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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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マーダラーハンティング2

 俺がウィッグを取った直後のことだった。

 某SNSに『中の人などいない!』という書き込みが無差別爆撃された。

 さらに数分後、SNSサーバーが『中の人などいない!』の爆撃で陥落。

 一時間後には運営会社がサーバーの増強を発表。

 なにせ動画サイトでは俺の活躍が世界各国の言語に翻訳されて拡散されていた。

 女装に厳しい国家ですらも、ヤマトタケルの神話の解説付きで拡散。

『悪を狩るために必要な事だった』とやたら暖かい解釈をしてくれた。

 テロリストで有名な某組織まで『いいね!』と応援コメントを出した。

 いらんわ! そんな優しさ!

 要するに……だ。

 世界の人たちは期待していたのだ。

 俺が悪いやつをぶっ飛ばすのを。


 俺はとうとう理解した。

 神様の意思ってやつをだ。

 神様の目的は新しい神話の構築だ。

 新しい信仰。新しい英雄。新しい神話。

 悪が死に、善が生き残るわかりやすい神話だ。

 なぜなら世界には理不尽が溢れている。

 戦争に貧困、病気に交通事故。

 悪いやつほど優遇され、正義の声はか細い。

 そんな時代には必要だったのだ。

 わかりやすい神話がだ。

 人権や法、適正手続き(デュープロセス)は確かに必要だ。

 自然権、いわゆる基本的人権の尊重ってやつは民主主義社会を形作る神話とも言える。

 人権は神話じゃねえって?

 あんなものは神の存在や紙幣と同じだ。

 俺たちが存在すると信じているからなり立っているだけのものだ。

 俺ですら神様ってやつがいわゆる『本当の神』なのかはわからないのだ。

 だが俺たちは現にその神話に守られ生活をしている。

 だが弊害として単純明快さ、痛快さが社会から失われている。

 簡単に言うと社会が小難しいのだ。

 その結果、小狡い悪が守られ、善人は悪人の餌食になるのだ。

 ……と思っているのは俺だけじゃないはずだ。

 世界の民衆の多くは殺人鬼には無残な最期を遂げて欲しいと思っているだろう。

 生死は別として悪へのなんらかの制裁が必要だと思っている人間は圧倒的多数だろう。

 専門家でないと理解できない小難しい法はそのニーズを満たしていないのだ。


 そこで俺の出番だ。

 俺の鉄拳制裁が悪を倒すのをみんなは期待している。

 つまり俺が天使ということはそういうことを期待されているのだ。

 そしてまた、この比較的安全な日本に俺が現れたことの理由も俺には推測できていた。

 俺は、いや俺の関わった事件はテストだ。

 意識高い系ビジネス書的に言えば『ローンチ』だ。ぶっとばしたい。

 つまり世界に数多くあるヒャッハーランドではなく、安全な日本で神様が新規事業の立ち上げをしたのだ。

 テストされているのは俺なのか、それとも社会なのか人類なのか?

 そいつはわからない。

 だがこれだけは言える。世界は俺に熱狂した。

 民衆は、俺の手伝いをしたいと思ったのだ。

 つまりテストは成功だ。

 俺がこの事件を解決すれば、じきに世界中に俺のような連中が溢れることだろう。

 量産型光ちゃん。

 たぶん斧とマシンガンを装備して肩パッドにトゲがついているはずだ。


 実際、その後の動きは俺の予想通りだった。

 復旧後のSNSは目撃情報であふれかえった。

 警察は犯人の顔や個人情報を個人を装ってわざと(・・・)放出した。

 犯人の情報の第一報は地上波のテレビ局だったが、次の瞬間には穴戸の目撃情報がSNSで拡散された。

 それはコンビニでチューハイを買う姿の写真だった。

 穴戸は、もう一生コンビニで買いものもできないだろう。

 こいつはネットリンチだ。

 だがなにが悪い? 全て穴戸たちの選んだ選択だ。自業自得なのだ。

 人権? ぽく中学生だから知らないもん!

 俺はそう自分を納得させながら車で目撃情報のあった場所へ向かうことにした。


 俺は着替えもせず、ウィッグを被って地下駐車場に向かった。

 なにせ俺は戦闘ができるようにスカートではなくデニムを履いていたし、腹には雑誌を巻いていた。

 銃やハンマーには無力だが、ナイフ相手には効果がある。

 すると俺は当然の顔をしてついてこようとする女衆に気づいた。


「北条……大人しく待っててくれ。つか美香も吉村も皆川も待ってろ!」


 北条はニヤニヤとしながら言った。


「や・だ♪」


 なんだろうこの娘。

 危ない橋を渡ろうとしてるときに色気が増す。

 もはや中学生の色気じゃない。

 思わず内股になってしまいそうである。

 美香はもっとストレートだった。

 俺をぽかぽかと叩く。


「お兄ちゃん! 私を連れて行かないとかなにを考えてやがるんですか!」


 吉村も同じだった。

 俺の脱毛したあとの卵のようなケツを蹴る。

 暴力ヒロイン。ダメ絶対。


「光太郎。連れていかないと殴る」


 ら、らめえ。

 俺の胸は期待に高鳴った。

 じゃない。


「危険だからダメ!」


 と俺は拒否したが、皆川が言った。


「もうカメラも用意しました。番組の企画も通ったので無駄です」


「はい?」


 すると筋肉質だけどニコニコした男がやってくる。

 その手には中継用のカメラ。

 いくらなんでも早すぎねえか!


「ニコテレの山岸です! お願いします」


「ちょ、どういう……」


 俺は焦った。

 だが北条がペロッと舌を出したのを見て理解した。

 あ、無理だ。

 なにを言ってもついてくる気だ。

 もうついてくるまでのレールを敷いてやがった。

 俺は諦めてク●ラックス先生の漫画に出てくるようなバンに乗り込んだ。

 中には女性アナウンサーがいた。


「こんにちは。ニコテレの佐久間ゆかりです。えーっとHIKARUさん?」


「相良光太郎でいいですよ」


「あ、あの……でも女の子になりたいんですよね」


「絶対に違う! 北条に騙されたんだって!」


 半分は間違っていない。

 だが北条はニヤニヤしながら俺を肘でつつく。


「またまた~。そんなにかわいいのに~」


 違う! ちょっと心の押しちゃいけないスイッチを押しかけたけど、断じて俺は楽しんでない!

 たぶん! きっと! できれば! 楽しんでないって!


「ですよねえ。もったいない」


 アナウンサーは言った。

 俺は騙されないぞ!

 二年もすれば体も大きくなって汚いオッサンになるはずだ。

 だけど……自分で言うのもなんだが……きれい……

 こんな……こんな……らめええええええ!


「い、いいから! 犯人捕まえるぞ!」


 俺は必死だった。

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