第227話 不安
お待たせしました、第9章最終話です。
新たな出会いと、その後の一波乱、そして、「家族」との再会という素敵なイベントを体験した春風。
だが、
(あれ、そういえば……)
ふと、春風の脳裏に浮かんだのは、
ーー再会の方なんだけど、こっちは『良いもの』と一緒に『嫌なもの』があるんだよね。
夢の中で再会した、「エルード」と名乗った少女の言葉だった。
(『嫌な再会』、か。一体、どういう意味なんだろう?)
と、春風は心の中でそう思うと、少し不安になった。
そして今、その「嫌な再会」の時が、刻一刻と迫っていた。
春風がそんな事を考えていたのと同時刻。
セイクリア王国王都にある、五神教会総本部では、
「……そうですか、『彼ら』はもうすぐこちらに帰還するのですね?」
「はい、教主様」
現教主であるモーゼスが、配下の信者から報告を受けていた。
その後、モーゼスは「ふむ」と小さく呟くと、
「わかりました。では、もう下がって良いですよ」
と信者に向かってそう命令した。
命令を受けた信者は、
「はい、失礼します」
と言うと、そのままモーゼスの下を離れた。
「フゥ、漸く『彼ら』が帰ってくるか。では、こちらも……」
モーゼスはそう一息入れると、すぐに別の信者を呼び寄せた。
「お呼びでしょうか、教主様?」
呼ばれた信者がそう尋ねると、
「私は暫くここを離れる用事が出来ました。ですので、準備をするようお伝えください」
と、モーゼスは呼ばれた信者にそう命令した。
「あの、どちらへ向かわれるのですか?」
呼ばれた信者は「?」を浮かべて再びモーゼスにそう尋ねると、
「ウォーリス帝国ですよ」
と、モーゼスはニコリと笑ってそう答えた。
ただ、信者はその笑みから何かを感じ取ったのか、ぶるりと体を震わせていた。
そして、時はそれから少し経って、ウォーリス帝国帝城、その内部にある執務室では、
「……そいつは間違いねぇのか?」
「はい、間違いありません」
皇帝ギルバートが、目の前にいる長い銀髪に尖った耳を持つ男性、メルヴィンから報告を受けていた。因みに、ギルバートの横では、皇妃エリノーラもその報告を聞いて顔をしかめていた。
「ウィルフはこの事知ってるのか?」
「いえ、完全に教主モーゼスのみの行動になります」
「そうか……」
メルヴィンの報告を聞いて、ギルバートは「ハァ」と溜め息を吐いて視線を天井に向けると、
「わかった、下がってくれ。引き続き情報が入り次第、俺に報告しろ」
「わかりました。では、失礼します」
メルヴィンはギルバートにそう命じられると、エリノーラにもお辞儀をして執務室を出た。
「やれやれ、遂に奴が動くのか」
エリノーラと2人きりになると、ギルバートは溜め息混じりにそう呟いた。
「少々困った事になりましたね、陛下」
その様子を見て、エリノーラがそう話しかけてくると、
「おいおい、エリー。こうなった原因は、お前にもあるんだぞ」
と、ギルバートはジト目でエリノーラを見つめてそう返した。
すると、エリノーラはとぼけた感じで「あらあら」と言うと、明後日の方を向いて、
「ふんふーん」
と鼻歌の様なものを歌っていた。
ギルバートはそんなエリノーラを見て「まったくもう」と小さく呟くと、再び視線を天井に向けて、
(ま、確かにエリーの言う通り、少々困った事になっちまったが、果たしてどうなることやら)
と、心の中でそう考えていた。
その後、春風はギルバートから「とある報告」を聞かされ、それが新たな騒動の幕開けになるのだが、それはまた、別の話。
これで、第9章は終了です。
この後はまた本編をお休みして、いくつかの間話を投稿していきます。




