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66 西の森から東の森へ

 妖精さんに蜜を渡したら、森の安全地帯へと道案内してもらえることになりました。



 蜜狂いのペロリストを量産させるばかりだった私の蜜だけど、こういうときは役に立って良かったよ。



 きっと、妖精さんも甘いものには目がなかったのでしょうね。

 ちょっと蜜を見つめる様子がおかしい感じもするけど、多分気のせいでしょう。



 三人で今いる西の森から、東の森へと移住します。



 移動方法はやっぱり空を飛んでいくのが手っ取り早いので、魔女っこに鳥へ変身してもらう。


 変身する姿を見た妖精さんが、物珍しそうにしながら私に話しかけました。


「やっぱりこの子、魔女でしょ?」

「……よく、わかった、ね」

「魔女の一人や二人くらいは見たことあったからね。それにしてもハグレ魔女とは珍しい」


 どうやらこの妖精さんは色々と物知りみたい。

 もしかしたら意外と長生きなのかもね。




 白い鳥さんに運ばれて、森の上を飛びながら移動します。


 妖精さんは自分で飛ぶのが面倒になったのか、さっきから私の頭の上に居座っている。

 小さくて軽いから別に問題はないけど、耳の近くから話しかけられると少しうるさい。



 それにしてもこの妖精さん、小さくてかわいいね。


 幼女アルラウネになってから、私よりも小さい生き物とはそう出会わなかった。

 そのせいかお人形として飾りたくなるほど、妖精さんがかわいく見えるの。

 


 頭上の妖精さんが気になって上を向いてみると、遥か上空からなにかが落ちてくるのが見えます。


 いや、落ちてくるというよりは、大きな鳥が急降下している光景。


 それは、この森に来るときに目撃した、大鷲(おおわし)型モンスターのベギーアデアドラーでした。


 巨大な怪鳥が、私たち目掛けて突進してきているのだ。



「逃げて!」


 私が叫ぶと、魔女っこと妖精さんは上空の大鷲に気がつく。


「しまった、あいつに見つかっちゃった!」


 妖精さんの慌てる声が耳元から聞こえてくる。


 白い鳥さんは必死に飛んで逃げようとするけど、相手が悪い。

 なにせ、前世の日本で空を飛んでいた旅客機のようなボリュームのある大鷲なのだ。


 聖女時代にもこのベギーアデアドラーは見たことあるけど、その時のと比べるとかなり巨大だよ。



 大鷲の大斧のようなかぎ爪が近づいてくる。

 このままでは捕まってしまうか、あの鋭そうな大きな爪に裂かれてしまう。



 これは逃げ切れないと判断した私は、大鷲の方へと数本の蔓を伸ばします。

 その先端からマンイーターの花を咲かせて、ベギーアデアドラーへと毒花粉を噴射です。


 毒花粉をくらいなさい!



 けれども、大鷲が翼でバサリと強烈な風を起こすと、毒花粉はあっというに霧散してしまった。


 そ、そんなぁあああ!

 あんなに大きな翼で風を起こされてしまったら、私の毒花粉は当たらないよー!



 けれども、その強風は私たちに吉となったの。


 風にあおられて、私たちはそのまま森の中へと吹き飛ばされてしまいました。


 

 森の中に墜落する白い鳥さん一行。


 蔓を近くの木の枝に絡ませて、緊急着地を試みます。

 なんとか地面に叩きつけられずに済んだみたい。



 森の上空から、大鷲のグワッグワッという鳴き声が聞こえてくる。

 まだ私たちを探しているのかもしれないね。




 茂みの中へと移動して身を隠していると、遠くで何かが光りました。


 まるで落雷の時にピカッと空が光った感じ。

 空は快晴だったのに、雷が落ちるなんて珍しいね。


 その光に反応したのか、大鷲はどこかへ飛び去っていきました。

 どうやら私たちのことは諦めてくれたみたい。



「なんとか逃げ切れたみたいね」


 妖精さんが安堵のため息をつきます。


 そういえば、さっき妖精さんは「あいつに見つかった」と言っていたし、ベギーアデアドラーのことを知っているような口ぶりだったね。



「あの、大鷲、この前も、見た」

「あいつはこの森をいつも見張っているの。だから気をつけたほうが良いよ」

「私たちを、狙って、いたの、かな?」

「…………さあ。普通にお腹でも空いていたんじゃないのかしら」



 なんだろう。

 今の妖精さんの口ぶりはちょっと怪しい気がする。


 何かを隠しているような気がするよ。

 

 そういえばこの妖精さんは、カエルのモンスターに食べられていた。

 そして今も、大鷲のモンスターに襲われた。


 もしかして妖精さん、モンスターに狙われているのかな?



