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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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人生の終焉。最後の花火。

 俺たちは穴戸のマンションに辿り着いた。

 人だかりができている。

 クッソ! 遅かった!


「みんな車から降りるんじゃねえ。わかったな! 特に北条!」


 俺は怒鳴ると車から降りた。

 あの野郎どもやりやがった!

 アナウンサーとカメラマンも車を降りる。

 あの連中はいい。大人だからな。自己責任だ。

 俺は人混みをかき分けマンションに出る。

 俺は恐れていた。

 やけになった連中が遠藤さんを殺してしまうことをだ。

 その可能性はあった。

 三人のうち二人は損得勘定ができるから確率は低い。

 だけど焦った武藤が勝手に殺してしまう可能性がほんの少しだけあったのだ。

 とは言っても俺に連中の言いなりになるという選択肢はなかった。

 そいつが最悪の選択肢なのはあの殺人鬼との戦いで学んだのだ。

 とは言いつつも……正直に言えば俺は焦っていた。

 やめろ!

 そいつはやめてくれ!

 だが俺の目に入ったものはもっと以外なものだった。

 よく考えれば、周りをよく観察すればおのずと出る答えだったのに。

 だって誰も撮影していないのだ。

 なにかあれば一人くらいはスマートホンを出すはずだ。

 そう、それは撮影もできないようなものだった。

 変色した皮膚。

 ロープで締め付けられ、折れた首。

 目は飛び出し汚物か体液かわからない汁が滴っている。

 そいつは『人のようななにか』だった。

 人の姿をしたなにかがマンションの高層階から吊されていた。


「おい……なにがあったんだよ……」


 俺はつぶやいた。

 アナウンサーの絞り出すような声がした。


「い、今、私たちは……お、おえええええええッ!」


 水っぽい音がした。

 アナウンサーが胃の中のものをぶちまけた音だ。

 鼻につくにおいがした。

 アナウンサーだけじゃない。

 何人もが吐いていた。

 これだけでも地獄絵図だ。

 カメラマンは膝と手が震えていた。

 電車の事故や交通事故、いや通常の殺人でもありえない圧倒的な悪意。

 悪意に当てられていたのだ。


「なんでてめえなんだよ!」


 俺は叫んだ。

 その人間。いや、もはや死体だ。モノなのだ。

 その骸は武藤だった。

 武藤がマンションから吊されていた。

 こいつの目的は理解できた。

 損切りだ。

 一番の足手まといを間引いたのだ。

 そしてこれが意味するところ……つまり、やつらはもはや、後先は考えていない。

 俺と全力で遊ぶつもりだ。

 俺はなにかいい材料がないかを考えた。

 俺の脳みそはこんな時でも元気に思考をする。


 ……そうか!


 遠藤さんは無事だ!

 あの連中はバカを殺した。

 残ったのは多少は理性的な連中だ。

 俺と遊ぶなら賭け金が必要だってことがわかる連中だ。

 遠藤さんの命という賭け金が必要だってな。

 少しでも遠藤さんが死んでいると思わせるようだったら俺は手を引く。

 それすら駆け引きだ。

 それは連中も理解しているはずだ!

 俺はアナウンサーに近づいた。

 胃液を吐いたアナウンサーはへたり込んでいる。

 心底恐ろしかったに違いない。

 俺はアナウンサーの背中を叩いた。


「佐久間さん。俺の言うことを聞いてください。ヒーローにしてあげますから手伝ってください」


「ふぁい?」


 アナウンサーの佐久間さんは胃液が口の周りで光り、涙で化粧が崩れていた。

 俺は無表情のまま言った。


「ネットで生中継してください。それが無理だったら生中継しそうな連中に住所を漏らしてください。警察も呼んで大騒ぎにしましょう」


「な、なにをするんですか?」


 そう言うと佐久間さんは咳き込んだ。

 俺はもう一度トントンと佐久間さんの背中を叩く。


「連中は俺と遊びたいんです。クソみたいな人生よおさらば! 最後に大きな花火を打ち上げちゃうよ♪ ってことですよ」


 つまりだ。

 俺たちは連中の派手な自殺に巻き込まれたわけだ。

 簡単に言うと連中の人生は人としての道を踏み外した10年前に終わっていた。

 鈴木千穂ちゃんを殺した時点で連中の人生は終わっていたのだ。

 終わったってのは客観的に見た人生じゃない。

 あいつらの内面。

 心が死に、ただ終末を願うようになったということだ。

 武藤はただのバカだが、二人が壊れたのは10年前のあの日だ。

 罪悪感に押しつぶされたのか、それとも別の理由かはわからない。

 だがタケルさんを殺したあの日から連中は人生最後の花火を打ち上げることを考えていた。

 俺のバカ! なぜ気づかなかった!

 穴戸の借金2000万円がフラグだったんだ!

 2000万円なんてハナクソ程度の大金持ちが親なのに。なぜ俺は気づかなかった!

 あれはタケルさんを殺してから作った借金だ!

 もう人生の店じまいの準備をしてたんだ!

 菊池龍一も人生の店じまいを終えて、人生の最後に見つけた至高の趣味、絞殺に邁進している。

 その先に破滅が待っているのは理解しているだろう。

 こいつはあいつらの二人の人生の終幕劇。

 破滅に一直線に向かうロードムービーなのだ。


 一人で勝手に死んでろクソムシが!


 俺は佐久間さんに詰め寄る。


「いいですか? これから死人が出るか否か。伝説に残る映像を撮ることができるかは佐久間さんのがんばりにかかってます」


 俺は佐久間さんを自分が特別だと思い込ませた。

 弱った心につけ込んでの洗脳だ。


「一緒に日本を救いましょう! 佐久間さんにしかできないんです!」


「わ、私が……?」


「ええ! やりましょう!」


 俺は勢いで押す。

 俺……たぶん地獄に落ちるな。

 だが前のように犠牲者を出さないためには、俺が犯人の主導権を握らねばならないのだ。


「わ、私! やります!」


 俺は笑いもしなかった。

 それだけ必死だった。


「動画投稿者を呼びます!」


 待ってろクソども。

 てめえらはここで終わらす。

 俺がそう決意を新たにした瞬間だった。


「光ちゃん!」


 北条がこっちに走ってくる。


「ちょ、おま! 来んな!」


 俺は必死に叫ぶが、北条は気にもとめない。


「なにを今さら。死体なんて見慣れてるんだから! はい、これ見て!」


 あのね、俺はお前にそういうのから離れて欲しいのよ。

 お願いだからそれをわかって!

 だが北条は俺に持ってきたタブレットを渡す。


「あいつらが動画を流してる」


 さて、ここで俺は中身の詳細を密に表現することを拒否したいと思う。

 だって武藤の死体よりもっと酷いものなのだから。

 なにせ、そいつは武藤の殺害を撮影したスナッフ・フィルムだったのだ。


「光ちゃん、よく聞いて……あいつら、殺害した子どもの映像も流してる。10年前のもね」


 俺はため息をついた。

 世の中には救うべき犯罪者ってのもいるに違いない。

 人生が不幸なせいで人殺しをしたり、人殺しが悪いことだって知らないやつだっている。

 だけどこいつらはダメだ。

 一点の曇りもない本当のクソ野郎だ!

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