それぞれの価値観
さて、今、俺に出来ることは無いな。
ダン誘って狩りに行こう
「そろそろ狩りに行こうよ」
「そうだなちょっと早いが行くか」
二人で狩り行く。昨日みたいに森の奥までは行かずにウサギとか出る辺りだ。
「毎日肉ばっかりだと飽きてくるね。魚とかいないの?」
「もう少し先に行ったら池があるぞ」
池か、どんな魚がいるんだろ?
「フナとかナマズならいるけど釣り道具がないから罠仕掛けるか潜って捕まえるしかないな」
フナは嫌だな泥臭そうだ。
ナマズは蒲焼きにしたら旨いそうだが醤油がないからタレ作れんしな。
醤油とか味噌とかどっかにないかな?
「罠作って仕掛けておくか?」
「いや、やめとく。不味そうだし」
「焼いたら食えるぞ」
「臭そうだから止めとく」
「そうか、ぼっちゃんは臭いのするやつ苦手だったな」
「魚食べたかったんだけどな。どっかに違う魚いるとこないの?」
「北にある湖まで行くとマスとかいるけどちょっと遠いぞ。それに上流の川まで行くならまだしも湖だと魚がいる場所まで竿が届かん」
この世界はのべ竿しか無いのかな?
「リールは無いの?」
「リール?なんだそりゃ?」
「糸が巻いてあって遠くまで飛ばせる道具だよ」
「いや、見たことねぇな」
そうかこの世界にはリールが無いのか。おやっさん作れるかな?
「今日はウサギでいいや。1匹だと足りないから2匹はいるね」
「そうだな2匹狩ったら戻ろう」
サクサクとウサギ2匹を狩って戻った
3人でウサギをた食べながらミゲルに聞いてみる
「親方は釣竿作れる?」
「そんなもん竹で十分じゃろが?」
「遠くまで飛ばせる竿が欲しいんだけどね」
「遠くまで飛ばせる竿?どんなやつだ?」
ガイド付きの竿、出来れば振り出し竿か2ピースとかに別れるタイプ。それとスピニングリールを地面に描いて説明した
「竿はなんとかなるかもしれんが、リール?っちゅうのは難しいな。兄貴に相談してみたらどうだ?」
「そうだね、今度おやっさんに相談してみるよ」
昼飯食ったあと、剣の稽古をする
身体強化魔法で切ってしまった板の代わりをダンが作ってくれていた
縦、斜め右上、縦、右斜め左上と剣の切り返しを意識しながらスピードを落としてやってみる
お、出来た!
少しずつスピードを上げて剣を振っていく
「ぼっちゃん、出来てるじゃねーか」
「剣の切り返しを意識しながらやってみたら上手くいったよ」
「おう、上等だ。後は無意識に出来るようになれば次の段階だな。しかし、覚えるの早ぇーな」
「まだ小さいから物覚えが早いんだよ」
「そ、そうだな・・・」
なんで小さい内のほうが物覚えが早いの知って・・・ ぶつぶつ
あ、なんか怪しまれたな。聞かれたらお告げのせいにしておこう
「それよりさっき話してた竿とリールってのだが?あれもお告げか?」
そうそうお告げ、お告げ。不思議な事は全部お告げのおかげ。
「そうだね、もっと遠くまで飛ばせたら良いのにって思ったら閃いたんだよ」
「そ、そうか・・・」
まだぶつぶつ言いながらベント用の木剣を作りだした。10本くらい作るようだ。
木剣を作り続ける横で俺も剣を振り続ける。
かなり集中しながらやったのでくたくただ。しかも汗びっしょり。
うへ、気持ち悪い
「ダン、そろそろ稽古終わっていい?」
「そうだな、こっちも木剣出来たから終わるとするか」
「もう汗びっしょりなんだけど、冒険者はこんな時拭くだけなんだよね?遠くまで行ってる時とか大変だね」
「そうだぞ、どんどん服も臭くなるし、特に夏場や蒸し暑い洞窟とかは地獄だ」
「人からも獣臭しそうだね」
「まぁな。慣れてくるとはいえ、気持ちのいいもんじゃねぇ。魔法使いがパーティーにいると便利なんだがな」
「便利?水魔法とかで洗うの?」
「いや、そういう奴もいるが、ぼっちゃんみたいに水も風も両方使えるやつは少ねぇからな。クリーン魔法ってのを使える奴がいるんだよ」
「クリーン魔法?」
「ああ、身体の汚れを落とす魔法だ。ついでに服や鎧も綺麗になるみたいだ。クリーン魔法使えたら女性メンバーがいるパーティーに引っ張りだこだぞ」
へぇ、そりゃ良いこと聞いた。この汗べちゃべちゃなのがスッキリするんだ。それはやってみなくては
え~、身体の汚れを取るイメージを持って魔力を注ぎこむ
お、なんか身体がさっぱりし始めたぞ。もう少し強めて・・・
「いだだだだっ! ヒールっ ヒールっ!」
「ど、どうしたぼっちゃん?」
はぁはぁ、めっちゃ痛かった。全身の皮膚持ってかれるかと思ったぜ。
クリーン魔力って地味に恐ろしいな
「プッ、なんだぼっちゃん。その頭は?」
だーっはっはっはと大笑いするダン
えっ?頭?
