になった気でいるだけの、ただの『紛いもの』だ!」
指差したままそう言い切ったヘファイストス。その彼の言葉を聞いて、
「テメェ! 言わせておけば良い気になりやがってぇ!」
と、カルドは怒りのままに叫んだ。
一方、先ほどから空気と化していた春風はというと、
(……そうか、あいつが)
怒りで顔を真っ赤にするカルドを見て、
(俺達が倒すべき、敵の親玉の1人ってわけか)
と、こちらも心の中で、静かに怒りの炎を燃やしていた。
というわけで、水の女神(ただし偽物)マールに続く新たなる敵の親玉の登場です。




