第190話 混乱する世界
今回はいつもより短めの話になります。
波乱に満ちた春風と水音の決闘から数日。
世界は、前代未聞の混乱状態に陥った。
きっかけは決闘開始直前の、ウォーリス帝国皇妃エリノーラによるカミングアウトだった。
「幸村春風は『賢者』の固有職保持者であると同時に異世界の神の使徒でもある」
それは、あまりにも衝撃的な事実だった。
更に2人の決闘中に、自分達が崇める神の1柱、女神マールが現れ、それに続く様に、春風の故郷である異世界「地球」の神の1柱・アレスの登場、そして、水音の固有職保持者への覚醒に、春風の必殺技によって女神マールが潰された(といっても肝心のマールは本体ではないので正確には死んではいないのだが)というとんでもない事態は、エルードに住む人々にとって大きなショックを与えたのだ。
何故これほどまでに話が広がったのか?
理由は、2人の決闘の一部始終を、世界中の人々が見ていたからだ。
実はウォーリス帝国という国は、エルードでもトップレベルの魔導具開発技術を誇り、その技術力は春風達地球人から見ると、
「あれ? この国の技術、もしかしたら地球に近いんじゃないか?」
と思えるくらいのものだった。
特に驚いたのが、その日起きた様々な出来事を記録するだけじゃなく、それをあらゆる地域に住む人にも見せる事が出来るという「魔導映像配信技術」というもので、これは地球で言う「テレビ放送(もしくは動画配信に似た様なもの)」だった。
そして、その技術は闘技場内にも設置されており、これによって決闘当日に起きた出来事は、世界中の人が見ていた事になるのだ。
因みに、後でエリノーラからこの事実を聞いた春風は、ショックのあまり泡を吹いて卒倒した。
ともあれ、この出来事はあらゆる国、特に五神教会の総本部があるセイクリア王国に、大きな混乱を招く事になった。
国王であるウィルフレッドはなんとか混乱を鎮めようと奮闘していたが、一向におさまる気配はなかった。
さて、ウィルフレッドが頑張って混乱をおさめているいるその最中、五神教会の総本部では、それまで女神マールを含む5柱の神を信じていた教会の信者、それも教会に入ったばかりの若い信者の中から、
「自分達はこのまま、この神を信じて良いのか?」
と、神に対して疑念を持つ者が現れはじめたのだ。
当然、教主であるモーゼスをはじめとした教会幹部らはどうにかして彼らを宥めようとしたが、一部の若者が、
「もうこの神を信じる事が出来ない!」
と、怒って教会を去ってしまい、それを皮切りに、他の若い信者達も、それ続く様に教会を去った。そしてそれを知った各地の教会信者達の中からも、次々と教会を去る者が出てきたのだ。
この事態にショックを受けたモーゼスは、
「お、お、おのれ幸村春風ぁあああああああっ!」
と、後で春風に恨みを込めた叫びをあげた。
さて、世界中でそんな事が起こってるとは知らない当の春風はというと、
(ど、どうして?)
『おはようございます、御使様!』
と、目の前にいる明らかに五神教会とは何かが違う雰囲気を持った神官達にそう呼ばれていた。
そして彼らの後ろには、彼らの拠点と思われるかつて五神教会の支部だった建物があるのだが、その看板にはこう書かれていた。
アレス教会本部。
そんな状況の中、春風は、
(どうしてこうなったぁあああああああっ!?)
と、心の中でそう悲鳴をあげるのだった。
謝罪)
大変申し訳ありません。第159話の、「師匠」こと凛依冴さんに関する記述を、少し追加しました。