頭を触るとツルッとしてる
「か、髪の毛が・・・ない」
髪の毛だけでなく眉毛もまつ毛も全ての毛が無くなっていた
皮膚だけで無く全身の毛が持ってかれてしまったようだ。
「ぼっちゃん、迫力増したじゃねーか!? 街中でゴロツキも逃げ出すぞ」
そう言って大笑いを続けるダン
くっそ、大笑いしやがって
「えいっ!」
「いだだだだだっ!痛えっ!全身が痛えぇっ!!」
「ヒールっ」
「何しやがんだっ!」
「いや、ダンって毛深いから暑いんじゃないかなって思って脱毛してやったんだ」
「だ、脱毛? あぁっ!毛が・・・毛がねぇっ!」
「これでお揃いだね!」
「てめぇ、この野郎!」
「うわぁ、怖そうなおっさんが怒ったぁ~」
俺は笑いながらミゲルの方へ走っていった
ビクッ
「な、なんじゃお前ら。その頭はどうした?変な病気とかじゃないだろうな?」
毛の無い二人に怯えるミゲル
病気を疑われたのでクリーン魔法をやり過ぎた事を説明した
「ったく、お前らはろくなことせんな」
「俺はなんもしてねぇっ!」
「かわいそうな2歳児を笑ったじゃないか」
「笑ったくらいでこんなことするか?それに普通の2歳児はこんな事しねぇ!」
言い争う二人
「いい加減にしねぇかっ!」
「それより、今日の作業は終わったから帰るぞ」
そうして3人は森を後にした
ミゲルはおやっさんの所に寄ってから帰るらしい。
親方と別れたスキンヘッドの眉なし大男と2歳児が道を歩くとモーゼよろしく人が割れて歩きやすかった
屋敷に着くとすぐさまアイナの元へ
「奥様、ぼっちゃんが、ぼっちゃんがひでぇんでやすよ」
ちょっと泣きながらアイナに言い付ける
「あら、あなた達ずいぶんスッキリしたわね」
動じないアイナ。元英雄パーティーメンバーは伊達じゃない
クリーン魔法のやり過ぎて毛が抜けてしまったことを説明して治癒魔法を掛けてもらう
ぶつぶつ「ヒールっ!」
まずはダンの頭髪と眉毛、まつ毛を生やして貰った
「お、奥様、腕や胸毛も・・・」
「あら、スッキリしててそのままの方が素敵よダン」
「お、男らしさが・・・」
ダンの価値観は毛深い事=男らしさのようだ
「さ、次はゲイルね。あら触り心地良いわね」
頭をツルツルと撫でる
ぶつぶつ「ヒールっ!」
眉毛とまつ毛が生える
「あれ?髪の毛は?」
「眉毛とまつ毛が無いと可愛くないから生やしたわよ」
「か、母さん、か髪の毛は・・・?」
「あら?ツルツル頭も可愛いわよ。手触りもいいしこのままでいーわよ」
ツルツルと撫でるアイナ
あ、あんまりだ・・・
「ママ、髪の毛・・・」
「あら、ママだなんて、ますます可愛いわっ」
ツルツル、ツルツル
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
人の価値観は様々だった




