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目覚めると

翌日、私はいつものように目覚めると、ゆっくりと体を起こす。

近くにある時計へ視線を向けると、短い針が8をさしていた。

薄暗い部屋、窓の傍へ歩いて行くと、大きくカーテンを開ける。

眩しい日差しに目が眩む中、外には真っ青な海を太陽がサンサンと照らしていた。


今日もいい天気、でも暑くなりそうだなぁ。

そんな事を考えていると、ふと体に違和感を感じた。

あれ、なんか関節が痛い……。

私は思いっきり背筋を伸ばすと、コキコキと肩を鳴らす。

うーん……まぁいいか、変な体勢で寝ていたのかな。

そう自分で納得すると、私は徐に脱衣所へと向かった。


シャワーを浴び、服を着替えると、私はダイニングキッチンへ足を運ぶ。

廊下を歩いていると、パンの香ばしい匂いにつられ、ダイニングキッチンへ続く扉を開いた。

中へ入るや否や、勢いよく私に向かって走ってくる、香澄の姿が目に飛び込んできた。


「お姉様~~~おはようございます!ねぇ、お姉様聞いて!花蓮が私の邪魔して……お姉様の部屋に行けないの!」


「もう、やめなさいよ!!まったく、むやみやたらに抱きつくんじゃないわよ!!はしたない!」


ギュッと腰に抱きついてきた香澄の頭を宥めるように撫でると、怒った様子で花蓮に視線を向ける。

そんな二人のいつものやり取りを横目に、私は小さく笑った。


「二人ともおはよう。今日もいい天気ね」


そうのんびり話すと、二人はキョトンとした様子で私を見つめる。


「そっ……そうですわね」


花蓮は驚いた様子でそう呟く中、香澄は困った様子で私から体を離した。

私はそんな二人をそのままに、一人窓際へと足を向ける。

呆然としていた香澄は、急ぎ足で花蓮の傍に行ったかと思うと、二人でコソコソと何かを話始めた。


お姉様どうしたのかしら……いつもなら顔を引き攣らせて、私たちの言い合いを止めるはずなのに……。

ですわね……何かあったのかしら……?

そんな心配する二人を余所に、私は窓から差し込む眩しい光に目を細めていた。


皆で朝食をとり、各自自由にくつろぐ中、私はソファーで一人休んでいると、なぜか頭がぼうっとしてくる。

う~ん、何だか……眠い……昨日良く寝たはずなのに……。

昨夜は日華先輩と過ごした後、そのまま部屋に戻り、疲れていたのか……すぐに寝入ってしまった。

私は口に手をあて、大きく欠伸をすると、ドサッとふかふかのソファーが大きく沈んだ。

顔を向けると、ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべた香澄の姿が映る。


「ねぇ、お姉様!今日はショッピングに行きましょうよ!」


重い体を起こし香澄に微笑みかけると、兄の姿が目に映る。

ピシッとしたスーツ姿に、髪はワックスで固めフォーマルな姿。

お父様の仕事が、急遽入ったのだろうか……?

そんな兄の姿をじっと眺めていると、ふと昨日の立花さくらの言葉が蘇る。


〈明日は一条君と会うんだから、邪魔しないでよね!)


もしかして立花さくらに、会いに行くのかな……。

でも礼装で会いにいくなんて……。

立花をエスコートする兄の姿を想像すると、心の奥がギュッと締め付けられるように痛み始める。

嫌、いや……寂しい……行かないで……。

そんな感情がこみ上げ胸を強く押さえながらも、兄から視線を逸らせることが出来ない。

昨日はこんなことを思わなかったのに、一体どうしたんだろう私……。


私は悄然とお兄様の姿を眺めていると、兄は時間を気にするようにチラチラと腕時計に目を向ける。

兄が日華へ何か話しかける中、突然私の体が大きく揺さぶられた。


「ねぇ、お姉様聞いている?」


私はハッと意識を香澄に向けると、慌てて彼女へ顔を向けた。

少し怒った様子の香澄と目が合うと、私はごめんねと気まずげに笑みを浮かべる。


「えーと、買い物へ行く話でしょう。何を買いに行くの?」


「もうっ!さっき言ったのに!!あのね、今日はねぇ~……」


「私も一緒についていきますからね!!」


香澄の言葉に、かぶせるように発せられた頭上からの声に徐に顔を上げると、深い笑みを浮かべた花蓮の姿があった。

もちろん、一緒に行こうねぇと私が提案すると、香澄は頬を大きく膨らませていた。


出かける準備をするため、私たちは一度部屋に戻る事になった。

二人の背中に続くように、私はソファーからゆっくりと立ち上がる。

するとクラッと立ち眩みに襲われ、私は咄嗟にソファーへ手をついた。

前を歩く二人は私に気が付いた様子はない。

私は急いで体制を立て直すと、急ぎ足で二人の背中を追いかけた。


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