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ぶちょー、今度の人事異動は異世界ですって  作者: しゅーまつ


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俺を待っていた

その夜から魔力総量アップの特訓再開だ。魔力回復力が上がって0→1にするのに失敗することが増えたので以前より効率が悪い。0になった瞬間に魔石から吸わないと気絶するのでそのタイミングを狙うのだがピッと回復して0になってないのに魔力を吸ってしまったりするのだ。


しかし、面倒臭いとは言ってられない。強い魔物は魔力が高いものを狙う可能性が高い。初めてトカゲが俺を襲って来た時は俺の足元に貯まっていたコウモリを狙ったと思ってたが、おそらくあれも俺を狙ったのだろう。次のトカゲ、特変異のオーガも俺を狙ったからな。


ダンの守るべき対象だったお姫様。もしかしたら魔力が高くてオーガに狙われたのかもしれない。なんせ骨になってまでダンと再会するまで頑張ってたんだからな。思念か魔力かまではわからんけど。


考え事をしながら0→1を繰り返す。


目標は魔力総量9000だ。取りあえずここまで持ってくれば世界最高峰だからな。


と思ってたら魔力7000で0→1をしても魔力が増えなくなった。


マジかよ・・・


どうやら俺の魔力上限は7000らしい。


あー、残念。これが人間の限界値なのかもしれん。鑑定でも自分の種族はハイエルフではなく人間のままだ。グリムナよ残念だったね。魔力7000になってもハイエルフにはならなかったよ。


残念でもあり、どこかほっとしたような感じもありだな。寿命何百年とかやってられん。もしこの世界で結婚して子供が出来ても子供や孫を何回も見送るハメになるからな。


ふとエルフやドワーフがあまり人間と関わりを持とうとしなくなったのは仲良くなった者を見送り続けるのが辛かったからかもしれないな、とか考えながら寝てしまった。



翌朝、飯を食いながらアーノルド達がいつまで王都にいるか聞いてみる。闘技会の準備とかあるだろうからな。


「ジョンの卒業式があるからな、それが終わったら帰るぞ」


「いつなの?」


「明後日だ。」


ぜんぜん知らなかったよ・・・


「そうでしたか。では祝いのパーティーをしないといけませんな。」


コックの研修をしてくれていたシュミレが聞いてくる。


「ジョンだけでなく、アルも一緒に祝ってあげたいね。そうするとエイブリックさんところの方がいいかな?」


ジョンだけならここでとなるけど、アルも一緒にお祝いしてやりたいな。


「この時期はヨルド様達は社交会の準備等もありますからな。もしご迷惑でなければこちらでお願い出来ませんでしょうか」


それもそうか。


「父さん達暇でしょ?エイブリックさんにここで二人の卒業祝いをしたいって伝えておいてくれないかな?」


「構わんぞ。エイブリックは呼ぶのか?」


あ、そうか。そうするとドン爺も来たがるかな?


「来れそうなら来てもらって。あとドン爺も」


「お前、ここに王を呼ぶつもりか?」


「ダメかな?まぁそれはドン爺に任せるよ。呼ばないと拗ねそうだし」


「ったく、お前は王の立場を理解してなさすぎる。」


「じゃ、父さんの判断で呼ばないってことで」


「俺が悪者になるじゃねーかっ!」


「だから判断はエイブリックさんに任せればいいんだよ。宜しくねぇ」


立ってるものは親でも使えとはよく言ったもんだ。面倒臭いことはやって貰おう。


アーノルドはジョン達にも祝いのパーティーをすることを伝えておいてくれるとのことだったのでお願いしておいた。


シュミレはこの祝いのパーティーを見届けてエイブリック邸に戻る事になり、研修に来ていた娘達は街の料理教室で実践研修として仮の店をやることに。場所は小熊亭の近くの建物だ。ミーシャとサラはそこで接客員指導を行う。



