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一度人生を諦めた悪役令嬢ですが、目が覚めたので婚約解消して自由に…ってしつこいです、元婚約者殿下。  作者: 心音瑠璃
第一章 学園革命

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20.生徒会役員選挙準備⑤

 泣き出してしまったシンシア様に慌てて駆け寄り、彼女にハンカチを差し出す。


「シ、シンシア様!? ごめんなさい、何か傷つけるようなことを言ってしまったかしら」

「ち、違います……、嬉しくて」

「え……」


 驚く私に、彼女は「ありがとうございます」と礼を述べながらハンカチを受け取ると、実は、と口を開いた。


「エイミス様が一週間前に仰っていた“海が見える花畑”がありましたよね」

「え、えぇ」

「実は、あの花畑は私の実家が運営しているんです」

「え……!?」


 そうだったの!? と驚くと、彼女は小さく頷き口にする。


「私の祖父が管理している花畑で、祖父は緑属性の魔法が使える優れた庭師でした。

 現役時代は貴族のお屋敷に赴いて仕事をしていたのですが、歳を取って思うように身体が動かず、魔力も弱くなっていった。

 そこに生まれたのが、緑属性を扱える私だったのです」

「シンシア様が?」


 彼女は頷くと、照れくさそうに言う。


「家族が言っていたことで本当のところは分からないのですが、私が生まれる際に祖父が咲かせようとしていた蕾の花が満開になったらしくて」

「え……!? それって、魔力量が多いということでは」

「はい……、家族も皆そう言っていました」


 属性の魔力量が強い子供が生まれる時、その属性による何かしらの影響を周りに及ぼすことがあると言われている。

 私が生まれた時は夜だったため、屋敷中に灯っていた火がより一層強く燃え、王太子殿下が生まれる時も王城の庭にある噴水が高く上がった……なんて言われている。

 本当のところ、私もよく分かっていないのだけど。

 そんな謂れがあることを知っているため驚くと、シンシア様は言葉を続ける。


「今まで祖父以外に緑属性を扱えるほどの強い魔力は家族の中に誰もおらず、跡取りとなりそうな者はいない。

 そう言われていたところに私が生まれたと……、祖父が一番喜んでいたみたいで」

「まあ」


 その光景が目に浮かび、顔を綻ばせた私に彼女も笑みをこぼした後、「でも」とその表情に陰を落として言った。


「祖父が十年程前、流行病にかかり亡くなってから、次々に屋敷に咲いていた花々が枯れたのです。

 まるで、祖父の死を悼むように」

「! そんな……」


 思わず絶句する私に、彼女はギュッと拳を握りしめて言った。


「祖父が亡くなり花も枯れ、家族も私も悲しみに暮れました。

 ……ですが、このままではいけないと思ったのです。祖父が大切に育てていた花を、今度は私が育てよう。

 そうして、家族に……見てくれた人達に、笑顔になってもらいたい。

 そう思って、何年も試行錯誤しながら努力しました。だけど」

「……上手く、いかなかったの?」


 彼女は頷き、俯く。


「確かに、花は咲きました。ですが、祖父が育てていた花よりもずっと寿命は短く、咲いてもすぐに枯れてしまう。

 祖父の時代には咲かせていた花が、咲かなくなってしまった花もあって。

 酷く落ち込んでいた私の元に舞い込んできたのが、学園の入学試験の案内だったのです」


 シンシア様の話によると、お祖父様が庭師として仕事をしていた際、後継者となってくれそうな孫がいると……、魔力量が強いことも話していたそうで、懇意にしていた貴族の方から話をお聞きしたのだとか。


「私が魔法をコントロール出来るようになれば、祖父が大事にしていた花を育て、祖父のような魔法を使える庭師になる。

 そうすれば、家族の助けにもなると思い、死に物狂いで勉強した結果、ギリギリ合格することが出来たんです。

 ですが、入ってからも上手くいかないことの方が多くて。魔法のコントロールは二年になっても上手く扱えないまま……、途方に暮れていた矢先、強い魔力を変幻自在に操ることの出来るエイミス様に出会ったのです」


 彼女はそう言うと、お辞儀をした。


「一週間、本当にありがとうございました。

 エイミス様の言葉でようやく私も、これから前を向ける気がします」

「……そう」


 彼女は顔を上げ、でも、と少し視線を彷徨わせた後、意を決したように私を見つめて言葉を発した。


「私、基礎もなってないし、まだまだ魔法をコントロールするには努力が足りないと思うんです。

 だから……、これからも、私にご指導いただけませんか!?」

「え……」


 思いがけない言葉に目を丸くする私に、彼女はもう一度ガバッと勢いよく礼をする。


「お願いします! 私を、エイミス様の側に置いてください!!」

「……」


 まさか、まだ特訓を続けたいというとは思ってもみなかった私は……。


「良いわよ」


 そう口にし、彼女に向かって手を差し伸べる。

 その手を見つめ、戸惑ったように私を見た彼女に笑いかけた。


「その代わり、これからは“ルビー”と呼んで。私のお友達になって」

「そんな……、私なんかが良いのですか?」

「私なんか、なんて言ってはだめよ。あなたはこの私が認めた、強い心の持ち主なのだから。胸を張って、自信を持って」

「……っ、はい!」


 彼女は私の差し出した手を両手でギュッと握る。

 そして、満面の笑みを浮かべて言った。


「どうぞよろしくお願いします、エイミス……、いえ、ルビー様!」

「……“様”も別につけなくて良いわよ?」

「い、いえ!? それは恐れ多すぎます!」

「ふふ、なにそれ」


 そう言って、二人で笑い合うと、寮へと向かって歩き出す。

 そして、ふと思い出したことを口にした。


「そういえばあなた、この前“私のように強くなりたい”と言っていたわよね?」

「は、はい」


 友人になっても相変わらず敬語が抜けないシンシア様だけど、まあ彼女らしくて良いかと笑って口にする。


「それだけはやめておいた方が良いわ」

「え?」


 私の言葉にキョトンとする彼女に向かって、少しおどけて言ってみせる。


「私の強さは、規格外だから。男性にモテないわよ」

「そ、そんなことはないと思います!!」


 全力で拳を握ってそう言い返してくれた彼女に、思わず笑ってしまう。

 そして今度は話題を変え、先ほどの彼女の悩みを思い出して提案した。


「そういえば、あなたの話を聞いた上で提案なのだけど」

第一部分〜登場人物設定〜のその他に、《シンシア》を追加いたしました。

大分登場キャラが多くなって参りましたが、一部ではこれ以上はもう増えないと思われます。

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