91 破滅の光魔法
私、元聖女の植物モンスター娘のアルラウネ。
こっちは聖女見習いを食べて光魔法の力を奪った、魔王軍四天王の黄金鳥人ガルダフレースヴェルグさん。
怒りが爆発しそう。
ここまで怒ったのは、アルラウネになってから初めてかも。
除草液で自分が枯らされそうになることよりも、聖女時代の仲間が食べられて能力を奪われてしまったということが、ショックなの。
私は聖女大聖堂で子どもの頃からともに育った聖女見習いたちの顔を思い浮かべます。
彼女たちの何人かは、魔王軍との戦いで命を落としていたはず。
死体が出なかった子もいた。
その子たちは、目の前の鳥人に食われていたのだ。
「これまで9人を丸呑みにした。吾輩は聖女見習いを食べれば食べるほど、強くなるのである」
──9人。
その中にはきっと、知り合いもいたはず。
「そういえば塔の街に新しい聖女見習いが一人増えたと聞いたであるな。そいつを記念すべき10人目の獲物にしてやるのである」
この魔族はまだ聖女見習いを襲おうとしている……。
私は蔓にテッポウウリマシンガンを生成します。
そうして考えるよりも先に、毒種を鳥人へと発射しました。
スポポポポンッ!
「なんであるか、この種は」
黄金に輝く鳥人の羽は、鉱石のように硬かった。
そのせいで棘の種は四天王に刺さることなく、全てはじかれてしまいした。
「ふんっ。花が種を飛ばすだけでは、痛くも痒くもないのである」
──く、くやしいよ。
聖女時代の仲間の仇だというのに、私の攻撃が通じない。
種が刺さらなければ、ベギーアデアドラーを倒したヤドリギ作戦だって使えないよ。
いったいどうすれば。
昂る感情を抑えようとしていると、鳥人の全身が光り出しました。
体全身に、光の輪のような光冠が発生します。
「血気盛んな者もいるようであるし、そろそろ吾輩が直々に手を下してやるのである。まずは強者からであるな」
この光冠のガルダフレースヴェルグと呼ばれた四天王がなにをしようとしているのか、聖女であった私には手に取るようにわかるよ。
光魔法の大技を使おうとしているのだ。
「聖破光線」
黄金鳥人から巨大な光のビームが放たれました。
視界を覆いたくなるような光線が、クマパパの親戚ことラオブベーアに直撃します。
それは一瞬のことでした。
10メートルもあるラオブベーアが、光のビームを受けるとその場に倒れたの。
全身が光線によって真っ黒に焼かれていました。
ラオブベーアは、既に絶命していたのです。
うそでしょう。
あのクマパパの親戚が、一発でやられちゃうなんて。
想像以上の光魔法の攻撃です。
これが四天王の力。
私が前に戦った魔王軍のミノタウロスとは比べられないくらい、強い。
私が聖女時代に戦った魔族の中でも上位の部類に入る。
聖女ではなく魔族なのに、光魔法が使えると自慢していただけのことはあるよ。
私が唖然としていると、四天王の鳥人が闇の妖精オーインに話しかけます。
「ふんっ、たわいもないな。オーイン、これで良いであるな?」
「良くないよ! まだアルラウネが残っているじゃない。早くこの忌々しい花をやっつけちゃってよ!」
「そう焦るのでない。ただの小さなアルラウネなのである。なにができるというのであるか」
随分と見下されているね、私。
まあ物理的にも見下ろされているんですけど。
私と同じく地上にいる毒の妖精オーインが、空に飛んでいる四天王に向かって大声で叫びます。
「ガルダフレースヴェルグ様、違うんだってば! ラオブベーアじゃなくてこのアルラウネがベギーアデアドラーを倒したんですって!」
「アルラウネが? にわかには信じられぬな」
やっぱり私のことをただの植物モンスターだと油断しているね。
たしかにあなたの光魔法は凄いよ。
一撃であのラオブベーアを倒したんだからね。
けれど、私だってクマパパを倒した経験はあるんだから。
そう簡単には負けませんよ。
でも、ね。
光魔法はズルいと思うの。
できれば私と戦うときは魔法無しの戦闘でお願いします。
私、魔法使えないの。
だってただの植物だから。
「次はそこの小さきアルラウネの番であるな。消滅するのである」
え、ちょっと待って。
クマパパレベルのモンスターでさえ耐えられないような光のビームを食らったら、私なんて一撃でやられちゃうよね?
私、まだ死にたくないのです。
植物モンスターのアルラウネになって、幼女のまま四天王の一人と戦うなんて、絶対におかしいの。
聖女時代にだって四天王と一対一で戦ったことはなかった。
それなのに、生後一年のアルラウネに対して非情だよ。
しかも身体的には生後一週間くらいしか経っていないんだよ。
もう普通に考えたら勝てるわけがないじゃん。
私はただの幼女のお花なの。
魔王軍の四天王であり魔族なのに光魔法を使う規格外の黄金鳥人さんの相手なんて、できるはずがないのです。
だから早くこの場から逃げたいのだけど、それはできない。
だって私、植物だから…………。
「聖破光線」
クマパパの親戚を一撃で葬った巨大な光のビームが私へと向かってきました。
私もクマパパの親戚のように、光に焼き払われるのだ。
短い花生だったね。
今度生まれ変わるなら、とりあえず歩ける動物になりたいな。できればまた人間になりたい。
呆然としている私に、死へと誘う邪悪な光が照らされます。
光速で飛んでくる光魔法を避けることは不可能。
蔓の盾を作る間もなく、私は鳥人の光線を身に浴びてしまいました。
いぃやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ………………………………あれ?
どうしましょう。
この光線、まったく痛くないのですが。
むしろ私、元気になっているよ。
「ど、どういうことであるか。なぜ吾輩の聖破光線が効かない…………?」
黄金鳥人さんが慌てているね。
でも私、わかっちゃいました。
ちょっとビックリしちゃったのだけど、どうやら私に光魔法は効かないみたい。
だってね。
いま私、光合成しているの。
むしろ回復しています。
聖破光線はたしかに大技の光魔法かもしれないけど、私にはおやつでしかなかったの。
うん、光合成おいしい。
ごちそうさまです!
お読みいただきありがとうございます。
次回、光魔法おいしいです、おかわりを所望しますです。







