俺は討伐王になるっ!
「父さん、料理人の募集どれくらい来てる?」
「20人くらい来てるぞ」
結構集まったな。
「5日後の昼前にぶちょー商会でテストするって通知してくれる?」
解ったと言うことなので商会へ向かう。
「おはよー親方。進み具合はどう?」
「坊主か、昨日は冷めた焼肉丼ありがとうよ。」
イヤミかお礼か判断に迷うな・・・
後は内装だけらしい。机とか椅子、看板はその後だ。
「焼きたてはさぞ旨かったんじゃろな」
あ、イヤミの方だったか・・・
一応どういたしましてと言っておく。
「おやっさん、おはよー」
まったくミゲルの奴はいつまでもグチグチと・・・
「おやっさん?」
「おう、坊主来たか。」
どうやらミゲルはずっとグチグチと拗ねてたらしい。
「ファムとサイトを連れて森に行く前にミサと打ち合わせしたいんだけど」
「まだ寝とるぞ。あいつら帰って来てからさんざん飲みやがってな。ワシは先に寝たがどうやらさっきまで飲んでたみてーだ」
じゃあ今日は無理だな・・・
長旅の疲れも出てるだろうしこのまま寝かしとくか。
「じゃあ今日は無理だね。明日はちゃんとしろと言っておいて。」
「起こさんでいいのか?」
「ヘロヘロでやられても無駄だからね。今日はやめとくよ」
明日もこんなんだったら追い返すとドワンはちょっと怒っていた。
ドワンもミゲルもどれだけ飲んでも次の日は起きて来てたからな。
「どうしようね?今日はすること無くなっちゃった。」
「久しぶりにゴブリン狩りでも行くか?それとも冒険者学校でも覗いてみるか?」
「あ、そうだね。まだ見てないから冒険者学校に行ってみよう。おやっさん、俺達冒険者学校を見に行って来るよ」
こうして俺達は冒険者ギルドに向かった
「こんちはー!」
「ようこそ冒険者ギルドへ。どのような依頼ですか?」
この受付の人ダンの顔を知らないみたいだな。新人かな?
「依頼じゃなくて冒険者学校を見学したいんだけどいいかな?」
「冒険者学校?僕にはまだ早いんじゃないかな?後ろのお父さんもダメですよ。こんな小さな子供を冒険者にしようなんて」
「いや、どんな所かちょっと見たいだけなんだけど。冒険者にはなるつもりはないから」
「僕、冒険者学校は冒険者になった人か冒険者を目指す人が行くところなのよ。遊びに行くところじゃないの。わかる?」
あー、なんて説明しようか
「受付のお嬢さん、チラッとでいいからぼっちゃんに見学させてやりてぇだけなんだ。すぐ帰るから案内してくれねぇか?」
「ぼっちゃん?という事はお父さんじゃないんですね。無責任ですよ、こんな小さな子を冒険者学校に入れようとするなんて」
「いや、学校に入れようとしてるわけじゃ・・・」
ギルドに併設されている飯や酒が飲める所からヒソヒソ声が聞こえてくる。
(おい、あれトゲチビとか呼ばれてるやつじゃねーか?)
(昨日ドワーフの女と馬に乗ってるの見たぜ)
(噂じゃ強いのは武器屋の親父とあのデカイのだろ?)
(チビの癖に偉そうにしてやがるよな)
(あのデカイのも引退したやつだろ?強いってのも昔の話だ)
(オッサンがいつまでも偉そうにするなってんだよな)
(チビはママのおっぱいでも飲んでろってんだ)
(ここの奴等はあんなチビとオッサンにびびってるのか?)
(何が冒険者の町だ、へたれの町の間違いじゃねーのか)
(きゃはははは)
全部聞こえてるぞ
「いい、僕。ここは柄の悪い冒険者もいるのよ。僕みたいな子供が来るところじゃないわ。」
「柄の悪い冒険者って、あそこでたむろしてる依頼にあぶれて無駄口叩いているようなやつらのこと?」
「おい、ぼっちゃん」
「討伐依頼残ってるのにここにいるって事は採取専門かな?腰に立派な鎌ぶら下げてるから。あ、薬草採取が残ってるよダン教えてあげなよ。」
一番笑ってた一人が近付いてくる
「よう、チビ、お前が言ってるのは俺達のことかな?」
こいつらからか・・・
ダンも気付いてもう俺を止めるのを止めた
「自覚あるならそうじゃない?ほら、薬草採取が残ってるよ。今から行けば今日中に帰って来れるよ」
「お前がエラソーにしてるのはこいつが隣にいるからだろ?引退したオッサンにいつまでも期待してんじゃねーぞ」
「ふーん、お兄さんダンより強いんだ?だったら何でこのオークとかの討伐に行かないの?」
「そんな弱い魔物の討伐なんざ新人に任せてりゃいいんだよ。いちいちうるせーぞチビ」
こいつら20歳前後くらいだろうか?仲間もそれくらいだな。ニヤニヤ笑いながら見てやがる。
「おい聞いてんのかチビッ」
ゴンっと俺を蹴りやがった。ダンは俺が避けると思って止めなかったが俺は避けなかったので蹴られた。
それを見てダンは剣を抜こうとするのを止める。
「やだねぇ、自分より弱そうなのにしか絡めないなんて。オークにはビビるけど俺みたいな子供にしか強がれないんなら冒険者辞めたら?他に仕事たくさんあるよ」
「おいおい、チビ、あんま俺達ブラックドラゴン様を舐めてんじゃねーぞ。そこのデカイやつもビビって剣も抜けねーみたいじゃねーか。」
ダンが剣を抜かなかったことでぞろぞろと他のやつらもやってきた。
全員から同じ気配がする
受付嬢はオロオロしている。こういう時新人って冒険者から舐められるんだよね。
「知ってる?コボルトって弱い奴が吠えるんだよ。冒険者も同じだね」
「クソ生意気なガキが・・・」
こいつら剣に手を掛けやがった。やはりろくでもないな。
「何?その剣で切るつもり?やめといたら?そんななまくらじゃ薬草も切れないよ」
「こいつ、もう我慢ならねぇ」
あーあ、抜きやがった。
ダンの気配が一瞬で消えたじゃないか。討伐決定だな。
「何やっとるんじゃきさまらっ!」
あ、ギルマスだ!?マーベリックだっけ?受付嬢が呼びに行ったんだな。
「ん?ダンと・・・アー」
アーノルドと言い掛けたギルマスにシッと黙るように合図する。
「うるせぇ、片足のねぇポンコツギルマスは引っ込んでろよ」
ギルマスにまでこんな態度とるのか?どこから流れて来た奴らだ?
