作戦開始
俺は作戦を思いついた。
豪田を利用したときと同じような姑息な手だ。
豪田の名誉のために言うが、あの体育教師はチートクラスの傑物だ。
心の中では俺を狙っているかもしれないが、俺は一度たりとも言い寄られたことはない。
未だに気のいい体育教師のままだ。
その精神力の高さは美香と同じ家で暮らした今なら理解できる。
豪田偉い!
話を元に戻そう。
俺は罠を仕掛けることにした。
犯人が絞殺した人間は二人。
少女と成人男性だ。
少女が対象だからロリコンと考えるのは罠に違いない。
それはステータス画面でも同じだ。
なにせ神様のお言葉はいつも意味を考えなければならない。
たぶん神様は祖父よりも年上なのだ。
きっと現代語があやしいに違いない。
穴戸のハンドルネームである『小さい子』……こいつはロリコンって意味じゃない。
『小柄なアイドルが好き』って意味だろう。
痩せ形が好きとか、背の高い人が好きってのと同じだ。
そしてコイツが犯人かは現時点では確定してない。
なにせバッドステータスに犯行についてなにも書いてないのだ。
だから罠を張る。
一カ所に集めて俺がステータスを読む。
そうすれば手がかりくらいはわかるだろう。
……たぶん。
あの日、解放された俺が家に帰ると北条と吉村が家で待っていた。
美香も含めた三人は心配そうな顔をしていた。
なんと美香はお兄ちゃんのSOSをちゃんと理解していたのだ。
だからちょうど良かった。
俺は泣きながら抱きついてくる北条を引き剥がすと言った。
「タケルさんは絞殺魔に関係している」
俺は言った。
なにせ同じ絞殺だ。
世間でも同一犯説を唱える声は大きい。
だから流されるだろうと思った。
だが三人とも神妙な顔をしていた。
「光太郎がそう言うんだから……そうなんだろうね」
吉村が言った。
あれ……?
俺、すっげえ信用あるよね。
「そうですね。お兄ちゃんが言うのだからそうなんでしょう」
美香も言った。
こちらも俺を信用している。
なんか涙が出てきたぜ。
一方、北条はなにかを考えていた。
「あのさ、光ちゃん。光ちゃんなら、なにか作戦考えているよね? なにせあの男を出し抜いたんだから」
北条はかつて『お父さん』と呼んでいた殺人鬼を『あの男』と表現した。
マインドコントールも解けているのだろう。
そして北条の言ったことは正しかった。
俺は作戦を伝えようと思ったのだ。
俺は北条に遠藤さんが書いたメモを渡す。
「まあな。北条、悪いけどこの四……間違えた。三人にコンサートの招待状を出してくれ。一カ所に集めて反応を見る」
四人と俺は言いかけた。
だがそれは間違っていた。
もうタケルさんは死んだのだから。
「三人はどうやって呼び出すの?」
「三人はタケルさんの同級生だ。『タケルさんが招待する予定だったので、ぜひ来て欲しい』とでも言えばいい。そうだな……『タケルさんから三人に10年前の件で手紙を預かっている』とでも言うかな」
俺がそう言うと吉村が俺の頬を引っ張る。
「いひゃひゃひゃひゃひゃ!」
痛い!
なにをする!
「光太郎! あんた、なにか隠してるよな!」
俺は美香の方を見た。
美香は目をそらした。
あー! 裏切り者!
俺が非難がましい視線を向けていると、視線に耐えられなくなった美香が言った。
「あのね……私、知ってます」
吉村は問答無用で美香のほっぺたも引っ張った。
「あんたねえ!」
「いひゃい、いひゃい、いひゃい!」
吉村が美香を解放すると美香は話し始める。
その間もなぜか俺の頬は引っ張られたままだ。
酷い格差である。
「あのね、タケルさんとその三人は10年前、晶ちゃん……皆川さんのお姉さんを殺したみたいなんです。それで、ここ数日お兄ちゃんは晶ちゃんと調べていたみたいで」
今度は俺のもう片方の頬を北条が引っ張った。
あん♪
あたい……変になっちゃう♪
「なんでそういう重要な事を言わないんだよ! このおバカ!」
「ほんとバッカじゃないの!」
吉村と北条の言葉責め。
俺は冷静な顔をしながらそれを堪能していた。
とは言ってもいつまでも頬を引っ張られているわけにはいかない。
だから俺は言った。
「俺の大事な人たちを巻き込みたくなかったんだ」
すると二人の顔が赤くなる。
美香はなぜかキレていた。笑顔のままで。
「光太郎……だ、大事って」
「光ちゃん。もう、そんな愛の告白なんて……」
よし勝った!
俺は勝利を確信した。
すると北条は言った。
なんだか嫌な笑顔でだ。
「光ちゃんも出るならいいよ♪」
「お、おう」
動画投稿サイトで有名な中学生枠ならいいだろう。
その位の罰ゲームは甘んじて受け入れよう。
だが北条はサディスティックな笑みで言った。
「HIKARUちゃんとしてね♪」
やっぱね!
やっぱりそう来やがったか!
北条は微笑んでいる。
意図がわかった美香も微笑む。
吉村は顔を真っ赤にしている。
誰も止めない。
お前ら……俺に新たな属性加えてどうするんよ。
変態という男坂を登っているような気がするがいいのだろうか?
ねえ、マジで!
……数日後。
作戦の決行である。
新人アイドルグループの中に俺はいた。
この日のためにダンスも身につけたのだ。
それに吉村や美香もいる。
俺がムリヤリ巻き込んだ。
ザマァ!
お前らも苦しむがいい!
もちろん、もともと候補生だった皆川もいる。
すっげえのが強調されてます。
ありがたやありがたや。
なにが? って、言わせんじゃねえよ! もうやだなあ。
警備員はマシマシだ。
警察も来ているらしい。
さて……あとは俺の挨拶の台詞だ。
素人の俺にまでなぜ出番がある?
俺はブツブツ文句を言いながら、北条が考えた口上の書いてある紙を見る。
『汚らしい三十路越えたクソ童貞ども! さあ、私のケツを見ろ!(笑顔)』
……俺はセンターにいる北条を見た。
北条はウインクする。
いやそうじゃねえよ!
なに同志たちが言われたら死にたくなるようなこと言ってるの?
お前らには童貞の苦しみ、哀しみがなぜわからない!
そんな傷つきやすい同志たちを炎上させようとしてるんだよ。
バカなの?!
要するに自分で考えろって事らしい。
あー! もう! やってやんよ!
『大きいお兄ちゃんたち! ジークおっぱい!』
よし!
あとは奴らが来るだけだ。
俺は気を引き締めた。




