第221話 召喚、開始
それは、春風が英雄転生召喚をする事を決めた時のことだった。
「え、サポート……ですか?」
「うん。今夜の英雄転生召喚は、私達『地球の神々』のサポートのもとに執り行ってもらうから」
真面目な表情でそう言ったアマテラスに、春風は「?」を浮かべながら、
「あの、それって必要なことなんですか?」
と尋ねると、
「勿論。前に話した異世界と同じように、この英雄転生召喚にも召喚者の魔力の他に『神』の力も必要になるの」
「そうなんですか!」
「ええ。そして、今回サポートにつく『神』は2柱。死者の世界である『冥界』の神と、『月』を司る神。英雄転生召喚を行うには、この2柱のサポートがないといけないの。それくらいとってもデリケートな秘術ってことよ」
「はぁ、そうですか」
「というわけで、私は一旦向こうに戻ってサポート役の神様を決めてくるから、春風君達もそっちの準備はお願いね!」
「わかりました!」
そして現在。
「……で、厳正な話し合いの結果、僕とアルテミスが、サポート役に選ばれたって訳なんだ」
「そ、そうだったのですか」
ハデスの話を聞いて、イブリーヌは若干萎縮した様子でそう返した。
その後、ハーデスは春風の方を向いて、
「そ、そういう訳だから、よろしく、春風君」
と、春風に右手を差し出してそう言うと、
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
と言ってその手を掴んだ……のだが、
「……て、あれ? アルテミス様はどちらに?」
「あっち」
そう言われた春風が、ハデスが指差した方を見ると、
「うーん。ヘリアよ、本当に小さくなったなぁ」
「や、やめてくださいぃ」
と、アルテミスに頭をポンポンされているヘリアテスがいた。
数分後。
「よし、それでは始めるとしようか」
「はい!」
アルテミスの指揮の下、いよいよ英雄転生召喚の儀式が行われることになった。
「では最初に……」
アルテミスはそう言って右腕を夜空にかざすと、次の瞬間、帝城全体が大きな透明の「膜」に包まれた。
「あの、これは?」
「結界だ。これで、いかなるものも邪魔は出来まい」
「おお、ありがとうございます」
春風がアルテミスにそう感謝すると、
「で、では次は僕ですね。春風君、こちらへ」
と、ハデスが春風に側まで来るよう誘った。その近くには、昼間春風が謁見の間で見せてもらった『素体』が入った大きな棺の様な箱があった。
春風はハデスに従ってその大きな箱の前に立つと、
「それじゃあ、その刀、彼岸花を構えて」
「わかりました」
ハデスの指示に従って、春風は腰に挿した彼岸花を抜いた。
ハデスはそれを確認すると、春風の背後に立って、その両肩に手を置いた。
その後、ハデスは春風に優しく語りかける。
「だ、大丈夫。ゆっくり深呼吸して、意識を集中するんだ。そうすれば、頭の中に言うべき『言葉』が浮かび上がってくる。それが、君が唱える英雄転生召喚の詠唱だから」
「は、はい」
春風はハデスに言われるがままに、ゆっくりと深呼吸して意識を集中すると、本当に頭の中に言葉が浮かび上がってきた。それと同時に、彼岸花の赤い刃が、更に赤く輝いた。
周囲がゴクリと固唾を飲んで見守る中、春風はその言葉を口に出す。
「えー冥界に住む死者の魂の皆さんこんばんは、自分は幸村春風と申します」
その言葉を聞いた瞬間、その場にいる誰もが、
『なんじゃそりゃあああああああっ!』
と悲鳴をあげてずっこけた。
しかし、そんな状況でも春風は詠唱(?)を続ける。
「突然ですが、今、自分の故郷である『地球』と、今、自分がいる『エルード』という異世界が、大変な事態に陥ってます。さて皆さん、そんな状況の中、自分は、皆さんに聞きたいことがあります」
春風のその言葉を聞いて、体勢を立て直した周囲は
『な、なんだ? 何を言う気だ?』
と、再びゴクリと固唾を飲んだ。
そして、春風は、叫ぶ。
「世界を救う、『英雄』になりたいですかぁ!?」
『な、なんじゃその質問はぁ!?』
「なりたいんでしたら、今俺の目の前には、その為に必要な『肉体』がありますよぉ! しかも3体も! さぁ、早い者勝ちですよぉ! 『英雄』になりたいなら! 世界を救いたいなら…!」
春風はそう叫びながら、彼岸花の切っ先を下に向けて、
「俺の所に来ぉおいっ!」
勢いよく地面に突き刺した。
すると、目の前にある「素体」が入った箱を中心に、魔法陣が展開された。
「今だ、叫ぶんだ、春風君!」
「英雄転生召喚、発動!」
ハデスに促されて、春風がそう叫んだ次の瞬間、「素体」が入った箱にヒビが入った。
そして、バキバキと大きな音を立てて、3つとも全て砕け散った。




