表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【11/1コミカライズ連載開始】魔術師の杖 短編集 ネリアとレオポルドのじれじれな日常  作者: 粉雪@『魔術師の杖』11月1日コミカライズ開始!
連載開始四周年記念SS

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/62

お泊まりおでかけ with 副団長⑤

メリークリスマス!

「副団長、ただいまー!」


 図面を見ていた副団長は、顔をあげてギロリとわたしの顔を不機嫌そうににらむ。


「ずいぶん早いですな」


「そんなことないよ。湖まで行ったし、けっこう歩き回ったよ。湖畔のレストランでお茶もしたし」





 コルト夫妻が用意した晩餐はこじんまりしたもので、コルト夫人の隣にカーター副団長が座り、その反対にレオポルドが座る。そしてわたしの隣はコルト伯爵だ。


 副団長は研究棟での昼食とはちがい、かきこむこともなく落ち着いて受け答えしながら、ゆっくりと食事を楽しんでいる。



「散策は楽しめましたか、ネリス師団長」


「はい、とっても!」


 コルト伯爵みたいな年上の穏やかなオジサマとは、仕事ではあまり接しないから逆に緊張する。そのせいかわたしは、ハキハキと答えた。


「ほう、何か興味を引くものがありましたかな」


「やっぱり湖底都市ですね」


 湖のほとりで見つけたお店で、湖底都市にまつわる話をいろいろと聞いた。


 水の中に街がそっくりそのまま沈んでいる。まるで時が止まったみたいに、窓辺に置かれた植木鉢もそのままで。


 そこに住んでいたはずの人々の姿は影も形もなく、ただゆらゆらと揺れる水底で眠るように存在する都市。


「〝大ぼら吹きと幻影都市〟のモデルだと言われている街ですな」


「何それ」


 カーター副団長は知っていることを教えてくれた。


「おとぎ話です。湖の精霊が創りあげたとも言われております。自然が作りだした造形にしては、あまりにも人工的で人が暮らしていたとしか思えない」


「もともと地上にあった街が沈んだとかではなく?」


「いずれにしろ大昔すぎて記録にも残っておりません」


 こっちの世界では精霊には、あまり時間の概念がないらしい。あっちの世界だと発掘で年代を特定することができるんだけど……。湖底に沈む都市なんてすごく気になる。


「ふうん。地層とか街の壁から、年代測定できたらいいのにね」


「年代測定?」


 けげんな顔をする副団長に、わたしは何とか説明しようとした。


「えっとほら、地層とかはできた年代を、ある程度さかのぼれるじゃん。たとえば街の建材は、どこから採ってきたのか調べれば……」


「そんなもの造形魔術でしたら、いくらでも作成できましょう」


「…………」


 願えば叶う魔法の世界で、建物の成りたちを調べることが、こんなに難しいなんて!


 そういえば修復の魔法陣でも、家が再生できるんだもんね。とするとその街がいつできたかなんて、本当にわからないのか……。


「時計塔からならきれいに見えるって、レオポルドに聞いたんだけど」


「ならば明日ですな。幸い天気もいいようです」


「じゃあ今日は早く寝よう」


 にこにこと返事をすれば、コルト伯爵が咳払いをして給仕に合図する。


「いかんな。年のせいか酔いが回ったようだ。今夜はこのへんで休むとするか」


「そうですわね。私もそろそろ……」


「はい、おやすみなさい」


 眠そうなコルト夫妻にあいさつして、わたしも立ちあがる。


「じゃあね、レオポルド」


「まて」


 うなずく彼に手を振って、自分の部屋に戻ろうとすると呼びとめられた。


「なあに?」


「部屋まで送る」


「へ?」


 コルト夫妻と副団長が見守る中、彼は不機嫌そうに立ちあがった。


「あの、まさか……」


 デーダスの家でもやったアレ、ですか⁉


「当然だろう」


 彼の大きな手が伸びてきて、ぐわしっとわたしの肘を捕まえた。


「では、失礼する」


 そっけなくコルト夫妻にあいさつして、彼はそのままずんずんと歩きだす。


 連行!連行だからこれ!





 ふたりを見送って、コルト夫人がそばにいた錬金術師に話しかける。


「……カーター副団長」


「はい」


「おふたりは……その、どのような?」


 副団長は貴婦人とのしゃれた会話術などは、とくに学んでいなかった。


「ま、見ての通りですな。仲が悪そうには見えませんが」


 見たまんまを答える。コルト夫人は夫を見あげた。


「どうしたらいいかしら」


「さて」


 首をかしげる夫を見て、コルト夫人はため息をつく。こういうときに夫は頼りにならない。夫人はふたたびカーター副団長に向きなおった。


「手助けは必要かしら?」


「ふむ」


 副団長はもったいぶって、あごに指をあてる。


「私が魔術師団長にちょっと聞いてみましょう。何、こう見えて彼からはよく相談を受けるのです」


「まぁ、さすがですわね!」


 コルト夫人がパアッと笑顔になり、副団長は気分よく歩きだした。





 クオードはすぐにレオポルドを見つけた。彼女を部屋に送り届けて、自分の部屋に戻るところらしい。スタスタと長い脚で歩くうしろ姿を、副団長は小走りで追いかける。


「魔術師団長!」


「?」


 ふり向いた銀髪の男に追いつき、副団長は息を整えた。


(まったく……追いつくのに息切れがするとは。ぐっ、鍛えねばならんか……)


「き、聞きたいことがありまして」


「なんだ」


「ネリス師団長のことですが、あなたからはどういうふうに見えているので?」


 銀の魔術師はちょっとだけ首をかしげた。


「繊細な砂糖細工の花……だろうか」


「はい?」


 カーター副団長は自分の耳を疑った。


「ふれると壊れてしまいそうで……」


「ふれると壊れる?」


(……あの師団長が?)


 カーター副団長の目から見ても、ネリアは元気いっぱいで威勢がいい。


「ええと、だれの話をしているので?」


「彼女のことだが」


「そう、ですか」


「それだけか?」


「はい」


 レオポルドはそのまま自分の部屋に入り、廊下に残されたカーター副団長は首をひねった。


「壊れそうな、繊細な砂糖細工の……花?」


(……あの師団長が?)


 カーター副団長はレオポルドの目を検査したくなった。


インプレス社にて20冊、サインしました。

緊張で線がぶれたり、スタンプの向きを間違えたのはお許しを。

挿絵(By みてみん)

本を9冊出させて頂いた感謝の気持ちを、何かの形で表したかったのです。

企画に応募や拡散でご協力頂き、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者にマシュマロを送る
☆☆11/1コミカライズ開始!☆☆
『魔術師の杖 THE COMIC』

『魔術師の杖 THE COMIC』

小説版公式サイト
小説版『魔術師の杖』
☆☆NovelJam2025参加作品『7日目の希望』約8千字の短編☆☆
『七日目の希望』
☆☆電子書籍販売サイト(一部)☆☆
シーモア
Amazon
auブックパス
BookLive
BookWalker
ドコモdブック
DMMブックス
ebook
honto
紀伊國屋kinoppy
ソニーReaderStore
楽天
☆☆紙書籍販売サイト(全国の書店からも注文できます)☆☆
e-hon
紀伊國屋書店
書泉オンライン
Amazon

↓なろうで読める『魔術師の杖』シリーズ↓
魔術師の杖シリーズ
☆☆粉雪チャンネル(Youtube)☆☆
粉雪チャンネル
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