 実は妖精って美味しかったりして……。 


 いや、私は食べませんよ?


 さすがにいくらなんでも妖精までは栄養にしませんから。

 痺れ薬つきの茨で捕まえて、下の口で丸呑みすれば一瞬で消化できそうとは思うけど、実行なんてしないからね。


 私は妖精さんよりも熊肉が好みなの。

 クマさんは大きいから食べ応えがあるよね。



 私が妖精さんを眺めながら(たかぶ)る食欲を抑えていると、妖精さんは上を向きながら静かに言いました。


「あたしから忠告できることはただ一つ。この森で長生きしたければ、あの鳥には気をつけることね」


 それは間違いないね。

 この先の生活でも、あの大鷲には注意が必要そう。




 アクシデントはあったけど、それからも私たちは東の森へと移動を続けます。

 

 空から狙われないように、念のため森の中を低空飛行しながら進んでいくことにしました。



 しばらくすると、急に森の木々が明るくなる。

 どうやら森の東側と西側で森の色が違うみたい。



 東側は、なんだか活気があって開放的な雰囲気。

 対して、さきほどまで私たちがいた西側はどこも物騒で薄気味悪い感じがした。


 ここまで森の雰囲気が違うなんて、不思議な気がするね。




 東の森へ着くと、私たちは一度川に水浴びをしに行きました。


 三人とも、カエルの粘液でベトベトのままなの。

 しかも魔女っこは、私のモウセンゴケの粘液もついたままだから二重でべっとり……。


 女の子を粘液まみれにしてしまったのは生まれて初めての経験だったので、非常に申し訳なく思うのです。


 元聖女として、いったい何をしているのかと悲しくなるの。

 多分だけど、女の子を粘液まみれにさせた聖女は王国史上私が初めてだと思う。本当にごめんなさい……。



 ともかく、やっぱりべたべたしたままの体は嫌だよね。

 それは魔女も、植物も、そして妖精も同じだったみたい。

 


 妖精さんが服を脱いで川にじゃぷんと飛び込んでいった。


 私は魔女っこに抱きかかえられたまま、一緒に川へと入ります。

 二人一緒に水浴びです。


 ついでに、私は水分補給も済ませることができたからラッキーだったの。

 お水おいしい。




 川から移動した私たちは、さらに東へと移動する。

 塔の街がとても近くに見えるようになった辺りで、地面へと着地します。



「住むならこの辺りがオススメね」


 妖精さんに案内された場所は、大きな岩がある場所でした。


 後ろ側に岩があって、前面にだけ外敵からの注意を向けることができそう。

 少し移動すれば小川も流れているから、水分補給もできる。

 

 万が一のときは、魔女っこに飛んでもらって岩を飛び越えて逃げることもできそうだね。

 


 そろそろ日が暮れてくる。

 他の場所を探すのも大変だから、とりあえずはここに住んでみましょうか。

 

