第216話 とある魔術師の「遺産」
お待たせしました、1日遅れの投稿です。いつもよりちょっと長めの話になります。
「狂気に堕ちた魔術師の、遺産?」
頭上に「?」を浮かべてそう尋ねた春風に、ギルバートは答える。
「そうだ。あれは水音が帝国に来て暫く経ったある日、『辺境の地で1人の魔術師が怪しげな実験をしている』っていう情報が入ってな、その真偽を確かめる為にセレスと水音に調査をお願いしたんだ」
そうギルバートが説明すると、今度はセレスティアが口を開いた。
「ああ。そのお願いを受けて、私と水音はすぐに問題の地に向かったんだ。そして、そこで私達が目にしたのは……1人の男の、狂気に満ちた『実験』だったんだ」
「じ、実験って?」
春風を含む周囲がゴクリと固唾を飲む中、セレスティアは言いにくそうに答える。
「死者の蘇生実験だ」
『!?』
その答えを聞いた瞬間、周囲の人達はサーっと顔を青ざめたのだが、
「といっても、私達がその現場に踏み込んだ時には、男は既に虫の息だがな」
『……え?』
「どうも度重なる実験の所為で、男自身も相当無理をした様でな、私達が何かをする前に、奴は言いたい事だけを言って、そのままぽっくりと息を引き取ったんだ」
「……マジですか?」
「ああ。『もう少しだったのに、悔しい』。それが、奴の最後の言葉だったよ」
『……』
「その後、私と水音は男が何をしようとしていたのかを調べたんだ。そして調べ終えた結果、どうやら男には愛する妻と子供がいてな、盗賊に殺された彼女達を生き返らせる為に、魔術師としてあらゆる方法を用いて蘇らせようとしていた。因みに、子供は双子の兄妹だそうだ」
「そうだったんですか」
「で、どれも上手くいかなかった上に、彼女達の肉体も限界を迎えていてな、困り果てた男は最後の手段として、彼女達の体を一から作り直すという狂気じみた手段に打って出たんだ」
「い、一から、作り直す?」
「そうだ。男はあろう事か彼女達の死体に加えて、他人の死体や魔物の死骸などを材料にし、それを独自に組みあげた魔術の術式を用いて、3体の『素体』を作り出したんだ」
「……それが、『これ』ってわけですか?」
そう尋ねた春風に、セレスティアは「ああ」とコクリと頷いて、
「そして、さらに『こいつ』について調べた結果、外側だけじゃなく内臓の方もしっかりと作り込まれていて、ご丁寧に心臓の部分は強い魔物からとれた『魔石』を使用していたんだ。奴自身も優れた魔術師であると同時に優れたハンターでもあったから、魔石を用意出来ることなど造作もなかったようだ」
(ああ、そういえば『魔石』は通常魔物からとれるものって習ったな)
「で、漸く『素体』が出来上がって、さぁ、実行するぞという時に……」
「無理がたたって死んでしまった、と?」
「そうだ」
セレスティアがコクリと頷いてそう言った後、春風は視線をセレスティアから、目の前にある「素体」と呼ばれた「それ」に移した。
棺桶の様な大きな箱に入れられたその「素体」と呼ばれた「それ」は、とても死体や魔物の死骸などを材料にしたとは思えないくらい、見た目は本物の人間のようだった。
3体とも毛という毛は生えてないが、1つは2、30代くらいの女性で、残り2つは春風と同じ年頃くらいの少年少女の肉体だった。セレスティアが言っていた様に、双子故なのかどこか顔つきが似ていた。
因みに、3体とも全裸ではなくそれぞれ白い下着の様なものを身につけていて、キチンと隠すべきところは隠してあった。
暫く見惚れていると、今度は水音が近づいてきて、春風に一冊の手帳の様なものを差し出した。
「これは?」
と、春風が尋ねると、
「魔術師が書いた手記だよ。読んだらきっと、春風なら気にいると思ってずっと持ってたんだ。でもその後、色々あった所為で遅くなっちゃったけど」
と、水音は申し訳なさそうに答えた。
その後、水音からその手記を受け取ると、春風は早速その中身を見た。
すると、
「こ、これは凄い!」
と、春風は目をキラキラと輝かせて手記のページをめくっていった。
「うわぁ! へぇ! あ、なるほどぉ!」
ページを捲るにつれて、春風はだんだんと表情を明るくしていった。
しかし、
「……あ」
ジイっと見つめる周囲の視線が気になってきたのか、春風は恥ずかしそうに顔を赤くして、パタンと静かに手記を閉じた。
「コホン。で、ギルバート陛下」
「何だ?」
「その、今これをここに持ってきたってことは……」
「そうだ。こいつを使って召喚を行うといい」
その言葉を聞いて、春風は「ああ、やっぱりか」と言わんばかりの表情になると、
「あの、これ、どうですか?」
と、アマテラスに尋ねた。
「ふーむ、そうねぇ……」
アマテラスはマジマジとその3つの「素体」を観察すると、
「うん大丈夫、これならいけるわ! というか、これを使ったら凄いことが起きそうなんだけど!」
と、興奮気味に親指を立ててそう答えた。
その言葉を聞いて、春風は少しの間顔を下に向けると、ゆっくりと「素体」の側まで近づいて、
「あの、アマテラス様、無礼を承知でお聞きしますが」
「? なぁに?」
「あなたと他の地球の神様達は、俺が『これ』を使って起こす『奇跡』を見たいのですか?」
「勿論!」
即答だった。
それを聞いて、春風は顔を下に向けたまま、
「ハハ、そうですか……」
と、苦笑いを浮かべて言うと、スッと顔を上げて、
「アマテラス様、俺、やります!」
と、何処か吹っ切れたかの様な表情でそう宣言した。
謝罪)
遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。
この展開を考えつくのに時間がかかってしまい、1日遅れの投稿になってしまいました。