「ギルマスさん?冒険者学校を見に来たらダメだって言われてね。そしたら名前だけ大層な弱っちいやつに絡まれちゃってさ。俺が思うに人に化けたゴブリンだと思うんだよね。討伐しようと思うんだけどいいかな?」
「こいつっ」
「坊主、裏の練習場ならいいぞ。」
「ちょうどいいぜ、知ってるか?チビ、ギルドの練習場は相手が死んじまっても人殺しにならねぇんだぜ」
「ダン、そうなの?」
「事故として扱われるな。」
それか、こいつら今までもやってるな。気配察知が出来るようになったのと、盗賊討伐を何度もやったから気配で解る。合法的にやってたから盗賊と少し気配が違うんだな
ギルド裏の練習場に案内された
「ギルマスさん、他にもタチのわるい冒険者いる?」
「あそこで飲んでた奴らもそうじゃな。」
「じゃあ呼んできて見学させて。」
職員に命令してそいつらを連れて来た。今来た奴らからはそこまで気配を感じない。ギリギリ一線は越えてないようだ。
「おい、チビ。お前殺されるのをこんなに大勢に見て欲しいのか?」
「遺言はそれでいいか?」
「はぁ?何言ってんだクソチビが」
「ぼっちゃん、刀と剣どっち使うんだ?」
「そこの練習用の木剣でいいよ。おやっさんの剣やリッキーの刀だと何されたかわかんないでしょ。」
「いいのか?俺がやるぞ」
「いや、ここは冒険者の町だからね、父さんの息子がそれを証明するよ。ズル賢いゴブリンは討伐されるってね。」
やり過ぎんなよと言われたがそれは知らない。
「まだごちゃごちゃ言ってんのか?今さら止めてやんねーぞ」
「ゴブリンが生意気にしゃべんな。おい、見学してるお前ら。今からゴブリン討伐する。心して見ておけ」
ざわざわざわざわ
「死ねっ!」
開始の合図を待たずにブラックドラゴンの奴らが切りかかってくる。5人パーティーで全員剣使いみたいだ。
1匹目
振りかぶった奴に踏み込み顔面に遠慮なく木剣を叩き込む。骨の砕けた感触が手に伝わってくる。
2匹目
後ろから切りかかってくるのをしゃがんで避けてスネを折る。お前ギルマスに足がないポンコツとか抜かしてたよな?
3匹目
その横にいた奴の顎を砕く
3人を瞬殺した所で残り2人がヒッと悲鳴を上げて止まる
「お前ら逃げたらもっと酷い目にあうからな」
そう言ったのにうわぁぁとと逃げやがったので足と腕を串刺にして逃がさない
「うぎゃぁぁぁぁ」
「忠告してやっただろ」
耳元で囁くと漏らしやがった
「見学しているものに告ぐ。ここは冒険者の町だ。こいつらは事故に見せかけて他の冒険者を殺してきた。そんな奴はゴブリンよりタチが悪い。よって討伐した。ここでは人に剣を向けた奴はゴブリンと見なす。覚えとけ」
タチが悪いと言われた見学者に向かってそう言っておいた。これで一線も越えないだろうし、抑止力になる。
討伐証明として全員の右耳を木剣で切り落とした。
土魔法を解除するとダンが全員をひとつにまとめる。
「ギルマスさん、こいつらの処分任せていい?他でもやってるはずだから」
「大蛇討伐した腕は伊達じゃねーな、いい踏み込みだった。後は任せておけ。」
お願いねーと言って練習場を去ろうとしたらドワーフ5人衆がアワアワしていた。今のを見ていたらしい。
「げ、ゲイル君 い、今の・・・」
「あいつら酒臭くてね、それに絡んで来たから討伐しておいた。朝まで飲んでて寝てないんでしょ?大丈夫?酒臭いよみんな」
俺がそう言うとバッとみんな口を押さえた。
「明日からちゃんとやるから。あんまり飲んじゃダメだよ」
俺がそういうとブンブンと首を振っていた。
ギルドに入ると受付嬢がひたすら謝って来た。
「いいよ気にしないで。俺みたいな子供があんな風に言ってきたら当然の対応だからね。でも受付嬢は冒険者に舐められたらダメだよ。」
「はいっ」
と姿勢を正して返事した。
ギルドを出てさあ行こうか・・・?
「ぼっちゃん、冒険者学校どうすんだ?」
あ、そうだった。
もう一度ギルドに入るのはとても気まずかった