 私たちがここに住むことを告げると、妖精さんは私の頭の上から飛び立ちます。


「あたし、あんたたちが気に入っちゃったよ」



 発光したまま、私たちを中心にぐるりと一周します。



「こうやって助け合ったのもなにかの縁だしね。もし困ったことがあったらあたしに言いなよね。力になるからさ!」

「あり、がとう」

「このままあんたたちのことを見ていてあげたいんだけど、ちょっと野暮用があるのよ。それが終わったらまた様子を見に来るから。それじゃバイバイー」



 手を振りながら、妖精キーリは森の奥へと消えて行きました。 

 性格も体も、なんだか明るい妖精さんだったね。



 私が蔓を振りながら妖精を見送っていると、魔女っこが怪訝な顔つきをしていたの。



「どうし、たの?」

「あの妖精は信用できない」



 魔女っこは妖精のことを怪しんでいたみたい。

 たしかに親切にしてもらったとはいえ、初対面の相手を完全に信じることができるほど、森は安全なところではない。


 弱肉強食なこの自然の世界では、なにか裏があるのではと疑ってしまうよね。


 私とハチさんたちのように、蜜を与える代わりに守ってもらうというような、利害関係があったほうが変なことを考えずに済むの。



 それでも、魔女っこが妖精さんに心を開いていないのは別な理由もある気がするね。


「なんで、信用、できないの?」

「妖精は人間とモンスター、どちらかと言えば人間寄りだと思う。だから裏切るかもしれないから危険」

「じゃあ、私は?」

「アルラウネは完全にモンスター。しかも植物だから安心できるの」



 そういえば魔女っこは人嫌いだったね。

 まさか妖精ですら警戒しているとは。

 しかも植物モンスターにしか心を開けないなんて、魔女っこの将来が心配してしまうよ。



「妖精は人を惑わす存在だって、前に村に来た旅人が話していた。もしかしたらあとでわたしたちを捕まえるつもりで、いったん姿を消したのかも」


 そこまで疑わなくても良いと思うけど、可能性としてはゼロとも言い切れない。

 魔女っこがそこまで言うのだし、完全に妖精のことを信用するのはまだ早いかな。



 というわけで、妖精に関しての方針は決まりました。

 信用しすぎない程度に、ギブアンドテイクの関係でいきましょう。



「ぐぅ~」


 落ち着いたせいか、魔女っこのお腹が鳴ったみたい。

 晩御飯の時間だね。


「アルラウネ、蜜ちょうだい」


 魔女っこが私に蜜を求めてきました。


 私の口の中に魔女っこは指を入れようとするけど、なんとか阻止します。

 変な気持ちになるから、口に指を突っ込むのはできればやめて欲しいの。



 その夜も、私と魔女っこは二人で一緒に寝ることにしました。


 とはいえ、昨夜のように蔓で絡み合っているわけではない。

 魔女っこは服を着たままだからね。


 蔓の(まゆ)を作って、私と魔女っこの体ごと(おお)い隠している状態だよ。



 (つぼみ)を閉じた私は、バケツごと魔女っこに抱きかかえられます。

 こうやって誰かに支えられていると安心するね。



 私、思うの。

 幼女アルラウネになって植木鉢に入っている今なら、魔女っこに運んでもらえばどこにだって飛んでいける。


 なんなら、許嫁だった勇者様や聖女見習いのクソ後輩がいる王都に行くのも夢ではないよ。


 けれども、今の私は一人ではない。

 

 私の私怨を魔女っこにまで巻き込むわけにはいかない。

 かといって、このまま魔女っこを一人で放っておくことはできないよね。


 せめて今まで助けてもらった恩を返さないと気が済まないよ。

 私を裏切った二人に関して考えるのは、その後でも遅くはないはず。



 だから今後の目標としては、魔女っことの生活基盤を築くことにしましょう!



 ずっと野宿を続けるのは、子どもである魔女っこには辛い気がする。


 安心して寝られるような家が欲しいね。

 あと食生活の改善もしないと。


 それで魔女っこと普通に暮らせるように環境を整える。

 


 そうして二人の楽園を作るのだ!


お読みいただきありがとうございます。


次回、魔女っこ、空腹で倒れるです。

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― 新着の感想 ―
[一言] アルラウネの口は植物で言う柱頭……アッ > 私の口の中に魔女っこは指を入れようとするけど、なんとか阻止します。  変な気持ちになるから、口に指を突っ込むのはできればやめて欲しいの。
[良い点] 実は、樹人やみみんは転生者でアバターらしいです [気になる点] 持ち物…VRヘッドセット、タブレット、モバイルバッテリー(電池無限)、VR棒、VR銃 スキル…【異世界ホームセンター】【異…
[一言] 邪神(焔)「……(´•̥ ω •̥` ')……۳( ̥O▵O ̥)!!…」 …ミツゥ(「蜜・ω・)「蜜 邪神(焔)「(๑´(´。> <`)ペロッ...」 邪神(焔)「アビャビャビャビャ……!…
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