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Zero  作者: 山名シン
第3章
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修行編ー最後の雅王の戦士ー

「しかしいいのか?今戻ってもまた、ダークとかいう敵に殺られてしまうのがオチだ。特に零、お前は先日に神のお告げによって選ばれた人間だ。わしが近日中に夢を見させるつもりでいたが、お前はこの中で一番弱い。雷鬼は雷がついてる、シーラは水神じゃ。じゃが、お前は自然神の継承者と言えど、まだまだモノにはしておらん。そこでだ、わしがお前を一から鍛え直してやる。どうだ?その後でも、遅くはなかろう。恐らく奴等はすぐには動かんじゃろうからな。」

ライアンから提案があったが、やはり零には剣を取り戻す使命の方が先決だ。

ビースト達が見守る中、零はある答えをだした。


「俺の故郷に、俺の代わりに戦ってくれている者達がいる。ここへ来る前、ある男を見たとき、その者達が戦っている意味をなくしていたのに、気付いたんだ。大将が両者とも存在しないのに、俺を信じて故郷を守ってくれてる者達がいる。もっと力があれば、直ぐに終わった戦い。でも多くの戦死者をだしてしまった。五年前に、父を殺されて怒りに狂った俺を止めてくれた、初めて見る敵に臆せず突っ込んだ俺を庇ってくれた。その背後で親友が、師の為に潔白を晴らすために動いてくれた、だがそのおかげで親友が死んでしまった。その親友は俺に技を教えてくれて、その大切さも教えてくれた。弟は、ずっと俺を憎んでただろう。俺に力が無いばっかりに、何で自分より弱い俺が剣山家の当主に選ばれるんだって。あいつ、言葉には言わないけど、そう顔に書いてあったよ。そうさ、俺に力がないから、皆失っちまった。だから!だからこそ!俺は皆を救いたい‼傲慢で、馬鹿な考えだ。そんなのは分かってる。でも、俺が立ち上がらないと、皆が、俺の為に戦ってくれた皆が報われねぇ!!!!!」


零の決意に、ライアンの闘争心が業火の焔を灯していった。


「分かった。だが零、お前一人ではどうにもならん。お前には[雅王の戦士]になる資格が与えられておる。今から、今までの雅王の戦士を呼び、お前と共に特訓をしなければならない。本来なら、今日にでもお前に夢を見させ、朝目覚めた頃には雅王の戦士になっているはずじゃが、お前は特別に、ここでわしが直々に鍛えてやる!他の雅王の戦士と共にお前を皆で鍛えてやる!ついてこれるか?」


「勿論だ!!!!!」


ヘラクレスは、フレアを連れて、獅子の(ししのしん)を抜け、家に戻った。

途中で巨大な怪鳥二匹を見た時は、度肝を抜かれたがしかし気にする余裕もなく、家に帰りフレアの毒抜きに必要な薬草を持ってこなければならない。

ヘラクレスの家に帰ると、薬草の入った箱を取り、フレアの毒のついた腕と、腹に塗りたくった。


「フレア!フレア!しっかりして。目を覚まして!…………こんな時カシラさんがいてくれれば。……ゴメンね、フレア、私が不甲斐ないばっかりに。あなたを危険な目に負わせてしまった。……」


その日一日、フレアが目覚める事は無かった。

しかし、三日後、フレアの中から現れた、不死の象徴である、火の神「フェニックス」を見るまではヘラクレスは、フレアが死んだとばかり思い、泣き続けた。


[突然沸き起こる命の炎が灯った時、また新たな時代が始まる]


(集まれ。ビーストの戦士達よ。雅王の力を授かりし戦士よ。所は、ビーストタウン。我らが生まれた場所だ。そこで、新たな雅王の戦士が誕生する。)


ある夜、この声の主を夢の中で聞いた戦士達が、明け頃立ち上がった。

何かにとり憑かれたようにして、雅王の戦士は鳥の羽根をはやし羽ばたかせ、飛んだ。

ヒールタウンより、剣山ゲリラとメディスが。

ウォールタウンより、龍牙大和が、それぞれ同じ夢を見た後の、明朝、空を飛びビーストタウンへ向かった。


ビーストタウンは、全タウンの中心に位置する孤島の事。

描かれている、地図にすらその場所は載っていないが、タウンの学者達は、確かにそこに新たなタウンがある、と口を揃えて言うものの誰もその存在を確認した事は無かった。

過去何百年と、毎年世界中のタウンの内、たったの四人にのみ雅王の戦士の資格を与えてきたが、これまで一度も、その原初であるビーストタウンへ辿り着いた雅王の戦士はいなかった。


残りの一人の雅王の戦士。

その者の誕生の為に、三人の雅王の戦士がビーストタウンへ集った。


戦士達が我に返り、目を覚ますとそこには不思議な風景に見慣れない動物達の姿。

大和、ゲリラ、メディス、そしてメディスに引っ付いて離れなかったナデシコ、四人は、見慣れない海岸へ降りついた。


「ここは一体?」

「夢の通りなら、ビーストタウンじゃないかな?伝説のさ。フフフ。」

「あら、どこかで見た事あると思ったら、大和ね!」

「え?…………大和?」

最初にゲリラが驚き、大和が答えて、メディスは大和を見た。

そして、ナデシコは、憧れの命の恩人とも言える、大和の事を見詰め物思いにふけていた。


(こっちだ。戦士達。よく集まったな。さぁ、早く来い、宴にしようか。)


「今声が聞こえたね。」

「そうね、夢で聞いた声の主さんだわきっと。」

大和とメディスはお互いの顔を見ようともせずに言った。


「フフフ。いきなり事が進んだみたいで、面白くなってきたね。」

大和が少し興奮したように言うと、ゲリラは彼を鬼の形相で睨んでいた。

もう一人大和を見ていたのは、ナデシコだ。

彼女は睨むというより、感激の気持ちでいっぱいだろう。

「それより、大和、あなた今までどこにいたのよ?」

「僕かい?フフフ、さぁね。メディスさん、君はそれを考えるのが好きなんだろう?推理してみなよ。」

「はいはい。もーいいわよ。」


森の妖精、聖獣達が大和達を見守る中、一人ゲリラは怒りに満ちていた。

樹齢何百年となるだろう木々を、美しい大自然を目の当たりにしながら、怒りに溺れる老人が一人。

(こいつが、カシラを殺した張本人って奴か。すまんなぁカシラ、わしがおらんかったばっかりに。今お前は、どういう気持ちでいるかのぉ。わしはどうにもこの怒りを抑えられんが、それではお前の気持ちを踏みにじってしまう。お前はどうして、こんな男を信じたんじゃ、カシラよ。)

ゲリラの目の色が、徐々に濃い緑色に変色していく。

自然がそれに答えるように、回りにいた鳥達が逃げ去った。


樹力は、自身の感情にも強く反応する。

冷静でいればいるほど自然の力の質が濃く、それでいて鮮明に透き通るような力を貸してくれる。

勿論怒りのように、気持ちが強い程、強い力を貸してくれるが、その場合は樹力を扱う本人にかなりの負担をかけてしまい、硬直状態が長くなり、早くそこまでに陥ってしまう。


森の中央に、広間がある。

そこでは、天敵関係なく、動物達が日向ぼっこをして楽しんでいる。

その中に、10mはある巨大な真っ白のライオンと、その目の前に座る三人の少年達。

彼らが、振り替えると、側にいた動物達は、ライオンを残して去っていった。

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