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イベントは(立花さくら視点)

一条先輩が去っていく背を見つめながらに、私も林の中へ入ると、ゆっくりと足を進めていく。

鬱蒼と茂る草木を掻き分け、注連縄が巻かれた木の傍へとやってくると、グルリと辺りを見渡した。

あれぇ~、一条先輩どこへ行ったのかなぁ~。

先に行っても彩華を見つける事なんて出来ないのに……。


「まぁ、あの祠の前で待っていれば……必ず来るか」


そう一人ごちると、私は迷うことなく竹林の奥へ奥へと進んでいった。


それにしても……何だか色々おかしい事になっているなぁ。

二条も華僑も日華先輩も一条先輩も……なぜか皆、彩華に好意的だ。

本来であれば、二条はコンプレックスを抱えながらに、彩華を嫌っているはずだし。

華僑は中学、高校とも彩華に虐められ怯えていたはず。

日華先輩は、一条先輩の傍で中学時代の彩華非道な行為を見て毛嫌いしていた。


それに本来、肝試しには彩華と奏太は参加しない。

それに私の知る奏太は、彩華に家を潰され恨んでいるはずで、あんな風に好意を抱く事なんてないんだけどなぁ。

う~ん、でもこれは私が奏太のイベントを回収できなかった事に関係があるのかな。


奏太との出会いは、橋の上でぬいぐるみを助けるところからのはずだが、私はそれを達成できていなかった。

イベントの時期に何度もその橋へ足を運んだけれど、発生しなかったんだよねぇ。

まぁ奏太に出会った時、強引にイベントを達成した体で話を進めてみたら……問題なく奏太を落とすことも出来て、うまくいったから大丈夫だと思っていたんだけどなぁ……。


はぁ……。

この海の家でのシナリオは、ここで彩華が奏太に襲われて……あの祠で彩華が闇落ちする。

でもそうならない雰囲気だったから、ちょっと強引だったけれど、これまたシナリオ通りに進むよう、奏太をわざわざ操ったんだけれど……。

さぁどうなっているんだろう~。

ちゃんと彩華がここで、闇を落ちしてくれないと、この後のイベントが発生しないんだよねぇ~。

もしここで落ちなかったら、また無理矢理落とせばいいだけだけどね……、ふふふ。


他の海の家のイベントは順調に進んでいる。

海の家では、二条君とのイベントはちゃんとクリアしたし、華僑君は二条君の好感度をあげていけば、自然とあがるはず。

日華先輩のイベントは……ケモ耳を見れていないけれど、洞窟での出会いは達成した。

まぁ~お邪魔虫がいたけれど……ケモ耳姿を見た体で話せば何とかなるでしょう。

そして最後のイベント……一条先輩とこの場所で一緒にコインをゲットする。

これも多少強引だったけれど……無事に達成できた。

でっ、コインを取ったその帰りに、ボロボロになった彩華を見つけて、海の家でのストーリーは終了。


次は文化祭ね……。

ここでの好感度がかなり左右されてくるから、少し不安はあるけれど……主人公は紛れもなく私。

彩華の記憶がなくなって、かなりおかしくなっているけれど、きっと大丈夫。

だって私が中心で、世界は回っているんだから。

それに私には、彩華にはないこの目がある。

イベント進めていけば、彼らを自由自在に操れる赤い瞳。

まぁ操るまでには、好感度がそこそこ必要になるけれどね。

奏太は惚れやすい性格だから早くにできたけれど、問題は一条先輩よねぇ。

彩華を溺愛しているようだし、彼の性格がヤンデレ交じりで一途だから余計に大変だ。


でも私の目的を達成するには、一条先輩を落とすことは必須。

二条、華僑、一条先輩、日華先輩この4人を攻略して、ようやく彼に出会える。

私はどうしても彼に会いたいの。

今度こそ……必ず……。

でも高等部に進学する直前に、その彼とのイベントが発生するはずだったんだけどなぁ……。

私はそのフラグを未だ回収出来ていない……。

だけどきっと彼は文化祭に現れるはず。


そこで彼に出会い、奏太と同じように近づけば良いだけの話。

ぬいぐるみの事件と同じで、必ず彼のイベントがどこかで発生しているのだから……。

後は……彩華に彼をおびき出す囮になってもらわないとね、ふふふ。


あ~そうだ忘れてた。

彩華と学校が違うのはどうなんだろう。

花蓮がしくじったのが痛いなぁ~あそこでやめさせられれば、こんな事で悩む心配はなかったのに。

はぁ……しょうがない私が動くしかないかな~。

文化祭が始まる前に……。

竹林に強い風が吹き抜けると、笹がカサカサと音を立てながらに揺れ動く。

鬱蒼と茂る道を歩き続ける中、ようやく祠が見えると、私はそこで立ち止まった。


辺りを注意深く見渡してみるが、彩華の姿はまだ見当たらない。

奥にある洞窟の縄が切れている様子から、きっと彼らはこの奥へ進んだのだろう。

それならイベント通り。

洞窟の中で追い込まれた彩華は、奏太に襲われる。

そんなに恨んでいるのならいっそ殺してしまえばと思わなくはないが……どうしてか私と彩華はこの世界で死ぬことは許されない。

それはもう証明されているのだから……。


後はボロボロになった彩華をここで待ち伏せるだけ……。

一条先輩がここへ到着すれば、きっと彩華が洞窟から出てくるわ。

私は吸い込まれそうな闇に包まれた洞窟を真っすぐに見つめると、小さく笑みを浮かべながらに、その場で静かに一条先輩の到着を只々待っていた。

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