第196話 白金級ハンターからの挑戦
(えー、皆さんこんにちは、幸村春風です。今、白金級ハンターのアーデさんと対峙しています)
と、頭の中でそんな事を呟く春風。
彼は今、帝城内にある簡易闘技台の上で、白金級ハンター・アーデことアデレード・マリッサ・グレイシアと対峙していた。
(どうして!? どうしてこうなった!?)
事の起こりは、少し前に遡る。
「あー、えっと、アーデ……さん」
「何かな春風君?」
「あなたは今、俺に挑戦に来たと言ったのですか?」
「そうだよ! 君と戦いに来たんだ!」
元気よく答えたアデレードに、春風は後ろに倒れそうになったが、すぐに持ち直して、
「いやいやいや、ちょっと待ってください! あなた何を言ってるのですか!? 頭おかしいんじゃないですか!?」
「うわー、どさくさに紛れて酷い事言われちゃったよぉ」
「ああすいません、思わず口から出ちゃいました!」
アデレードの言葉にハッとなった春風はそう謝罪すると、「コホン」と小さく咳き込んで、
「すみませんが、理由をお尋ねしてもよろしいですか?」
と、落ち着いた口調で尋ねた。
そんな春風に、アデレードは真面目な表情で答える。
「数日前の君ともう1人の異世界人との決闘は、この国の技術によってあらゆる国で見る事が出来るっていうのは知ってるね?」
「……はい」
「で、それには私が暮らしているシャーサルも含まれている。つまり、シャーサルの殆どの住人は、君の『真実』を知っているというわけさ」
「……」
「まぁそれは一先ず置いといて。で、話は変わるけど、私は確かに『王女』ではあるけど、恥ずかしい事に、私は自分よりも強い相手と戦うことが好きでね、その想いで国を出てハンター活動をしていて、気づいたら白金級ハンターになっていたというわけさ」
「はぁ、なるほど……って、え、あなた『王女』なんですよね? 国はどうしてるんですか?」
「ああ、そっちは私の両親と妹が頑張ってるから大丈夫!」
「……左様ですか(良いのかそれで?)」
「で、話は戻って、さっきも言ったけど、私は強い相手と戦うのが好きなんだ。それも魔物だけじゃなく人間も同じことさ。そして、数日前の君の戦いぶりを見て、『こいつは強い奴だ!』と思った私は、是非とも戦ってみたいと思い、こうしてメイベルと共にここに来たというわけさ」
「……それは、買い被り過ぎです。俺は、あなたが思ってるような強い人間ではありません」
アデレードの話を聞いて、春風は表情を暗くしてそう言った。
だが、
「いやいや、女神マールを拳骨で潰しておいて何言ってるの?」
と言ったアデレードの言葉に、春風は思わず「うっ!」と呻いて胸を押さえたが、
「……あの時は、運が良かったんです。俺1人では、あんな奇跡みたいなことは起こせませんよ」
と、再びすぐ持ち直してそう言った。
だがしかし、
「いや、君は凄く強い奴だと思うよ」
アデレードのその言葉に、春風は「は?」と首を傾げた。そんな春風を見て、アデレードは話を続ける。
「こうして実際に君を見てわかる。君は、強い『意志』と、『覚悟』をもってこの世界に来た。そしてそれは、あの時女神マールに放ったあの『技』に、大きく反映されていた。私は、そんな君だからこそ、本気で『戦いたい』と思ったんだ」
と、真っ直ぐ春風を見てそう言ったアデレード。
春風は「それでも……」と何か言おうとしたが、
「良いじゃねぇか、戦ってやれよ」
と、ギルバートが割って入ってきた。
「陛下?」
「アーデの話を聞いてわかっただろ? こいつは、本気でお前と戦う為にここへ来た。その想いは、決して嘘なんかじゃねぇ。ならお前には、その想いに応えてやる『責任』があるんじゃねぇか?」
「それは……」
「それに、『白金級ハンター対異世界の神の使徒』なんて、こんな面白そうなイベント是非とも見てぇじゃねぇか、なぁお前ら?」
と、春風の背後を見てそう尋ねたギルバートを見て、春風は「?」を浮かべてゆっくりと後ろを振り向くと、そこには自主練していた筈のリアナ達がいた。
「み、みんな、いつの間に……」
「な、春風? こいつらだって『見たい』って思ってるぜ? どうするよ?」
「……」
春風は少し考え込むと、「ハァ」と溜め息を吐いて、
「わかりました」
『おお!』
「ですが、条件があります」
『?』
「俺は目立つのは嫌いなので、戦う場所は闘技場以外でお願いします」
それを聞いて、みんな『ええぇ?』と言っていたが、春風は頑として譲らなかった為、結局、闘技場以外の場所で戦う事が決まった。




