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香澄からの贈り物

私はベッドの上で自然に目覚めると、部屋に薄っすら陽の光が差し込んでいた。

体を起こし、徐に時計へ目を向けると、短い針は5時を指している。

あれ……朝……、いや夕方……?

私はベッドから下りると、カーテンを大きく開き海へと目を向ける。

海の中から東の方角から昇る太陽が目に飛び込んだ。


うわぁぉ……寝すぎだ……。


私は大きく背筋を伸ばすし、鈍くなった体をほぐす様に柔軟体操を行う。

徐に額に手を当ててみると、熱は引いているようだ。

う~ん、寝すぎて、まだ頭がぼうっとするなぁ……。

私は徐に立ち上がると、そのまま洗面所へと足を向ける。

冷たい水で顔を洗うと、ぼうっとする視界が次第にはっきりと見えてきた。

前にある鏡に目を向けると、昨日より幾分元気になった自分の姿が映る。

そのままシャワーを浴び、着替えると、私は静かに部屋を後にした。


今日は昨日行けなかったショッピングにでも行こうかな。

そんな事を考えリビングへと足を向けていると、大きな窓ガラスの向こうに佇む、奏太の姿が目に入った。

奏太はじっと海を見つめ、呆然と立ち尽くしている。

私は方向を変え、玄関へ向かうと、静かに別荘を後にした。


「奏太君、こんなところで何をしているの?」


私の呼びかけに彼は驚いた様子で、大きく肩を跳ねさせると、徐に振り返る。


「彩華さんこそ、こんな朝早くにどうしたんですか?それよりも病み上がりなんですから、あまり無理しちゃダメですよ!」


奏太は私にじっと視線を向けると、その瞳には薄っすら赤みが見えた。

あれ……?

私は奏太へ一歩近づき、彼の瞳をよく見ようと覗き込んでみると、そこにはいつもの澄んだ黒い瞳があった。

……気のせいかな……?

そんな私の様子に奏太は顔を真っ赤にすると、恥ずかしそうに私から視線を逸らせる。


「……彩華さん、一緒に別荘へ戻りましょう。夏だと言っても朝方の海風は、冷えますからね」


奏太は私の手を掴むと、そのまま別荘へと足を向ける。

連れられるままに奏太の背中を眺めながら砂浜を踏みしめると、私たちは別荘の中へと戻っていった。



そうしてリビングで奏太と他愛無い話をしていると、一条、香澄、花蓮に華僑がおはようとリビングにやってきた。

皆が私の体調を気にする中、もう大丈夫だと元気よく返していく。

そうして朝食の準備が整うと、日華と兄もダイニングキッチンへとやってきた。


「彩華、病み上がりなんだ。今日は一日ゆっくりしなさい」


開口一番に兄はそう話すと、私は項垂れるように小さく頷いた。

もう元気なのになぁ……。

でもこんなこと言っても兄には通じないし……。

はぁ……今日は部屋で大人しく、本でも読んでようかな……。

シュンとした様子を浮かべる私の傍に、香澄が寄ってくると、嬉しそうに袋を持ち上げた。


「お姉様、昨日買い物に行って買ってきたの!」


「ありがとう、香澄ちゃん」


袋を受け取ると、腕にずっしりと重みを感じる。

重っ!?

一体何が入っているのかな……。

袋の中を覗こうと目を向けると、香澄がそれを遮るように口を開いた。


「ダメよ!お姉様、お部屋で見て!」


何か企むような笑みを見せる香澄に、私はおずおずと言った様子で頷いた。


朝食を終え一人部屋に戻ると、先ほどの袋を開封していく。

一体……何が入っているんだろう?

恐る恐るリボンを取り、包み紙を外していくと、大きな箱が現れた。

そっと蓋に手を掛け、中を覗き込むと、そこにはまたピンク色の袋が現れる。

……厳重だな……。

箱から袋を取り出し徐に中を袋のリボンを解くと、そこには大きな球体が現れた。

恐々その球体を持ち上げると、よく占い師が持っているような……水晶玉だった。

水晶玉……?

一体これは……。

光にかざす様に持ち上げると、キラキラと輝きを放つ。

水晶玉を通った光は反射し、虹色の影を生み出していた。

綺麗……。

呆然とその光景に見惚れている中、ふとあることに思い至る。

……一体これをどうするんだろうか……、香澄ちゃんに聞いてみよう……。

私は水晶玉を旅行カバンの中へしまい込むと、静かに部屋を後にした。


香澄を探し、リビングへとやって来ると、私は香澄へと駆け寄った。


「香澄ちゃん、プレゼントありがとう。でもあれはお部屋に飾る物なのかしら?」


「えぇ、あの水晶を一目見てお姉様にピッタリだと思ったの!何の色にも染まらず、どんな色も吸収する。ふふふ、気に入ってくれた?」


「えぇ、とっても嬉しいわ。家に帰ってから私の部屋に飾るね」


そう笑みを浮かべると、香澄は嬉しそうに笑っていた。


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