第30話 本当の「予言」
遅くなりました。
春風達の前に、突然現れたローブ姿の老婆の幽霊。
ここで普通だったら、
「出たーっ! 幽霊だーっ!」
と、びっくりして騒ぎ出すところだろう。
しかし残念なことに、今はそんな状況ではなかった。
アマテラスは何処かぎこちなさそうに、老婆の幽霊に質問する。
「あー、どちら様でしょうか?」
「お初にお目にかかります、異世界の女神様と、その契約者様。私は、ジゼル・ブルーム。ご覧の通り、死んで幽霊となって彷徨っていた時にこの地に迷い込み、以後はこうしてヘリアテス様のおそばに置かせてもらっている身でございます」
と、とても礼儀正しく答える老婆ーージゼルに、アマテラスは、
「はぁ、そうなんですか」
と納得し、気持ちを切り替えて早速「予言」について尋ねることにした。
「それじゃあジゼルさんとやら、今この世界に広まってる『予言』について、貴方が知っている事を教えてくださいな」
アマテラスにそう尋ねられて、ジゼルは「わかりました」と頷きながら答える。
「実はその『予言』は、17年前に私が死ぬ間際に遺したものなのです」
「!?」
「……それ、どういう事?」
驚く春風を他所に、アマテラスは質問を続けた。質問されたジゼルは、自身の胸にソッと手を当てて答える。
「申し遅れました。私は生前、固有職能『予言者』の固有職保持者だったのです」
「ほう……」
(まさか、ここでも固有職保持者に会えるなんて……って、ん? 『だった』?)
落ち着いているアマテラスと、再び驚く春風。しかし、そこである疑問が浮かび、今度は春風がジゼルに質問した。
「あの、『だった』ってことは、今は違うってことですか?」
「はい、どうやら死ぬとステータスや職能が消えてしまうようなのです。死んでしまった今では、もうステータスを開くことも出来ません」
「そう、ですか……」
ジゼルの答えに若干シュンとなった春風。アマテラスはそんな春風の背中を、ポンポンと優しく叩いた。
春風達を前に、ジゼルはさらに話を続ける。
「ちょっとお話が逸れてしまいましたが、私が遺したその『予言』ですが、どうも『教会』によってかなり改変されている様なのです」
「? 改変? ていうか、『教会』って何?」
「はい、正式には『五神教会』と言いまして、500年の歴史を誇る宗教組織で、セイクリア王国に拠点を構えて、裏で国を支配しているのです」
「そんな組織が、どうしてジゼルさんの予言を改変なんてしたの?」
アマテラスの質問に、ジゼルは少し暗いが真面目な表情で答える。
「それは、私が遺した『予言』が、『教会』の連中……というよりも、彼等が崇める5柱の神々……いえ、侵略者の親玉達にとって、あまりにも不都合なものだったのです」
「「不都合?」」
「はい、私が遺した本当の『予言』は、こうなのです」
そして、ジゼルは春風とアマテラスに、その本当の予言を話した。
「この『偽りの歴史』に塗れた世界『エルード』で、許されざる過ちが犯されし時、3人の『悪魔』、現れん。1人は『真の神々』に育てられし『白き悪魔』。1人は『偽りの神々』に逆らいし『青き悪魔』。そして最後は、『異界の神々』と契りを結びし『赤き悪魔』。やがて3人の悪魔が集い、並び立つ時、『偽りの神々』が死ぬ未来が決定される。その後、『悪魔』によって全ての『偽りの神々』は滅ぼされ、残されし人々は新たな未来へと歩み始める」
その「予言」を聞き終えると、ログハウスの中は沈黙に包まれた。
(いや。いやいや、ちょっと待って……え?)
混乱する春風に、ジゼルが話しかける。
「契約者様」
「は、はい!」
「無礼を承知でお聞きしますが、貴方は、固有職能を持っていますね?」
「……はい、俺は固有職能『見習い賢者』の固有職保持者です」
「なんと『賢者』!?」
「いえ、『見習い賢者』です」
「でも『賢者』なのですよね?」
「……まぁ、一応そうなのですが」
そして、再び沈黙に包まれる。
暫くして、その沈黙を破ったのは、春風だった。
「あの、ジゼルさん」
「はい」
「予言に出てきた『許されざる過ち』とは、セイクリア王国が行った『勇者召喚』でよろしいでしょうか?」
「恐らく、そうでしょう」
「なら、『真の神に育てられし白き悪魔』って……」
「はい、間違いなく、ヘリアテス様とループス様に育てられた、リアナ様の事でしょう」
「じゃあ、もう1人はわかりませんが、最後の『異界の神と契りを結びし赤き悪魔』って……」
「……」
「俺、ですか?」
春風のその質問に対し、ジゼルは、
「そうです。リアナ様ともう1人、そして、貴方様が、神を滅ぼす悪魔なのです」
と、ゆっくりと大きく頷きながら答えた。
改訂版である今作は、予言者さんの名前と予言の内容を変更しました。内容につきましては、主人公とヒロインの他に、もう1人追加しました。