俺達はいつもの紋章屋にエルフとドワーフ達がここへやってくる時の為に貴章を作ってもらいに来た。


「はい。すぐにお作りいたします。一つ銀貨5枚になります。」


この値段が妥当か割り引いてるのかわからんがまあいいか。


取りあえず100発注だ。余るだろうけどね。


金貨5枚を渡すと相談があるとのこと。


「西の街で紋章屋を開かせてもらえませんか?」


「街で紋章屋なんてやっても客こないんじゃないか?」


「いえ、新しい店がたくさん出来ると伺いました。貴族向けの紋章屋ではなく、店の紋章屋をやりたいのです。後は店の看板とかのデザインとか。」


なるほど。


「お前、絵とか描ける?」


「はいっ!そういう仕事が好きなんです」


「この店どうすんの?」


「ここは父親の店ですから、独立ということになりますね」


「継がなくていいのか?」


「父親も好きにしたら良いと言ってくれましたので大丈夫です」


「わかった。店は賃貸かそれとも買い取りか?」


「は、初めは賃貸で・・・」


ふむ。紋章屋とか裏のメインストリートでもなくていいからな。役所そばがいいか。


「じゃ文官に伝えておくよ。この店の規模くらいでいいよな?」


工房付だと嬉しいとのことなので了承しておいた。



次にロドリゲス商会だ



「こんちはー」


「ぼっちゃん、お久しぶりでございます。」


「あれ?ザックここで何してんの?」


この前ディノスレイヤ領でエイブリック宛の手紙を出しに行った時いないと思ったらこんな所に居やがった。


「勿論、王都の出店準備ですよ」


「もしかしてお前が新店の店長すんの?」


「はい、貴族向けでなく庶民街なら大丈夫だろうと。商会長からぼっちゃんにしごいてもらえと言われています。」


あの話の長い親父め・・・


「どんな店にするつもりなんだ?」


「ディノスレイヤ領と同じ何でも屋です。」


「肉屋、八百屋、酒屋は元からあるところ使うぞ」


「そうなんですよねぇ。個人向けか商売人向けの店にするか迷ってるんです」


まだ決めてないのか。大丈夫か?



「ぼっちゃん、お帰りなさいませ。どうぞ中へお入り下さいませ」


店の前で立ち話をしている俺達を中に案内してくれる大番頭。こういうところがザックには欠けてるんだよな。


「先程のお話ですが、うちの中に皆さんに店を構えてもらえないか打診しようと思っているのです。競争するより共存の方が宜しいかと。」


「どうやるの?」


「はい、うちは西の街での仕入先が弱いというかありません。ディノスレイヤ領から持ってきたものだけでは何でも屋としての店は難しいでしょう。」


そうだよね。


「競争相手は西の街の店では無く、他の街の店だと思っております。ですので元の店と協力していけないものかと」


商会としての力はロドリゲス商会の方が上だ。だが地元の結び付きは元の店の方が上。なるほどね。お互いの強みを生かして他の街と競争するつもりなのか。


それに庶民街に定期馬車が走り出す。そうなれば他の街からも買い物に来るかもしれないな。


「わかった。元の店に変に誤解されないように俺が間に入った方がいいみたいだな。」


俺と懇意にしているからといって大型店舗が我が物顔で仕切りだすと面白くないだろうからな。大番頭は俺が帰って来るのを待って行動するつもりだったみたいだ。


「ぼっちゃんにはお手数をお掛け致しますが、必ずや庶民街で一番の店にして行きますので何卒宜しくお願い申し上げます」


うん、やっぱやり手だな大番頭。ザック、ちゃんと見習えよ。



後日、街の肉屋達とロドリゲス商会と商談をすることになり、用件はここで終了。


小熊亭に顔を出してから帰ろうと寄ったら、南の作業服屋から来たショールが親の店を西の街に移転したいと行ってきた。コック服やメイド服の需要が大幅に増えそうな西の街。今のうちに南の店を高値で売ってこちらに来たいとのこと。こちらとしても大助かりだ。すでに庶民向けの安価な制服とかを考えているらしい。職人達も一緒に連れてくるとのこと。


後はジャックとコボルト達との家の場所を決めたり、西の街にやって来た馬車や馬を預かる場所を決めたり、バス停ならぬ馬車停なんかをあらかた決めて屋敷に戻った。


ジョン達の卒業式の日にうちでパーティーをやることが正式に決定し、エイブリックとドン爺も参加するらしい。一応お忍びで来るみたいだが当日は慌ただしくなるだろう。ヨルドとパティシエのポットがヘルプに来ると聞いたが、それならエイブリック邸の方が良かったんじゃないかとも思う。


王家の馬車がここに出入りすると目立つから俺の馬車でドン爺とエイブリックを送り迎えするとのこと。ダンに送迎をやって貰おう。トムだとなんかあった時に対応出来ないからな。



執事のカンリムにお忍びで王が来ると伝えたらいつもは感情が外に出ないのに、さすがに震えていた。


まぁ、俺が居なかった間の使用人達の成長を見せてくれ。


カンリムをはじめ、使用人達は当日が終わるまで眠れない日々が続くのであった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 使用人達の雑談の話好きなんですが 王様来ちゃうとか・・・楽しみです。
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