第162話 色々決まった
「それで、2人共何処で決闘する気なの?」
周囲の人達に謝罪した後、凛依冴にそう尋ねられて、春風と水音は「え?」となった。
そこまで考えてなかった水音は答えられなかったが、元々目立つのが嫌いな春風は、
「えぇっと、俺としてはひっそりとやりたいので、なるべく人気のなく、誰にも迷惑をかけない所が良いのですが……」
と答えようとした、まさにその時、
「ちょっと待った!」
と、ここでギルバートが「待った」をかけた。
「……何ですか、陛下?」
「その決闘、俺も見たい」
「え、陛下もですか?」
「当たり前だ! そんなビッグイベント、何をひっそりとやろうとしているんだ!?」
「いや、『ビッグイベント』って……」
ギルバートの言葉に春風が呆れた表情をすると、
「あら、私達も見たいわよ」
と、隣のエリノーラが穏やかな笑みを浮かべてそう言った。
「え? わ、『私達』もって、まさか……」
「勿論、私と息子達、そして皆さんも、よ」
エリノーラがリアナ達を見てそう言うと、若干気まずそうにしていたが全員コクリと頷いたので、春風は「えぇ?」と小さく呟いた。
するとそこへ、
「それなら母上、『闘技場』を使うのはどうでしょうか?」
と、エドマンドがエリノーラにそう提案してきた。
「まぁ! それは良い考えだわ! 是非そうしましょう!」
「……あの、『闘技場』とは?」
春風が恐る恐るエリノーラに尋ねると、
「ああ、ごめんなさいね春風ちゃん。闘技場っていうのは、このウォーリスの帝都の、もう1つのシンボルとも言える施設の事なの。特別な設備を備えていてね、『誰にも迷惑をかけない』っていう条件にはピッタリの場所よ」
「……いや、ちょっと待ってくださいよ。俺は、その他にも『ひっそりとやりたい』と言いましたけど?」
「駄目よ。同じ異世界人でも、神様(悪い奴等だけど)に選ばれた『勇者』の水音ちゃんと、異世界の神々の契約者にして『賢者』の固有職保持者の春風ちゃん、同じ師匠を持つ2人のお弟子さんの、『力』と『技』と『想い』をぶつけ合う戦いなのよ? 陛下の言う通り、こんなビッグなイベントをひっそりとやるなんて、私は絶対反対ですぅ!」
頬を膨らませてプンスカと怒りながら言うエリノーラを見て、
「だから、ビッグイベントって……」
と、春風は突っ込みを入れたかったが、周りをよく見るとリアナ達もエリノーラと同じ想いだった様で、再び「えぇ?」と小さく呟いた。
そんな春風を無視して、エリノーラは、
「はい、じゃあ決定という事で。エドちゃんオズちゃんは、早速闘技場の使用申請と、設備の整備をお願いね」
「「わかりました、母上」」
「それと、どうせなら帝都の住人さん達にも見せたいから、アンちゃんは広報活動の方をお願いね」
「はい、お母様」
「うーんと、今から準備となるとそれなりに時間はかかるでしょうから、セレスちゃんはその間、水音ちゃんの肉体面と精神面のメンテナンスをお願いね」
「わかりました」
と、エドマンド、オズワルド、アンジェリカに指示を出した。
すると、ハッとなったギルバートが、
「な、なぁエリー……」
「何ですか、陛下?」
「俺は、何をすれば良いんだ?」
と尋ねると、
「あなたは当然、仕事です」
「そ、そんなぁ!」
「逆らうなら、春風ちゃん達の決闘は見せません」
「全力でやらせていただきます!」
「よろしい。レイちゃん、陛下がサボらない様にサポートお願いね」
「わ、わかりました」
(うん。絶対この人には逆らわない様にしよう)
一連のギルバート、エリノーラ、レイモンドのやり取りを見て、春風は心の中でそう決意した。そしてそれは、リアナ達も同様だった。
こうして、あれよあれよという間に、春風と水音の決闘が決まった。
その夜、
「はぁ、今日はいろんな事があって疲れたわぁ」
春風はエリノーラが用意してくれた部屋のベッドの上でぐったりとしていた。
あれからひとまずその場は解散という事になって、アマテラスはその後、零号を通して元いた場所に帰った。ヘリアテスというと、今はリアナと一緒の部屋にいるという。そして、凛依冴やイブリーヌ、ディック、七色の綺羅星メンバー、そして歩夢ら勇者達も、それぞれ用意された部屋にいる。
(はてさて、どうしたもんかなぁ)
と、ベッドの上で転がりながらそう考えていると、コンコンと部屋の扉をノックする音がしたので、
「? はーい」
と春風はベッドから起き上がって扉を開けると、そこにいたのは、
「イブリーヌ様?」
「こ、こんばんは、春風様」
イブリーヌだった。




