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消えた二人(歩視点)

肝試しが始まり、彩華と奏太がスタートする姿に、僕たちも後を追いかけていく。

二人から適度に距離を取りながら追いかけていくと中、先ほどまで出ていた満月がゆっくりと雲に覆われていく。

明かりがない参道がより一層暗くなる中、僕たちは歩くスピードを速めると、見失わない様に見張っていた。


二人のボソボソとした話し声が風にのって聞こえてくると、突然にあたり薄っすらと霧が現れた。

可笑しいこんなところに、霧なんて出来るはずがない。

ここは標高が高くもない上、近くには海がある。

あまりに不自然な霧に亮へ視線を向けてみると、戸惑った様子を浮かべている。

亮と視線が絡み無言のままに頷きあうと、僕たちは霧を掻き分けるように足を速めた。


しかし霧は僕たちの抵抗を嘲笑うかのように深くなっていくと、二人の姿が霞んでいく。

くそっ、どうなっているんだ……。

霧が濃くなり、亮の姿も確認できなくなっていく。

そんな中、薄っすらと浮かび上がる陰に思い切って手を伸ばしてみると、その手が空を切った。

すると今まで濃かった霧が一気に晴れていく。

焦って辺りを見渡してみるが……参道内には、二人の姿はどこにも見当たらない。

彩華たちは……どこへいったんだ?

ここは一本道だ……それに、道を逸れるような動きはしていなかったはず。


呆然とする中、後ろから亮が追い付いてくると、焦った様子で辺りに目を向けていた。


「……彩華ちゃんは?」


「わからない……見失った」


僕はグルリと辺りへ視線を向ける中、木々が風で激しく揺れている。

隣で亮が苛立った様子で近くにある木を蹴り上げる姿を横目に、僕はまた二人の姿を探し始める。

さっきの霧は何だ……。

こんなところで見失うはずなんてない。

森の中へ入れば音で気が付くはずだが……、一体どこへ?


「あれ~、こんばんわ」


月がまた顔を出し、辺りに光が差し込む中、甲高い声に振り返ると、そこには立花さくらの姿があった。

なんでこいつがここに……まさか……?


「……彩華をどこへ隠した」


「う~ん、彩華ちゃん?知らないですよ~。何かあったんですかぁ?」


クスクスと楽しそうに笑う彼女を睨みつける中、亮が僕と彼女の前へ割り込むと、立花さくらへ近づいていく。


「こんばんは。君はどうしてここにいるのかな?」


「日華様~!!!え~と、私はただぁ~夜の神社を散歩していただけですよ」


キャッキャと亮へすり寄る彼女の姿に虫唾が走る中、亮はニッコリと作った笑みを浮かべてみせる。


「なら、彩華ちゃんを見なかったかな?」


「う~ん、見てないですね。彩華ちゃんどうかしたんですか?」


彼女は心配そうな表情を作ると、見上げるように亮へと視線を向ける


「知らないならいんだ。……俺たちは彩華ちゃんを探しに行ってくるよ。君も……気を付けて」


亮は僕の元へと戻ってくると、皆に知らせてくると耳打ちしていく。

そのまま僕の横をすり抜けていくと、石畳の上を走り去っていった


「あぁ~、日華様待って!!」


立花さくらは甲高い声で亮を引き留めようと手を伸ばすが……もちろん亮が止まるはずもない。

悲しそうな表情を浮かべたまま亮の姿を見つめる彼女に、僕はスマホを取り出すと、彩華へ電話をかける。

しかし彼女は電源を切っているのか……電波が届かない場所にいるのか、つながらなかった。

苛立ちに石畳を強く蹴り上げると、彼女はクスクスと笑い始める。


「ねぇ……そんなにあの子が心配なの~?」


彼女は企むような笑みを浮かべて見せると、ゆっくりと距離を詰めてきた。

そんな中……月が隠れ、彼女の表情が暗闇に染まると、辺りに強い風が吹き抜ける。


「変なの……、今までのあなたなら……彩華に関心なんて、なかったくせに……」


ボソボソと呟かれた言葉は、はっきりとは聞き取れない。

近づいて来る影が姿が次第に露わになってくると、立花さくらは絡みつくように僕の腕に手を回した。


「僕に触れるな……」


「いいじゃないですか~。それよりも……きっとあなた達じゃ、彩華ちゃんを見つける事なんて出来ないよ。あはははっ」


甲高い笑い声に冷たく睨みつけると、絡みついた腕を無理矢理に引きはがす。


「もうっ、冷たいなぁ~。まぁ、そこが良いんだけれど……ふふふっ」


「……彩華はどこだ。お前は何を知っているんだ?」


そう脅す様に強く言い放つと、彼女の腕を強く圧迫していく。


「痛いっ、痛いって!!」


痛みに顔を歪める彼女の姿を一瞥するが……僕は手の力を緩めない。


「さっさと答えろ」


そう冷たく言い放つと、彼女はニヤリと口角を上げる。


「いいよ、教えてあげる。その代わりに、一緒にこの境内を進んで、奥にあるコインを取れたらね……」


コイン?

こいつどうして知っているんだ?


「……どうして、コインがあると知っているんだ?」


彼女は僕の質問に答える気はなく、ニッコリと笑みを浮かべたままに、僕の手を振り払うと、境内を歩き始める。


「ほら、早くしないと……彩華ちゃんがどうなってしらないよ~」


何なんだこの立花さくらという女は……。

前を歩く彼女に姿に、僕は不承不承に足を進めると、暗闇に染まる境内を進んでいった。

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