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Zero  作者: 山名シン
第4章
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日蝕

徐々に辺りが暗くなっていく。

その事に気付いている戦士は一体どれ程いるだろうか?

太陽が割れ始め月が黒く染まりながら覆っていく。

[日蝕]が始まった事を一体どれ程の者が気付いているのだろうか?


神々は疼いていた。

自身の力が極限にまで高まる時は太陽と月が被さる時だという事を知っているからだ。

自然神の(ぜろ)、水神のシーラ、雷神の雷鬼(らいき)、風神のワスト、火神のフレア達のそれぞれの能力が通常の何倍にも膨れ上がっている事に彼らは全く気付いていない。

彼ら神々のさらに神である龍神だけが日蝕に気付き、いまだ終わらぬ雅王の戦士ライアンとの戦いに終止符をつけようと静かに力を溜め込んでいたのだった。

それは自然の神達だけでなく、創造の神もまた同じことが言える。

カーラとマーラはこの時を待ち望んでいたのだ。

彼らは双子だ。

言葉を交わさずともそれに気付き、自分達の本来の姿に「神化」する。


磨閃二閃突きで雷鬼とワストを仕留めたかに見えたが、彼らは[神共闘(アンゲルス)]状態に入っていたので、技を打ち消していたのだ。

雷鬼の体がみるみる内に雷で繕った衣を着たように、全身が雷神様の格好になる。

雷の剣のような光が雷鬼の右手におさまっている。

ワストも同じく風が全身を纏い、袋のような盾が風を借りてなびいている。

その風の盾はワストの左手におさまっている。

彼らの空いた手を繋ぎ、二人三脚のように足並みを揃え、マーラに襲いかかった。

渦をかくように全身に紅が纏わりつき一気に第四段階に入ったマーラは、爆発の能力を混ぜた紅を投げる。

だが、より大きくなった風の盾によって弾かれ爆発を飲み込んでしまった。

そして雷鬼が右手を振るうと、光の筋が大地を焼きながらマーラに飛んだ。

バチバチと鋭い音が立ち登り、刃はあっさりと武装した紅を貫きマーラを貫通したが、その時、奇妙な殺気が雷鬼とワスト二人を襲う。


ジュゥゥゥゥ…………!!!!!


突然に煙を吹き出したマーラの瞳が青色に染まる。


時を同じくして、体を水に散らせて水の刃をカーラに向けて襲っていたシーラも奇妙な殺気を感じ動きを止めた。

いや、動きを止めさせられた。

カーラの瞳が青色に染まっている。

煙を吹き出しながらカーラは、掌に金色の棍棒と、もう片方に腕に巻き付き、ヒュンヒュンと渦を巻いている丸い刃が現れた。


魔剣紅の紅色と自身の体の青色とが混ざり、紫色に染まったマーラは、突如に「踊り出した」。

民族舞踊ともいわれるマーラの舞いが響く間、地響きと共に繰り出される爆発音が巨大地震を起こし地面を陥没させていく。

どこから流れるのか、奇妙な音楽に合わせてマーラが踊ると地震はより激しく大地を揺らす。

神共闘(アンゲルス)状態に入った雷神風神の力で、雨雲を呼び、いや、「呼ばされ」、より一層と戦況は激しく酷くなっていく。

舞いが終わると、宙に浮き青色の瞳で雷鬼とワストを睨む。

二人も宙に浮き雷を呼び寄せ落雷を落とす!


しかし、落雷はマーラの脳天を貫かず、守ったのは双子の兄カーラの持つ円盤形の武器「チャクラム」と呼ばれる神器であった。

チャクラムの回りに落雷が囲むように数個程円形になり、同じように回っている。

どうやら落雷を防いだのではなく、操ったのだ。

チャクラムは回りの万物全てを操り、円盤に変えてチャクラムを中心に一部隊のように、後ろへと並び構えられている。

落雷であっても岩であっても風であっても、チャクラムが通る所はみな、円盤になり、後をついて力はそのままに、意のままに操る事が出来るのだ。

「……マーラ…いつまで遊んでいる気だ?さっさと終わらそうよ…」

「あぁ、そうだな。悪かった」

チャクラムがカーラの右腕に戻り、後をつけて落雷と風がカーラの後ろについた。


ここに過去の神シヴァの継承者マーラと、未来の神ヴィシュヌの継承者カーラが神共闘(アンゲルス)状態に入る。

彼らが合体し、神々の中でも伝説とされる神、「大黒神マハーカーラ」が誕生した!


マーラの青い体に紅色の紅が混ざった紫の容姿を持ち、四つの腕が映え、瞳は緋色と碧色に別れておりそれぞれ未来と過去を同時に見据える事の出来る「慧神眼(ホルス)」を開眼した。

上腕の二つの内一つは魔剣紅の完成体で三叉槍になっており振るうだけで無限に紅を放出し続ける事が出来る。

上腕のもう片方はカーラの持っていた金色の棍棒「金棍棒(トリシューラ)」があり、三つの丸い角は上から順に、迫撃の棍、治癒の棍、盾の棍に別れており、最強の矛と、最強の盾、そして必ず傷を癒す力を持っている。

下腕の片方は円盤形のチャクラムで、もう片方は過去と未来を操る掌が備わっている。

マハーカーラが歩けば大地が振動し、地割れを起こす。


「さて、終焉にしよう。ここからは神の領域だ…」

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