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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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悪魔を助けよ

 皆川が深刻な話をする。

 俺は覚悟を決めようとしていた。

 俺は痛いのと苦しいのが大嫌いだ。

 それは知人の不幸も入る。

 頼むからやめてくれ!

 顔が蒼くなっていた俺の顔を見て皆川は微笑む。

 そしてそのプルプルとした唇を舌でなめた。

 あ、知ってる。

 この娘、ドSだ。超エロイ。

 俺は少しだけなにかに目覚めそうになっていた。


「相良さん……」


 ら、らめ!

 と、ビビリ半分、新たな快感に目覚めるの半分だったその瞬間、俺の携帯が鳴った。

 た、助かった!

 着信は美香だった。


「はいはい。美香ちゃん。お兄ちゃんです!」


「うわ! どうしたんですか? そんなに焦って……」


「焦ってないヨ。なにもやましいことナイヨ」


「……あやしい」


 なぜお前らは俺の思考を読むのだ?

 お前らはエスパーなのか?


「まあいいです。お兄ちゃんならなんにもないでしょう。それでね、今、お姉ちゃんと春香ちゃんと一緒に図書館にいるんですよ」


 吉村春香までいる件。

 お前らすっげー仲良しだよな。


「ほうほう」


 セエエエエエエエェェフッ!

 俺は安堵した。

 ……ところで俺はなんで安堵してるんだ?


「それで古い雑誌の記事を見つけたんです。あのね、お兄ちゃん。気をつけてください」


「なにを気をつけるんだ」


「晶ちゃんです」


「……どういう意味だ?」


「晶ちゃんは……鈴木千穂ちゃんの妹です」


 俺は固まった。


「い、妹?」


「ええ……晶ちゃんに突撃取材した記録を見つけました。それに春香ちゃんがネットの記事も確認しました。面白半分に晒し者にされてます」


 俺は携帯を落とした。


「お兄ちゃん! どうしたんですか! ねえ……」


 美香の声が遠く小さくなった。

 俺は慌てて携帯を拾おうと屈んだ。

 すると俺の肩に手が置かれた。

 皆川の手だ。


「どうやら気づいたようですね」


「お、おう?」


 なぜか俺は疑問形だった。

 それほどまでに焦っていたのだ。

 俺は震える手で通話を切った。


「『鈴木』じゃないのな……」


 焦りすぎて俺は愚かな質問をした。


「ええ、両親は離婚しましたので。少し調べればわかることなのに……芸能事務所ってのも案外チョロいもんですね」


 皆川は悪ぶった。

 俺はその時、皆川の全身をくまなく観察していた。

 エロは一切ない。いやマジで。

 肩や腰、首の筋肉、さらに鳩尾(みぞおち)を見ていた。

 いつ攻撃されてもいいように筋肉や骨格、さらには正中線、指の先まで監視していたのだ。

 予備動作さえ見抜けば死ぬことはない……と言えるほどの実力があるとは言いきれない。

 次の瞬間、皆川は腕を組んだ。

 俺はそれを見逃さなかった。

 武器は持っていない。……はずだ。

 ナイフを握っていないのは確認した。

 つまり……高い確率で攻撃の意思はない。

 俺は息を吐いた。


「よかった……」


 俺は言った。自然とため息まで漏れる。

 すると皆川は俺を睨み付けた。


「なにが?」


 ですます調はやめたらしい。

 これが素か。


「皆川は俺の前で腕を組んだ。否定のジェスチャーだ」


 出展、深夜のあやしい心理学番組『モテる心理学』。

 いいんだよ!

 こんなのはハッタリなのだ。

『攻撃態勢かどうか?』なんて言ったって頭から否定されて終わりだ。

 相手が理解できる世界の言葉で語りかけることが重要なのだ。


「だから?」


「なにを否定した? 俺の存在か? それとも妹ってことか? 違うね。皆川は自分を否定したんだ。悪ぶっている自分をな」


 俺は断言した。

 ここで重要なのは俺の言葉が図星かどうかではない。

 ましてや皆川を論破することではない。

 皆川の心理を誘導することだ。

 言葉の内容なんてもっともらしければいい。

「そうかもしれない」と一瞬でも考えさせればいいのだ。

 一瞬でも考えたら……


「聞かせろ。皆川、君はなにを知っている?」


 こうやって隙を突いて主導権を取るのだ。

 格闘技と同じだ。いわゆるフェイントってやつだ。

 だがはっきり言おう。

 俺は最低のクソ野郎だ。

 俺もこういうのは好きじゃない。

 全ては殺人鬼との戦いで得た経験だからだ。

 だが効果はあった。

 やや興奮していた皆川は静かになった。

 悪ぶってもいない。

 まったく……無理すんなって。


「姉のことはよく憶えてません……」


 3歳じゃそうだろうな。

 人の記憶が定着するのはもっと後だったはずだ。


「気がついたら父と二人暮らしでした……」


「離婚したって言ってたな」


「ええ……誰もが事件のことを知りたがりました。私もよく記者に追いかけられました。親はもっと悲惨でしたよ。犯人よりも叩かれたそうです」


「傷口を抉っちまって悪かったな」


「それで家族はバラバラ。私を引き取った父も仕事に逃げました……私の人生もメチャクチャですよ。継続してるのは裁判だけ」


 重い過去だ。

 嫌な気分だ。

 ちなみに合気道部の部員に鈴木ってのがいたよな。

 少し疑っていたが、全く関係がなかったようだ。


「それで……どうして芸能事務所に入った?」


「タケルを殺すためですよ」


 直球の告白。

 だが俺は確信していた。

 皆川はシロだ。

 大の男をぶん殴ってから絞め殺すことは、少女である皆川には難しいだろう。

 それに意味もなくなぶり殺しなんてことがこの少女にできるだろうか?

 何度も固いものでぶん殴ったら死んだというならわかる。

 恨みによる犯行だ。

 だが犯人は固いもので殴ってから、何度も締めたのだ。

 意識を失ったら救命措置をし、何度も何度も締めた。

 粘っこい悪意を感じるのだ。


「でも殺してないんだろ?」


 だから俺は言った。

 皆川はなぜか一瞬だけ頬を赤く染めた。


「ええ……殺してません。ですがタケルは……」


「姉のカタキか?」


 ここまでフラグだらけなら、さすがの俺でもわかる。


「そうです。あの男が姉を殺し、私の人生を……だが殺せませんでした」


 じゃあ誰なんだ?

 誰が殺したんだ?


「……一つわからねえことがある。皆川はどうやってタケルさんがカタキだって知った」


 俺が聞くと皆川は明らかに慌てていた。


「それは……悪魔の協力者が……」


「誰だ?」


「それだけは言えません」


 皆川は言い切った。

 だろうな。

 協力者の情報は言えるはずがない。

 だが今までのやりとりでヒントはいくつか拾った。

 ここからは俺の想像だ。

 まず協力者は高確率で警察関係者だ。

 じゃなきゃタケルさんに辿り着くことは難しい。

 そしてこれは重要なことだが、その協力者がタケルさんを殺した可能性があるのだ。

 俺は言わないが皆川も同じ考えだろう。もしくは知っているのだ。

 次に調べるべきは協力者だ。

 ただし解決すべきならな……


 あともう一つ、非常に重要なことがある。


『悪魔を助けよ』


 神様の言葉だ。

 俺は助けるってのを護衛をするって意味で捉えていた。

 だが違うのかもしれない。

 復讐に囚われた皆川を救えって意味なんじゃないだろうか?

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