第189話 夢の中の「再会」
お待たせしました。今日から本編再開です。そして、いつもよりちょっと長めの話です。
「うーん? あれ?」
目を覚ますと、春風は見知らぬ場所に立っていた。
(何で俺、こんな所にいるんだ?)
そう思った春風は、ぐるりと辺りを見回すと、
(……あれ? 俺、ここを知ってる?)
と、何処かで見たかの様な感じがしたので、春風は「うーん」と唸って何処で見たのか思い出そうとした。
すると、
「こんばんは」
「え?」
突然の声にハッとなった春風は、すぐに声がした方向ーー正面を見た。
そこにいたのは、長い黒髪を持つ、白いワンピースを着た10歳くらいの少女だった。
少女を見たその瞬間、春風はこの場所が何処かを思い出した。
(そうだ。ここランクアップの時に来た場所だ)
そしてその時、春風は目の前にいる少女の事も思い出した。
そう、この少女は、ランクアップの時にこの場所に現れた、あの時の少女だったのだ。
(……でも、何か違う?)
しかし、春風がそう考えた通り、目の前にいる少女は、最初に会ったあの時とは何処か印象が違っていた。
ランクアップの時に会った少女は、無口かつ無表情なうえにその瞳には「生気」がなく、まるで「人形」を思わせる様な印象だった。
しかし、今の彼女の瞳には光が宿っていて、春風を前に年相応の普通の少女の様に、にっこりと可愛らしく笑っていた。
そんな少女を前に春風は、
「こんばんは」
取り敢えず、挨拶を返す事にした。
それを見て、少女はまだ可愛らしく笑っている。
春風はここで「君は?」と少女の名前を聞こうとしたが、先ずここは自分からだと思い、
「えっと……はじめまして、俺は……」
と自己紹介しようとしたその時、
「知ってるよ、幸村春風君でしょ?」
と、少女の方から尋ねてきた。
「え、俺のこと知ってるの? 君は一体……」
驚いた春風が少女にそう質問しようとすると、
「はじめまして、私の名前は、エルード。この世界の、『意志』と言えば良いのかな、よろしくね」
と、少女は自身をそう紹介した。
「この世界の意志って、え、な、何、ちょっと……え?」
と、春風が混乱していると、その少女、エルードはクスクスと笑い出した。その姿を見て再びハッとなった春風は、コホンと咳き込んで気分を落ち着かせると、真っ直ぐエルードを見て口を開く。
「あー、うん。えっと、君……いや、あなたががエルードの『意志』だってことは理解しました」
「あ、私のことは『エルード』って呼んで、敬語は要らないよ。出来たら普通に話してほしいな」
「え……じゃあ、そうするよ」
「ありがとう」
「それで、ここは一体何処なの? 何で俺、ここにいるんだい?」
と、そう質問した春風に、エルードは真面目な表情で答える。
「ここは、私が作った特別な空間。今日はあなたに幾つか伝えたいことがあって、ここに呼んだの」
「伝えたいこと?」
「うん。先ず1つ目は……ありがとう、あの『女』ぶっ潰してくれて」
「え、あの『女』って?」
「マールっていう自称女神」
「ああ、あいつか……て、何で君がそのこと知ってるの?」
「いや、私、この世界の意志だから、この世界で起きた出来事は全部知ってるの」
「マジで?」
「マジで。あの時、あなたがあいつに向けて放ったあの必殺技、とってもかっこよかった」
「……その後、俺、気を失ったんだけど? ていうか、あいつ意識体だから完全に倒したわけじゃないんだけど?」
「それでも、すっごくかっこよかったよ。あの女の恐怖に歪んだ顔を見て、とてもスカッとしちゃった。もう私許しちゃうから、あの女とその仲間、思いっきりやっつけて、リアナちゃんのお父さんとお母さん……ああ、本物の神様ね、2柱のこと助けて欲しいの」
「それが、もう1つの伝えたいこと?」
「そうそう。で、3つ目は、あの時あなたが放った技と、あの女が潰れた所為かはわからないけど、こうして私、あなたとお話が出来るようになったんだ。だから、こっちの方も、ありがとう」
「はあ、どういたしまして」
「で、4つ目なんだけど、うーん、どう言えばいいのかなぁ?」
微妙な表情でそう話すエルードに、春風は「?」を浮かべて首を傾げると、
「あのね、全部を言えるわけじゃないんだけど……これからあなたに、『素敵な出会い』と『再会』が起きるの」
「マジで!?」
「マジで。ただ、『再会』の方なんだけど、こっちは『良いもの』と一緒に『嫌なもの』もあるんだよね」
「えぇ?」
エルードの言葉を聞いて、春風はがっくりと肩を落とすと……。
グニャリ。
「え、な、何これ!?」
突然目の前の景色がそう音を立てて歪み始めた。
「あ、どうやら『時間』みたいね」
「え、じ、時間って? いや、ちょっと待って、その嫌な方の再会って、俺どうすれば良いんだ!?」
「大丈夫! あなたはそのまま、自分の信じた道を進めば良いから!」
「あ、そ、そうなんだ……って、ねぇ、こんなことを聞いてる場合じゃないんだけど、また会えるかな!?」
「そっちも大丈夫! 今度はあなたの『仲間』達も一緒だから!」
エルードがそう叫んだ瞬間、景色は一瞬にして真っ暗になった。
そして、
「はっ!」
目を覚ますと、春風は帝城に用意された自室のベッドの上にいた。窓の外を見ると、まだ夜だった。
「今のは、夢だったのかな?」
と、ゆっくりと上半身を起こしてそう呟いた春風。
しかし残念な事に、その呟きに答えられる者は、誰もいなかった。
というわけで、今日から新章の始まりです。
今回の章のテーマは、
「嵐の前の、ちょっとしたイベント」
になります。
水音君との決闘を終えた春風に、一体何が待ち受けているのでしょうか?
乞うご期待です。




