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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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マーダラーハンティング1

 やはり歯は遠藤さんのものだった。

 というより遠藤さんの失踪が先で、俺の家に歯が送られてきた方が後だった。

 警察はどこまで事態を把握しているのだろうか?

 それはわからないし、もはや聞き出すために心理戦を仕掛ける気力も時間もない。

 その代わりに俺は記者会見場の控え室で用意をしていた。

 除毛クリームでムダ毛を処理した。

 ファールカップとサポーターの重ね着して女物の服を着る。

 なんだこれクソかわいいな。

 ウィッグをつけて北条の連れてきたメイクさんにメイクもしてもらった。


 く、殺せ!


 それにしても不思議だ。

 なぜメイクさんは『男の方ですか』と言わないのだろうか?

 もしかしてマジで俺を女だと思っているのだろうか?

 ……もう俺……戻れない!


 そして俺は美香と北条と吉村、それに皆川を連れて会見に挑む。

 はっきり言って、これからやることは外道の行いだ。

 四人ならやってもいいが俺が使うには卑怯な手だ。

 自分で自分を好きになれそうな気がしない。

 だがもうこの手しかない。

 四人には許可を取った。

 四人とも『相良光太郎がやるなら従う』と言ってくれた。

 だから俺は手段を選ばず犯人を全力でぶっ潰す。

 俺たちは記者会見場に入った。

 先頭は北条。次は皆川。そして俺、吉村、美香と続く。

 これは単純にデビュー済みで知名度のある北条が先頭。

 次が先輩の皆川というだけだ。

 北条はマイクを手渡される。

 その顔に笑顔はない。

 もう勝負は始まっているのだ。


「今日はみなさんお集まり頂きありがとうございます。これから先日急死したタケル氏への殺害事件に関する新たな情報について述べさせて頂きます」


 会場がざわついた。

 記者たちは「なぜ母親の方ではないのだ?」と言わんばかりの顔をしている。


「まず皆さんご存じの通り、私は殺人鬼に拉致され10年間共に生活してきました」


 記者たちがざわつく。

 テレビや新聞などでは北条の事件の話はタブーだった。

 北条は未成年でしかも犯罪被害者だからだ。

 人権問題だ。

 話題にするのは一部の悪質なゴシップ誌やネットメディアくらいである。

 北条は続けた。


「今ここにいるメンバーは全員が犯罪の被害者です。私とこの三人は例の殺人鬼からの生還者です」


 記者はさらにどよめく。

 まさかあの事件の被害者がアイドルの卵をやっていようとは思わなかったのだ。

 メイクをした二人の顔がわからなかったのである。

 美香や吉村はそれほど注目されてなかった。

 俺の裸踊りや鉄拳制裁の方が注目されたというのもある、だがなにより弁護士の活躍が大きい。

 それでも記者たちも本音では美香や吉村の写真が欲しかったのだろう。

 ようやく表に出せる日が来たのだ。

 本社に伝えるためか廊下に出て行く記者が何人も出た。

 そりゃ驚くよな。

 北条が吉村と美香を見る。

 二人が前に出る。

 美香がマイクを渡される。

 すると美香は意を決して話し始める。


「寺島美香です。以前の記憶はほとんどありませんが今は幸せです」


 俺は自虐的にほくそ笑んだ。

 勝利への確信。

 だが同時にわき上がるのは、これをさせたのは俺だという強烈な罪悪感。

 俺の作戦はシンプルだった。

 前回の殺人事件のことを出して同情を買う。

 いや同情とは少し違うかもしれない。

 興味を持ってもらうのだ。

 そして皆川に繋げる。

 皆川の口から奴らをあぶり出すのだ。

 次は吉村だ。


「吉村春香です。殺人鬼に拉致されて体に爆弾を取り付けられました」


 マスコミや動画投稿者から歓声が上がる。

 なにせ吉村を助けた豪田と飯田はコ●ンドーの再放送のたびにコラ祭りになるほどの有名人だ。

 その悲劇のヒロインが現れたのだ。

 次は皆川だ。

 だがその前に北条が注意をする。


「次の話は少し重いので覚悟してお聞きください」


 あくまで北条は神妙に言った。

 だがこいつは『聞いたら死ぬ話』とかと同じだ。

 気かせるための話術だ。

 皆川がマイクを握る。


「皆川晶です。私は……10年前に死んだ鈴木千穂の妹です」


 会場は静まりかえった。

 俺たちの世代、それにその親の世代は知っている。

 鈴木千穂の事件をだ。

 なにせ有名な未解決事件だ。

 若い世代は口にすること自体がタブーなほどだ。


「私と行方不明になっている遠藤さん……姉の実のお母さんは事件を調べていました。北条さんの手を借り有力な容疑者に辿り着きました。ですが遠藤さんは昨日から行方不明になりました。そして今朝、HIKARUさんと美香さんの家に遠藤さんの歯が入った小包が送られてきました」


 記者たちは口を開けた。

 重要な話がマシンガンのように叩きつけられたからだ。

 鈴木千穂が養子だったことは当時の記者なら知っていたかもしれない。

 だがそれはあくまで噂レベルの話として処理された。

 極めてプライベートな話だ。

 テレビで放送するような内容じゃない。

 だから当事者の口からそれが出たことが驚きだったのだ。

 さらに歯を送りつけてきたこと。

 どう考えても異常な話だ。

 拉致されたとしか考えられないのだ。


「お願いします。もう、これ以上……私から……家族を奪わないで……」


 皆川がぽろぽろと涙をこぼした。

 事件のせいで皆川の家族は壊れた。

 皆川にとっては遠藤さんが家族みたいなものだったのだろう。

 たとえ共犯者だったとしてもだ。

 今度は俺の番だ。

 俺は皆川を抱きしめ北条の所まで連れて行き、マイクを受け取る。

 そして前に出た。


「HIKARUです。犯人に警告する。やいてめえら。てめえらの素性はわかってんだよ! 遠藤さんを五体満足で返せ。じゃなければテメエらはあの殺人鬼みたいに死ぬより酷い目に会う。いや、俺が地の果てまで追いかけて潰す」


 記者たちもネットメディアもポカンとした。

 俺の汚い言葉遣いもフリーズするには充分だった。

 だが一番は俺の正体がなんとなくわかったこと、それを脳が拒否したのだ。

 俺はウィッグに手をかける。

 そして一気に取ると床に叩きつけた。


「この相良光太郎がテメエらに天罰を下してやる! 逃げられると思ってんじゃねえぞ! ああ? 武藤浩一さんよ! 中坊から逃げ回ってるんじゃねえぞ!」


 俺がそう言った瞬間、警備員が俺を羽交い締めにする。

 そのまま連行された俺は、放送禁止用語を叫びながら楽屋裏に消えた。

 大丈夫だ。

 これは北条や会社との打ち合わせ通りだ。

 なぜ俺は武藤だけを狙い撃ちにしたのか?

 あいつは累犯の粗暴犯で人殺しだ。

 そういう人間には特徴がある。

 低い自己評価とプライドの肥大化だ。

 一見すると二律背反的な印象を受けるが、これらは同時に存在できる。

 つまり簡単に言うと『自分をダメなやつ』と思いながら、『なめた』とか『なめられた』とかのくだらない理由で人を殺せる人間ということだ。

 こういう人間は案外世の中には多い。

 そして俺はそれを弱点と捉えた。

 だから容赦なく弱点を突いた。

 これで奴らの人間関係にヒビを入れられる。

 少なくとも俺にアクションを起こす必要に迫られることになった。

 武藤が殺しに来るか、大人しく遠藤さんを返すか。

 どちらでもいい。

 俺はてめえらを地獄の果てまで追い込んでやるぜ!

 後悔してももう遅え。

 てめえらは俺を怒らせたんだからな!

明日は夜まで帰ってこれなそうなのでお休みします。

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